補助金は通貨崩壊の危機を先送りにするだけ
――まったく明るい未来が見えないのですが、この先、日本はどうなってしまうのでしょうか?
「一つ言えるのは、円安に史上最大の石油ショックが合わさることで、深刻な食糧危機が発生する可能性があります。実際、日本の農家さんは今、大ダメージを受けています。
日本は肥料・原料の大半を海外からの輸入に頼っていて、特に原油に関しては中東に依存しているので、中東混乱のあおりを受けて日本への供給を一時ストップするなどの『二次リスク』が発生しています。価格が高くても、手に入るならまだマシですけど、そもそも手に入らないという状況になりかねません。
また、史上最大の石油ショックは、通貨崩壊の時期を前倒しにする可能性があります。今後、世界的にインフレが進行するのは間違いないので、各国は金利を上げてインフレを抑制しようとしますが、日本の場合、日銀債務超過危機と日本政府の債務危機を抱えているので、他国並みに金利を引き上げることができません。したがって、他国との金利差が拡大し、それは大きな円安要因となります。
そうなると財政出動を求める国民の声が非常に強くなるので、これに応えるために高市総理は巨額の補正予算を組み、財政支出を拡大しようとするでしょう。高市総理としては、まさに積極財政を実施する大義名分ができたと、プラスに解釈するかもしれません。
財源は当然、国債です。しかし、ただでさえ日本財政が信用を失い、大きく円安が進んでいた状況下において、国債発行額を拡大すれば当然円安はさらに進んでしまう。
また、日銀の買支えがなければ、巨額の国債を消化するのは不可能でしょう。つまり、日銀が国債買入額を増額する可能性が高い。
それは、『円が増える=円の価値が下がる』という市場へのサインとなるので、やはり円安が進みます。このように、史上最大の石油ショックは、通貨崩壊の時期を前倒しにしてしまうのです。
――今すぐにできる政策としては、何が有効でしょうか?
「たとえば、ガソリン補助金(正式名称:燃料油価格激変緩和対策事業)をやめることです。貴重なガソリンの枯渇を早め、不必要に財政を悪化させるだけです。
ガソリン補助金の最も根深い問題は、『本来上がっているはずの価格』が政府の力で隠されてしまうことです。補助金によってガソリン価格が固定されると、史上最大のエネルギー危機を感じることができなくなります。
世界中が大騒ぎになっているのに、日本に危機感が乏しいのはガソリン補助金の影響が極めて大きいでしょう。
この補助金政策を継続するためには国債の増発が不可避になってきますが、それは日本財政への信頼を下げ、円安を更に悪化させる要因になります。人気取りのためのその場しのぎはやめるべきです。
ただ、補助金をやめれば危機が去るのかと言えば、そうではありません。元々あった通貨崩壊の危機を多少先送りにするだけ、というのが現実です。
すべての国民は『現実』を見る必要がある
――日本はすでに崩壊寸前というところまで来てしまっているのですね。この先、私たちはどうすればいいのでしょうか?
「現在の債務残高対GDP比の水準は、すでに太平洋戦争敗戦直前の水準を超えています。『新しい戦前』という言葉をたまに目にしますが、正確には戦前ではなく『敗戦前』と言うべきでしょう。
もういつ経済敗戦を迎えてもおかしくない、というのが現状です。これまでは円の強さを背景にした大借金で現実逃避が可能でしたが、もうそれはできません。すべての国民は『現実』を見る必要があるでしょう。
これほど少子化と高齢化が進み、かつ、食料自給率とエネルギー自給率が著しく低い状況で通貨崩壊が起きたことはありませんでした。通貨崩壊を防ぐには財政再建を行い、市場の信頼を回復するしかないのですが、それは不可能です。
財政再建は、具体的にいえば歳出の大幅カットと大増税を意味します。しかし、それを国民が受け入れるはずはありません。だから私は、日本の通貨崩壊は避けられないと思っています。その通貨崩壊の到来を早めるのが、サナエノミクスなのです。
これは以前からの私の一貫した主張ですけれども、日本は大崩壊を避けられません。ただ、避けることはできなくても、同じ失敗を繰り返さないでほしい。過ちの繰り返しを防ぐために、新書『サナエノミクスによろしく』を書きました。
だから、この本は若い人に読んでほしいですね。厳しいことしか書いていないけれど、ここに書いてあるとおりのことが起きますので、『こうした政策は将来に向けてやってはいけないんだな』という発想になってほしいと思います」
文/集英社インターナショナル

