写真のための数分間
その日、ようやく息子が眠ってくれて、私はたまっていた哺乳瓶をシンクで洗っていました。手を動かしていると、ソファでスマホを見ていた夫が立ち上がり、こちらへ近づいてきました。「ちょっと抱っこさせて、写真撮るから」。そう言って、夫は眠っている息子をそっと抱き上げます。窓を背にして息子を抱え、自分で何枚か写真を撮ると、夫はすぐに息子を私の腕へ戻しました。そしてまたソファに座り、スマホの画面に視線を落としたのです。私は、まだ半分残った洗い物に向き直りました。
「いいね」が並ぶ投稿
少しして手が空いたとき、SNSを開くと、先ほどの写真が投稿されていました。「育児に協力してます」。短い言葉とともに並んだ写真には、もう何十もの「いいね」がついています。「素敵なパパ」「理想のご主人ですね」。知らない人たちのコメントが、どんどん増えていきました。協力。その言葉を、私は何度も見返しました。夜中の授乳も、毎日の哺乳瓶洗いも、保育園の支度も、ほとんど私が一人でしてきたことです。夫がしたのは、眠っている息子を数分だけ抱いて、写真を撮ること。それでも世間から見れば、彼は立派な父親なのだと思い知りました。
