
本作は、トップ俳優でありながら『アリー/スター誕生』(18)、『マエストロ:その音楽と愛と』(23)など監督としても高い評価を受けるクーパーが手掛けた監督第3作目。友人の実話をもとに、人生の岐路に立つ大人たちの葛藤と再生を描く。ニューヨークを舞台に、離婚の危機に直面した夫婦が、それぞれの理想や価値観と向き合いながら、新たな一歩を踏みだしていく姿を、ユーモアと温かなまなざしで映しだした、いまを生きる大人たちへのエールとなる作品だ。

主人公は2人の子どもに恵まれ、順風満帆な結婚生活を送っていたアレックスとテス。しかし中年を迎え、かつて抱いていた夢や諦めきれない思いと向き合うことになり、夫婦関係にも大きな変化が訪れる。失意のなか、偶然足を踏み入れたスタンダップコメディの世界で新たな生きがいを見いだしていくアレックス。一方のテスも、自らのこれまでとこれからを見つめ直し、自分らしい生き方を模索していく。長年連れ添った夫婦だからこそ抱える痛みや戸惑い、そしてその先にある希望を丁寧に映しだした本作。主演のウィル・アーネットとアカデミー賞受賞俳優のローラ・ダーンをはじめとする実力派キャストが、繊細かつリアルなアンサンブルで物語に深みを与えている。

本作のきっかけとなったのは、アーネットが耳にした、イギリスのコメディアン、ジョン・ビショップの実話。離婚の危機に直面したビショップが、偶然挑戦したスタンダップコメディを通じて自身と向き合い、夫婦関係の修復へとつながったエピソードに魅了されたアーネットは、その物語の映画化を構想。のちにクーパーへ企画を持ちかけたことで大きく動きはじめた。結婚生活のなかで少しずつ積み重なった心の距離や、自分自身を見失う苦しさ、そして再び前を向くまでの過程を丁寧に描きだした本作には、クーパー自身の強い共感と思いが込められている。

主人公アレックスを演じるアーネットは、役作りのためにニューヨークの実在するコメディクラブへ通い、観客の前でスタンダップコメディを披露したという。クーパー監督は、アーネットが持つ大胆さと繊細さが役に不可欠だと考え、実際の舞台で成功や失敗を経験しながらキャラクターを作り上げる方法を選択。さらに、ユング心理学に着想を得た「ドリームワーク」という独自のリハーサル手法も採用され、俳優たちは自身の夢をもとに役柄を深く掘り下げた。こうした徹底した準備が、人生の転機を迎えた大人たちのリアルな姿を支えている。

ブルーレイ+DVDセット、デジタル配信(購入)には、映画の舞台裏に迫るメイキング映像「メイキング・オブ『これって生きてる?』」を収録。リアルなニューヨークを舞台に繰り広げられる、いまを生きる大人たちに贈る新時代の応援歌をぜひ家でも楽しんでほしい。
文/鈴木レイヤ
