6月16日、東京ディズニーリゾートが駐車料金の値上げに踏み切った。若者離れへの懸念もあるが、狙いはより単価の高い顧客層の取り込みにあるとみられる。一方、ハウステンボスや富士急ハイランドも新アトラクションやキャラクター施策で反転攻勢をかける。テーマパーク業界に何が起きているのか。
オリエンタルランドにとって中高年層の獲得は都合が良い理由
市場拡大を続けるテーマパーク業界。その背景には1人あたりの単価増があり、2025年の帝国データバンクの価格調査では、主要テーマパークのフリーパスチケットは前年比で5.4%増加した。
国内のテーマパークにおけるシェアのおよそ半分を占める東京ディズニーリゾートは、単価アップの象徴的な存在だ。コロナ禍以前のゲスト1人あたりの売上高は1万1000円前後だったが、直近では1万8000円を超えるまで上がっている。
3000万人を超えていた来場者は2000万人台後半まで落ちた。それでも売上高は過去最高を更新している。ここが最大のポイントだ。値上げを進めても、売上を押し上げるだけの人が訪れているのだ。
これまでテーマパークは来場者数を増やすことに力を注いできた。しかし、いたずらに人を増やしてもアトラクションの待ち時間が長いなど、来場者に負担をかけることになる。
来場する人の総数を減らすことで来場者のストレスを軽減することができるうえ、運営側はオペレーションや安全管理に関連する負担を抑えることができるわけだ。
オリエンタルランドは、6月16日から駐車料金を普通乗用車と大型車で1000円引き上げた。
SNSなどでは価格改定に反発する声も聞こえてくるが、例えば4人家族で来園する場合は追加負担は1台あたり1000円で、4人利用なら1人あたり250円となる。負担感は少ない。懐事情が厳しい学生などの若者は電車で来場するケースが多いため、影響は限定的だろう。
また、休止中の人気アトラクション「スペース・マウンテン」の再オープンは2027年であり、足元の増収に向けた施策は限られてくる。経営という視点に立てば、会社が成長するためのやむを得ない値上げだと見るべきだろう。
いっぽう、短期間で単価増を図ったことにより、東京ディズニーリゾートでは若年層の来園比率が低下している。40歳以上が35%を占めている状況だ。若者が離れることを懸念する声もあるが、人口動態を考えると中高年層の比率は今後も上昇するはずだ。経済的にも余裕があり、運営側にとっては得意客である。
さらにこの層を積極的に獲得する別の理由もある。クルーズ船の就航だ。
オリエンタルランドは2028年度にクルーズ船の運航を計画している。3300億円もの巨額プロジェクトだ。2026年3月には子会社の株式会社オリエンタルランド・クルーズを設立し、社員の募集も開始した。計画は順調に進んでいるようだ。
国土交通省がまとめた資料「クルーズ市場を取り巻く最近の動き」によると、世界のクルーズ旅客では40歳未満も36%を占めており、若年層の存在感も高まりつつあるが、従来のクルーズ市場では中高年層は重要な顧客層とされている。
多くはミドル・シニア層なのだ。そして、40~50代の利用客のリピーター率も高いことがわかっている。そのど真ん中の層を中核の東京ディズニーリゾートで囲い込むことの重要性は高い。
オリエンタルランドのビジネスは高単価化を進めて富裕層に狙いをシフトしており、来場者数を追いかけていたかつての姿とは様変わりしているのだ。
ハウステンボスの売上回復は道半ば
長崎にあるハウステンボスは新たな顧客開拓に力を入れ始めた。2027年に開業以来初のジェットコースターを導入すると発表したのだ。
ハウステンボスは旅行会社大手エイチ・アイ・エスが運営していたが、2022年にアジア系の投資ファンドPAGに売却されていた。
その後、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンを再建したことで知られる森岡毅氏が代表を務めるマーケティング会社、株式会社刀の支援を受けて再活性化を進めていた。
ハウステンボスは2026年4月に「エヴァンゲリオン・ザ・ライド-8K-」をオープン。開業後1ヶ月間の来場者数は前年同期間比で130%となり、絶叫マシンの導入は成果を出していた。2027年のジェットコースターの開業で、絶景・ライド型アトラクションを集客の柱の一つに据える動きと見られる。
一時存続が危ぶまれていたハウステンボスだが、2010年にエイチ・アイ・エスの創業者である澤田秀雄氏が再生請負人として招かれ、見事なV字回復に導いた。
澤田氏は東京ディズニーランドやユニバーサル・スタジオ・ジャパンを後追いするのではなく、オンリーワンの施設を目指した。その象徴的なものが日本一のイルミネーション「光の王国」だ。アトラクションに頼るよりも、観光地化することで集客していたのだ。
しかし、近年は売上が伸び悩んでいた。2025年9月期の売上高は257億円で、コロナ前の2019年9月期の283億円には及ばない。定期的に値上げを行なっているにも関わらずだ。
ハウステンボスは県外の来場者が6割程度を占めている。旅行という要素を伴う人が多いわけだ。現在は交通費や宿泊費の高騰が激しく、旅行そのものが贅沢なレジャーになりつつある。遠隔地にあるテーマパークは集客しづらい状況なのだ。
そこでハウステンボスは絶叫マシンのニーズを拾い、目的型の来場を増やす選択をしたと見ることができる。

