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〈ヤクルト躍進〉「脱バント」と「我慢」…池山采配を形作った“ある名将の教え” …スワローズ改革の核心【2026 集英社オンライン上半期 スポーツ記事 3位】

〈ヤクルト躍進〉「脱バント」と「我慢」…池山采配を形作った“ある名将の教え” …スワローズ改革の核心【2026 集英社オンライン上半期 スポーツ記事 3位】

2026年度(1月~5月)に反響の大きかったスポーツ記事ベスト5をお届けする。第3位は、東京ヤクルトスワローズの池山隆寛新監督が掲げる独自のチーム改革に迫った記事だった(初公開日:2026年4月14日)。

「バントはしない」「我慢する」––––就任直後の池山隆寛新監督が掲げた一見すると矛盾する2つの方針は、いまのスワローズの戦い方を大きく変えようとしている。その背景にあるのが、かつて自身を育てた“ある名将の教え”だ。三振すらも受け入れる覚悟と、徹底した攻撃姿勢。池山野球の核心に迫る。

恩師から受け継いだ「我慢する覚悟」

昨年の秋季キャンプ、就任直後の池山隆寛監督にインタビューをした。その際にどうしても尋ねたかったことがある。

「あなたにはどれくらい、“我慢する覚悟”がありますか?」

尋ねるべきことはたくさんあった。それでも、限られたインタビュー時間において、新監督が目指す野球、理想のチーム作りを問うにあたり、「今のスワローズに必要なのは《我慢》だ」と考えたからだ。

池山監督が現役時代にスター街道を駆け上っていく頃、チームを指揮していたのが関根潤三だった。関根の参謀として仕えていた安藤統男が、かつてこんなエピソードを披露してくれた。

「栗山(英樹)が三塁打を打ったんです。ノーアウト三塁で、池山、パリッシュ、広沢(克己/現・広澤克実)に回りました。私としては、“1点は入るだろう”と思っていたら、3人とも三振。試合後の反省会で関根さんに、『せめてノーアウト三塁のときにはもう少しチームバッティングを考えろと指示しましょうか?』って言ったんです」

「この瞬間の関根さんの表情、そして言葉が今でも忘れられない」と安藤が続ける。

「でも、関根さんは、『アンちゃん、オレらが我慢しようや』と淡々と言うんです。『あのバッターボックスで、三振しようと考えているヤツはいない。いつも悪い結果ばかり続いたら、さすがに恥ずかしくなる。そうすれば彼らも自分から考えてやるようになるから、オレたちが我慢しよう』って。

そして、『今、ここで注意をして、思い切りバットを振れなくなることの方が困るから』って聞いたときには、『この人はすごいなあ』と思ってね。私なら、そこまで我慢できませんよ」

安藤の発言が強く印象に残っていたからこそ、就任したばかりの池山新監督に対して、関根監督について、さらには「我慢の覚悟」について、こう問いたかったのである。

「あなたには、関根監督のような覚悟がありますか?」

「ブンブン丸」が見せる、心中覚悟の辛抱

胸をすくような「ホームラン」という華々しい結果の裏には、ときとして「三振」という痛みが伴うこともある。その表裏一体の心理を、池山ほど熟知している者はいない。

二軍監督として若手と向き合ってきた6年間で、彼は「選手はそう簡単に打てるものではない」という現実を嫌というほど突きつけられてきた。一軍は結果がすべてを支配する舞台である。それでも池山は、「我慢」「辛抱」をあえて口にした。

「我慢するのは当然ですね。もうそういう辛抱というのは二軍でもしてきましたし、そう簡単に打てるものじゃないっていうのもわかっているんです。一軍となれば、やはり数字がすべての舞台なので、しっかりと結果は求めたい。

だけど、そこには我慢や辛抱が必要になってくる。一人でも多く、チームの雰囲気を変えることができる選手が出てきてくれることを願っています」

池山の脳裏にはやはり、かつての恩師・関根潤三の姿があった。若き日の池山が三振の山を築いても、関根は決してそれを咎めず、自由に振らせ続けた。

コーチの安藤が注意しようとするのを遮ってまで貫いたその指導は、決して無責任な放任ではなかった。それは、一人の才能を開花させるために監督が背負う痛みであり、覚悟の表明でもあった。

「関根監督がいたから、今の自分があるのは間違いないです。チームとして勝利を求めつつ、個人として若い選手を育てていくこと。監督となった以上、その両方を求めていくのは当然のことだけど、将来を担っていく選手に対しては、ある程度の辛抱が必要になる。もちろん、その覚悟は持っています」

池山は今、かつての自分と逆の立場に立ち、関根がまっとうしたその重みを噛み締めているはずだ。自身が「三振を恐れるな」という環境で育てられたという強烈な自負があるからこそ、岩田幸宏、赤羽由紘、伊藤琉偉、鈴木叶ら、次世代に対しても同じだけの忍耐を払う準備ができている。

「自分は本当にスワローズというチームに育てられたという思いがあります。あの頃の関根さんがそうだったように、当然若手を育てるのも自分の役割だと理解しています」

我慢、そして辛抱——。そんな指導スタイルこそ、昭和の「関根イズム」を踏襲した、令和の「池山イズム」なのである。

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