そんな大注目作の日本公開を前に、マイケルを演じた主演のジャファー・ジャクソン、「ジャクソン5」のフロントマンとして活躍していた子ども時代のマイケルに扮する子役のジュリアーノ・ヴァルディ、『ボヘミアン・ラプソディ』(18)に続いて音楽伝記映画のヒット作を放ったプロデューサー、グレアム・キングが来日。6月4日には彼らのほかにも豪華ゲストを迎えたジャパンプレミアが開催され、マイケルファンが集まった会場は熱狂の渦に包まれた。その翌日、MOVIE WALKER PRESSは興奮冷めやらぬ3人を直撃!マイケルへの想いや撮影秘話を大いに語ってもらった。
■「マイケルの独特のエネルギーを体現するのは本当に難しかった」(ヴァルディ)

まずは現在12歳のヴァルディから。マイケルの絶頂期をリアルタイムで体験していない彼だが、それでもデビュー前からSNSにマイケルの物真似ダンス動画をアップしていた。そんな彼にとってマイケルとの出会いのきっかけはなんだったのだろう?「祖母がマイケルの大ファンで、彼女から教わりました。『スムーズ・クリミナル』という曲のMVを見せてくれたんです。そこでマイケルのダンスに魅了され、あんなふうに踊ってみたい!と思いました。そこからマイケルの映像を深掘りしてダンスを学んだんです」と、彼は述懐する。
マイケル・ジャクソンは誰もが知っているアーティストといっても過言ではない。それだけに、この役を演じる俳優に相当なプレッシャーがのしかかる。ダンスを得意とするヴァルディにも、それはあったようだ。「僕は1980年代のソロ時代のマイケルのダンスは得意でしたが、ジャクソン5のころの彼のダンスは知りませんでした。まったく違うスタイルだったので苦労しましたが、まずはそれを覚えることから始めました」

ヴァルディは子どもらしくエネルギッシュで、この取材の時も、しばしばマイケル風のダンスを披露しては周囲を沸かせていた。エンターテイナーとしての資質をうかがわせる彼だが、演技は初体験だ。「演じることに関してはトライの連続でした。マイケルの独特のエネルギーを体現するのは本当に難しかった。マイケルは僕とは違って、とても繊細にエネルギーを発する方でしたから」と振り返った。
■「“練習の成果を天国のマイケルに見せてあげなさい”と言われているような気がしました」(ジャクソン)

演技が初めてだったのはジャファー・ジャクソンも同様だ。「すべてが僕にとって学びの旅でした」という彼は「自分が負うべき責任の重さを理解していたので、カメラが回り始めた瞬間に万全の状態で臨めるよう、ダンスはもちろん芝居についても準備してきました。スタミナや持久力、演技力の点で大変な仕事でしたが、同時にやり甲斐もありました。この映画の反響を見れば見るほど、すべての努力が報われたと感じています」と、やり遂げた喜びを語った。
ジャファーはマイケルの甥っ子。父親はマイケルの兄であり、ジャクソン5を経てマイケルと同様にソロシンガーとして活躍してきたジャーメイン・ジャクソンだ。「父には“ステージに上がる前のマイケルは、どんな心持ちだったのか?”ということを尋ねました。これも僕がするべき準備の一環でしたから。でも、父からのアドバイスでもっとも心に残ったのは“どんなに疲れていても、できる限り一生懸命やりなさい”ということです。撮影時はつねに、それが頭の中で響いていました。“ひたすら練習して、その成果を天国のマイケルに見せてあげなさい”と言われているような気がしました」と、父親からのアドバイスの内容を明かしてくれた。

本作のドラマの中枢にあるのはマイケルと父親ジョセフ(コールマン・ドミンゴ)との葛藤。息子たちをジャクソン5として鍛え上げ、芸能界に送り込んだジョセフはグループの最年少だったマイケルに対しては、より厳しく接し、口答えすることを決して許さない。
「マイケルが家族を深く愛していたことは映画の重要な要素となっていますが、ジョセフもまた彼なりの方法で家族を愛し、まとめようとしていたと思います」とジャファーは語る。さらに、「マイケルには独自のクリエイティブなアイデアがあり、それを実現したかったのですが、ジョセフはそれを許さず、兄たちと共に活動することを望んだ。彼ら親子の関係に緊張が走れば走るほど、マイケルは独り立ちして自分の道を歩みたいと思ったんです」と、親子の複雑な心の機微を振り返った。

■「ステージを離れたマイケルの姿を見てもらうのは非常に重要なこと」(キング)

プロデューサーのキングは、マイケルとジョセフの親子のドラマについて補足する。「ジョセフはマイケルの父親であるだけでなく、多くの子どもを持つ父親でもありました。彼の願いは、家族で足並みをそろえて成功の道を歩むことでした。息子たちに音楽やダンスの才能があることを見抜いたジョセフが、ジャクソン5を世に送り出した功績は疑いようがありません」と称える。
また、父親のしつけが時に暴力的であったことは論議を呼びそうだが、「1960年代の父親像は、現代と違ってそういう側面がありました。それが正しいというつもりはありませんが、いずれにしてもジョセフにはインディアナ州の街での貧しい暮らしから家族と一緒に抜け出そうとする、明確な動機があったのです」と説明する。

本作はマイケルの黄金期を知る世代にはノスタルジーと共に楽しめる作品ではあるが、「彼のパフォーマンスをリアルタイムで知らない若い世代にも観てほしい」と、キングは語る。マイケルにレジェンド的なスーパースターのイメージを抱いているファンは多いが、本作はサクセスストーリーであるだけではなく、ひとりの少年が青年となり、自立を志す成長の物語でもあるのだ。「ステージ上のマイケルとステージを離れたマイケルの姿を見てもらうのは非常に重要なことでした。彼には類まれな創造性があったのと同時に、人間的な弱さもあったのです」と、本作に込めた真摯な意図を語ってくれた。
■「『チャイルドフッド』はマイケルが人生を通じて経験してきたことを象徴している」(ジャクソン)

最後に、3人に「もっとも好きなマイケル・ジャクソンの曲は?」という難問をぶつけてみた。「一番好きな曲と訊かれると困りますね…本当にたくさんあるから。毎分おきに好きな曲は変わります」と笑って前置きして、ヴァルディが挙げたのはジャクソン5時代の「ABC」。「マイケルの伝説の始まりというべき時期の曲ですからね」と、このインタビューを受けながら、ジョセフ役のコールマン・ドミンゴとの共演の楽しかった体験を思い出した様子。
一方のジャファーは、1995年のヒット曲「チャイルドフッド」を挙げた。「あの曲がマイケルを最もよく表していると思うからです。それに、彼自身もいちばん気に入っていた曲のひとつなんですよね。自ら書き下ろした曲であり、彼という人間そのものや、彼が人生を通じて経験してきたことを象徴していると思います」とのこと。劇中ではわずかにフィーチャーされる程度だが、本作が扱う時代は1988年まで。噂される続編での再起用を待ちたい。

キングが挙げたのはアルバム「バッド」に収録され、1988年にシングルカットされた「マン・イン・ザ・ミラー」。「とにかく気高い曲です」とは彼の弁だ。こちらも劇中では聴けないが、続編があるとしたら間違いなく使用される名曲。この年以降のマイケルの人生を描くであろう続編についても彼に尋ねてみたが、「考えてはいます。ただ、まずは本作の日本での反響を見たい」と語っていた。
3人は口をそろえて「マイケルがもっとも愛した国である日本に来られてうれしい」と語った。ジャクソン5時代から何度も来日公演を行ない、それ以外のMTVアワードなどでも日本を訪れてはファンに感謝を伝えてきたマイケル。2009年に世を去ってからも、ヴァルディのような新世代のファンを生んだように、その影響力は計り知れない。映画『Michael/マイケル』は確実に、その延長線上にある。日本の観客にもレジェンドのスピリットを含め、大きななにかを投げかけるだろう。

取材・文/相馬学
