6月15日、創業80周年を迎えるスガキヤが、関東市場への再挑戦に乗り出すことを発表した。2026年秋冬、神奈川県に2店舗を出店し、3年で50店舗を目指す方針だ。名古屋で愛されてきた“ラーメンと甘味”の独自業態は、首都圏で通用するのか。
スガキヤ、約20年ぶりの関東再進出へ
名古屋人のソウルフードとして知られる「スガキヤ」が、再び首都圏へやって来る。
スガキコシステムズ株式会社は2026年6月15日、創業80周年を機に経営体制を刷新し、新社長に菅木寿一氏が6月24日付で就任すると発表した。
同時に、2026年秋冬に約20年ぶりとなる関東に再進出し、年内に神奈川県へ2店舗を出店、さらに3年で50店舗の展開を目指すという大きな方針も打ち出した。
このニュースは、ラーメン業界にとって大きな意味を持つ。なぜなら、スガキヤにとって関東は「初進出」ではなく、「再挑戦」だからだ。過去に一度失敗した市場へ再び乗り込む。その背景には何があるのだろうか。
スガキヤはかつて関東にも店舗網を持っていた。ただし、その頃のスガキヤは現在の東海地区で見られるような店舗とは少し異なる戦略を取っていた。
定番のスガキヤラーメンを提供しながらも、味噌カツなどの名古屋めしを取り入れたり、関東向けに醤油ラーメンの販売を試みたり、地域に合わせた商品開発を積極的に行っていたのである。
もちろんスガキヤらしさが失われていたわけではない。しかし、名古屋発の個性的なラーメンチェーンとしての魅力と、関東向けにアレンジした商品群との間で、ブランドの打ち出し方がやや曖昧になっていた面は否めない。
結果として、名古屋のソウルフードとしての存在感も、関東圏に広がるラーメンチェーンとしての立ち位置も十分に確立できなかった。そして2006年、高田馬場店の閉店を最後に関東から姿を消した。
関東撤退から20年。
今回の再進出は、かつての経験を踏まえながら、「スガキヤとは何か」をより明確に打ち出す挑戦になるだろう。
今回の発表で興味深いのは、単なる新規出店ではなく、「3年で50店舗」という具体的な数値目標が示されたことだ。これは試験出店にとどまらない本格進出とみられる。
“名古屋の味”はラーメン激戦区で通用するか
スガキヤは現在、東海地方を中心に約300店舗を展開する。地域ブランドとしては圧倒的な認知度を誇るが、人口減少社会の中で持続的な成長を考えれば、新たな市場開拓は避けて通れない。
さらに今回の発表では、海外展開やM&A、新業態開発にも言及している。つまり新社長体制が目指しているのは、「東海の人気チェーン」から「全国チェーン」へ全国展開を視野に入れた成長戦略だ。
菅木寿一新社長は「1000店舗チェーン構築」を掲げている。その第一歩が関東進出なのである。
では、首都圏での勝算はあるのだろうか。
スガキヤの強みは何よりも価格だ。安くて、早くて、気軽に食べられる。
しかしそのポジションにはすでに強力な先行者がいる。首都圏の駅前を広く押さえている「日高屋」、そして郊外型チェーンとして根強い存在感を持つ「幸楽苑」だ。
特に日高屋との比較は避けられない。日高屋は神奈川県だけでも多数の店舗網を持ち、首都圏の生活動線に深く入り込んでいる。仕事帰りに一杯、昼食にサッと利用するという日常利用のポジションを確立しているのだ。
スガキヤが同じ価格帯で勝負するなら、当然ながら比較対象になる。問題は、関東の消費者がスガキヤをどう認識するかだ。
名古屋では「子どもの頃から食べている味」だが、首都圏ではそうではない。「ノスタルジー」という大きな武器が存在しない。その中で価格だけの勝負になると、既存チェーンとの差別化は難しくなる。
もう一つの課題は味だ。スガキヤのラーメンは独特である。
豚骨をベースにしながら魚介を合わせた和風豚骨。家系ラーメンほど濃厚ではなく、博多ラーメンほどわかりやすさもない。東海地方ではこの味が長年愛されてきたが、首都圏のラーメン市場は世界でも有数の激戦区である。
醤油、塩、味噌、豚骨だけでなく家系、二郎系、つけ麺、煮干し、淡麗系など、多様なジャンルがひしめき合う中で、スガキヤのライトな魚介豚骨がどこまで受け入れられるかは未知数だ。
一度食べて終わりではなく、繰り返し利用される存在になれるか。そこが最大の勝負になる。
だからこそ、今回の50店舗計画は簡単ではない。出店すればすぐ成功する市場ではないからだ。
むしろ最初の数年間は認知拡大のための「我慢の時間」が必要になるだろう。ただし、スガキヤには日高屋や幸楽苑にはない特徴がある。それが甘味である。

