「一人で行ったんだ」と答えて
彼女がスマホの画面を見せながら、できるだけ普段どおりを装うような声で聞いてきました。
「この看板の写真、誰と行ったの?」
その瞬間、共有したアルバムにあの一枚が紛れていたことに、はっきりと気づきました。僕は少し迷ってから、「一人で行ったんだ」と正直に答えました。嘘ではありません。
けれど、なぜ一人で行ったのか、その理由まではうまく説明できませんでした。彼女の表情がほっとしたようで、それでいてどこか晴れないままなのが、僕にもわかりました。
そして…
一人で行った、と伝えただけでは足りなかったのだと、あとになって思いました。彼女を不安にさせたのは、展示に行ったことそのものではなく、それを話さずにいた僕の態度だったのです。
数日して、僕は思いきって「あの写真展のこと、ちゃんと話したいんだ」と自分から切り出しました。一人で作品の前に立つ時間が昔から好きなこと、それを言い出すのが後ろめたかったこと。うまくはないなりに、ひとつずつ言葉にしてみたのです。
彼女は「話してくれてうれしい」と笑ってくれました。一人で過ごしたい日があることも、これからはきちんと言葉にする。そう決めました。次に出かけるときは、看板の前で撮った写真を、自分から見せようと思います。
(20代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
