70歳の映画スターが免許返納をめぐる大騒動に巻き込まれていく姿を描いたコメディー『免許返納!?』が、6月19日から全国公開される。本作で、『免許がない!』(94)で演じた役と同名の俳優・南条弘をコミカルに演じた舘ひろしと、南条に振り回されるマネジャーの川奈舞を演じた西野七瀬に話を聞いた。
-今回は、脚本の段階から関わったというお話もありました。
舘 素晴らしい脚本だったんですけど、過去と現代が入り乱れているようなところが少しあったので、時系列をすっきりさせるということだけを申し上げました。それで、せりふなどは、現場で西野くんを頼って(笑)、ヘッドアレンジ(即興)というか、その場の空気の中でやらせていただきました。
-今回の役は、舘さんがこれまで演じてきた役のセルフパロディーみたいなところがありましたが…。
舘 僕は、どの役も結局は自分自身のような気がするんです。自分の中には、コミカルな部分、ワイルドな部分、ハードボイルドな部分があります。例えば「あぶない刑事」の場合は、ハードボイルドな部分を膨らませて作品に向かっていきました。今回は、コミカルな部分をちょっと膨らませてやっているので、基本的には何をやってもあまり変わらないという感じです。演じることがあまりうまくないので、自分の中にあるもの、自分自身でやるしかないということです。
-西野さん、出演が決まった時の気持ちはいかがでした。
西野 『帰ってきた あぶない刑事』(24)の時に、手錠のかけ方などを現場で練習させていただいたりして、すごくうれしかった思い出があります。今回はマネジャー役で、かなり近い役でご一緒できるので、すごく楽しみだなという気持ちでした。
舘 今回の作品はとにかく西野くんによって成り立つところが多いので、西野くん次第です。これが当たらなくても僕には一切の責任はありません(笑)。もう役柄そのままに、彼女次第です。
-2度目の共演でしたが、お互いの関係性に変化はありましたか。
舘 『帰ってきた あぶない刑事』の時は、西野くんはクールな女性刑事というキャラクターだったので、ちょっと近寄りがたいという感じだったんですけど、今回は西野くんが頑張ってくれないと、この作品が成立しないというぐらいに思っていたので、最初の西野くんの登場シーンから、彼女の持っているあの感じがすごくよくて、そのまま最後まで行かせてもらいました。
西野 前回は、クールな役でしたし、舘さんとの初めての共演ということでの緊張感もあったのですが、今回の役は、物おじしないという設定でしたし、現場でも、舘さんがいろいろとご提案をしてくださることがあったので、すごくいいコミュニケーションが取れたと思います。
-演じる上で気を付けたことはありましたか。
舘 とにかく、彼女に見下してもらいたいと思いました。西野くんが僕を見下せば見下すほど面白くなると。それが僕の中に基本としてありました。彼女が遠慮するので、「遠慮しないでほしい」とお願いしました。
西野 最初は、川奈は南条さんに振り回されて困るという方向性なのかなと思っていました。でも本読みをしてみたら、もう困るとかのレベルではなく、「このばか」と南条さんに対し言ってしまうぐらいの感じなのかと思いました(笑)。それからは、もう遠慮なくやらせていただいたので、そこがすごく面白い作品になっていると思います。すごく楽しかったです。
舘 コメディーは真面目にやった方が面白いんです。この場合は、南条を見下している川奈というスタンスが面白いので、彼女は真剣に僕を見下して、真面目にやるということが大事だと思ったんです。
-ある意味、西野さんにとっては挑戦的な役柄でしたか。
西野 こういう川奈みたいな役柄は今まであまりやったことがなかったので、見る人によっては新鮮に感じてもらえると思います。
舘 「この役をやったら“二枚目女優”としてはもう成立しなくなるかもしれないけど大丈夫?」って心配して聞いたら、「大丈夫です」って。でも俳優としての幅を広げるという意味ではいいのかなと思いました。
-舘さんにとって、今回の西野さんのような若い人たちとの共演はどんなイメージなのですか。
若い人が持っている感性は、僕らには全くないものなので、それを信じていくというか、乱暴な言い方をすると、若い人から学んでしまおうみたいなことが大事なのかなと思います。僕らも長いこと俳優をやっている中で、忘れてしまったことや、気が付かないことがいろいろとあります。でも、それを若い人たちが持っていたり、いろんなことを投げかけた時にも、自然にできてしまう。僕らの若い時よりも、お芝居に対するテクニックやうまさが違います。僕らはもっと不器用だったような気がします。とにかく「芝居はするな。せりふなんか覚えてこなくてもいい、存在感だけで見せろ」という時代でしたから。今はそれだけでは駄目になってきて、そういう意味でも、今の若い人たちにはお芝居では全くかなわないので、そこは彼らの力を借りてやっていくことになるのかなという気がします。
-西野さんは、舘さんとの共演はプレッシャーもあったのではないですか。
西野 最初はやっぱり難しいと思いました。「舘さんにそんなこと言えないよ。できるのかな」みたいな感じでしたが、現場で舘さんが「もっと冷たくていいよ」みたいなことを度々おっしゃってくださったので、こちらも遠慮なく演じることができました。
-南条のライバルの尾崎誠を演じた宇崎竜童さんとの共演はいかがでしたか。
舘 この映画の前に『港のひかり』(25)でもご一緒したんですけど、彼の持っている存在感が支えてくれたところがあります。2人の関係性は、表面的には憎しみ合っているように見えるけれど、心の底ではつながっている。それをどう表現するのかが難しかったです。南条が尾崎の入院している病院に行って「誠、生きろ」と言うのですが、そこに行くまでの2人の描写が全くないんです。なので、そこをどういうふうに見せるのかは苦労しました。でも、相手が宇崎さんだったからできたのかなと。2人がオートバイで並んで走るシーンは、『イージー・ライダー』(69)のイメージです。ピーター・フォンダとデニス・ホッパー。2人のぶつかり合いみたいな。すごく力強い2人がいるので、相手が宇崎さんで本当によかったと思いました。
-完成作をご覧になったと思いますが、セルフパロディーのようなところにご自分で照れてしまうようなところはありましたか。
舘 照れたりはしませんでしたけど、やっぱりここはもうちょっと押せばよかったかなと思ったところやあのせりふはこう言えばよかったなというところはありました。だから、本当に面白いのは、西野くんだったり、吉田鋼太郎さんだったり、そういう周りの人の方だと思います。何回も声を出して笑ってしまいました。
-これから映画を見る観客や読者の方に向けて一言ずつお願いします。
舘 僕の中では、30年前の『免許がない!』の南条が再び『免許返納!?』に帰ってきたと思っています。それを楽しんでもらいたいと思います。それから今までにない西野くんが見られると思いますよ。
西野 やっぱり私は、舘さんのコミカルなところが一番の魅力だと思うので、そこを楽しんでもらいたいと思います。
(取材・文・写真/田中雄二)

