
「宇宙人はもう地球に来ているのではないか」
UAP、いわゆる未確認異常現象に関する情報公開や、地球外生命を扱う映画の話題によって、そんな想像は今も多くの人の関心を引きつけています。
しかし、宇宙人が存在する可能性と、彼らが地球を訪れている可能性は別の問題です。
そんな中、豪ニューサウスウェールズ大学(UNSW)の研究者は、宇宙人がいたとしても、彼らが地球に来ない「3つの理由」を科学的に推理しました。
目次
- 理由1「宇宙があまりにも広すぎる」
- 理由2「恒星間旅行には莫大なエネルギーが必要」
- 理由3「地球の環境は宇宙人にとって快適とは限らない」
理由1「宇宙があまりにも広すぎる」

まず大きな壁になるのが、距離です。
太陽に最も近い恒星であるプロキシマ・ケンタウリでさえ、地球から約4.3光年も離れています。
これは距離にして約40兆キロメートルです。
太陽と地球の距離の26万8000倍にもなります。
私たちの感覚では「隣の星」と呼びたくなる場所でさえ、実際には想像を超えるほど遠いのです。
現在、人類が作った最速級の探査機であるパーカー・ソーラー・プローブは、最高速度で秒速およそ191キロメートルに達します。
これは非常に速いように聞こえますが、光速のわずか0.064%ほどです。
この速度でプロキシマ・ケンタウリを目指した場合、到着までに約6650年かかります。
つまり、今の人類の技術では、もっとも近い恒星系に向かうだけでも、文明の歴史に匹敵する時間が必要になるのです。
では、もし高度な宇宙文明が光速に近い速度で移動できたらどうでしょうか。
ここで問題になるのが、アインシュタインの相対性理論です。
高速で移動する宇宙船の中では、外の世界より時間の進み方が遅くなります。
これは「時間の遅れ」と呼ばれる現象です。
たとえば、NASAの宇宙飛行士スコット・ケリー氏は、国際宇宙ステーション(ISS)で約1年を過ごした後、地上にいた一卵性双生児の兄弟よりも、ほんのわずかに若くなったとされています。
この差は数ミリ秒ほどで、日常生活ではほとんど意味を持ちません。
しかし、遠い恒星系から地球まで光速に近い速度で往復するとなると、話は大きく変わります。
宇宙船の乗員にとっては短い旅でも、故郷の惑星では何十年、あるいは100年以上が過ぎている可能性があります。
地球を訪れた宇宙人は、帰るころには自分たちの時代から取り残された「時間の流刑者」になってしまうかもしれないのです。
理由2「恒星間旅行には莫大なエネルギーが必要」
2つ目の問題は、エネルギーです。
宇宙船を高速で動かすには、膨大なエネルギーが必要です。
しかも、速度が光速に近づくほど、必要なエネルギーは急激に増えていきます。
相対性理論では、物体は光速に近づくほど加速が難しくなります。
光速に達するには無限のエネルギーが必要になるため、質量を持つ宇宙船が光速そのものに到達することはできません。

さらに、宇宙空間は完全な空っぽではありません。
真空に近いとはいえ、そこには水素原子などの微粒子がまばらに存在しています。
低速であればほとんど問題にならない粒子でも、光速に近い速度でぶつかれば、強烈な放射線や熱として宇宙船に襲いかかります。
それは乗員や機器にとって致命的なダメージとなり、船体を少しずつ削り、最終的には破壊する可能性もあります。
SFでは、ワープ航法のように光速を超える移動がよく描かれます。
実際、物理学者は、理論上は空間そのものを伸び縮みさせることで、見かけ上の超光速移動が可能になるモデルを提案しています。
しかし、これにも現在の科学では実現不可能なほどのエネルギーが必要だと考えられています。
ここで、さらに根本的な疑問が出てきます。
なぜそこまでして地球に来る必要があるのでしょうか。
地球に存在する資源や物質は、地球にしかない魔法のようなものではありません。
地球まで到達できるほど高度な文明なら、必要なものを自分たちの惑星や近隣の天体で作り出せる可能性が高いです。
つまり、恒星間航行にはあまりにも大きなコストがかかる一方で、地球を訪れる合理的な理由はそれほど明確ではないのです。

