切り出せなかった本心
帰り道、僕はうまく話を切り出せずにいました。本当はすぐにでも、さっきの机は君のために選んだんだと伝えればよかったのに、一度黙ってしまうと、どう口を開けばいいのかわからなくなっていたのです。隣を歩く彼女がうつむいているのには気づいていました。それでも前を向いたまま、僕の頭の中は、部屋に着いたらどう切り出そうかでいっぱいだったのです。驚かせたいという小さな見栄が彼女をこんなにも不安にさせているとは、このときの僕はまだ気づいていませんでした。
そして...
部屋に戻ってすぐ、僕は窓際の一角を彼女に見せました。「ここ、君の場所にしようと思って」。そう言って机を組み立てはじめると、彼女の表情がやわらいでいくのがわかりました。よかった、と思うと同時に、申し訳なさが込み上げてきました。たったひとこと、机を選ぶときに理由を伝えていれば、彼女をあんなに不安にさせずにすんだはずです。気持ちは、形にするだけでは足りない。きちんと言葉にして渡さなければ、まっすぐには届かないのだと、このとき初めて思い知りました。次に何かを贈るときは、サプライズより先に、ちゃんと言葉で伝えようと思います。
(20代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
