オランダに勝てなかった、ではない。オランダに負けなかった、である。6月14日、米ダラスでのサッカーW杯グループF初戦。森保ジャパンは強豪オランダ相手に二度も追いつき、2-2で勝ち点1をもぎ取った。痛み分けに見えて、世界の賭け市場(ブックメーカー)はこの引き分けを、勝ち点1以上の価値ありと受け止めた。
試合前の見立ては「オランダ優勢」「日本劣勢」だった。ESPNの試合前オッズでは、オランダ勝利が+105、日本勝利が+255、引き分けが+235。日本式の総払い戻し倍率に直せば、オランダは約2.05倍、日本は約3.55倍となる。数字の上でも、順当ならオランダ、という値付けだった。それを日本は、二度先行されながら二度追いつき、下馬評を大きく揺さぶった。
数字も動いた。日本のW杯優勝オッズは、数カ月前には約100倍(Squawka)。それが大会直前には50~60倍前後まで縮み(Oddspedia、ESPN)、オランダ戦の引き分け直後には、米FanDuelで+5000から+4000、つまり50倍から40倍へと引き下げられた。
ブックメーカーによって差はあるが、日本が「ダークホース」枠で評価を上げてきたのは確かだ。ただし40倍は、夢はあっても本命ではない。あくまでブックメーカーの「値踏み」である。
本当に見るべきは優勝オッズではなく、グループF突破のオッズだろう。ここで日本は、もう「穴候補」ではない。グループFの優勝オッズは、本命オランダが約1.8倍、これに次ぐ2番手が日本で約4.0倍。スウェーデンは約5.0倍、チュニジアは約12.0倍と続く。日本はスウェーデンやチュニジアを抑えての高評価だ。
突破できるかどうかのオッズを見ると、評価はさらに鮮明になる。Oddscheckerの事前分析では、日本が突破する確率は約79%とはじかれていた。別格のオランダ(約92%)には及ばないが、スウェーデン(約67%)、チュニジア(約42%)を明確に上回る。海外のブックメーカーはすでに、日本を突破候補として見ているのだ。
「次」を取りこぼせばオランダ戦ドローの価値が一気に薄れる
追い風は新ルールである。全48チーム制となり、各組上位2チームに加え、3位でも成績上位8チームがラウンド32へと進める。だからこそ、強豪オランダから奪った勝ち点1は重いのだ。
焦点は次戦、日本時間6月21日のチュニジア戦だ。舞台はメキシコ北部、モンテレイ近郊のグアダルーペである。チュニジアはオッズ上こそグループ最下位評価だが、守備が堅く、決して弱小チームではない。
日本は「勝って当然」と見られるぶん、取りこぼせばオランダ戦ドローの価値が薄れてしまう。逆にここで勝てば、グループ突破が一気に現実味を帯びる。順位を争う直接の相手は3番手スウェーデンで、最終節6月26日(ダラス)に当たる。その前のチュニジア戦が、突破へ向けた最初の山場となる。
優勝オッズだけ見れば、森保ジャパンの頂点到達はまだまだ遠い。日本はあくまで「グループ突破候補の2番手」評価だ。だが当の日本は、過去最高のベスト16を越え、その先の「優勝」まで見据えてこの大会へ乗り込んできた。世界の評価と、チームの目標。その差こそが、今の森保ジャパンの伸びしろだ。オランダ戦の2-2は、世界と森保ジャパンの距離を一歩縮めてみせた90分だったのだ。
(ケン高田)

