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「日本人を分断せよ」不気味に進行する中国の対日プロパガンダ…人民解放軍・政治工作ドクトリンの全貌

「日本人を分断せよ」不気味に進行する中国の対日プロパガンダ…人民解放軍・政治工作ドクトリンの全貌

工作の照準は、日本と台湾の分断にも

工作の照準は、日本と台湾の分断にも合わせられている。

2024年8月、中国政府系シンクタンクの幹部で外交官出身の高志凱氏は、海外メディアに対し「台湾住民の10%は日本人の子孫で、頑固な独立派にはこうした日裔台湾人が多い」と語り、統一後には彼らに中国への忠誠を書面で誓わせる必要があるとまで述べた。

1945年の終戦時に在台日本人およそ30~40万人が引き揚げたという史実を無視した、根拠に乏しい主張だ。

だが目的は学問的真実の提示ではない。「台湾人の中に日本に内通する裏切り者がいる」という不信の種を撒くこと、そして日本の保守層に台湾支援をためらわせること。

事実と嘘を織り交ぜた話を無数のアカウントに反復させ、時間をかけて「議論に値する論点」へと昇格させる——スパムフラージュ(大量偽アカウントによる世論操作)と呼ばれる工作の本質がここにある。

国内でより根深いのが、沖縄をめぐる分断工作だ。

公安調査庁は、中国側が沖縄の基地問題や琉球独立論に関心を示してきたと毎年のように指摘している。

恐ろしいのは「イデオロギーのロンダリング」と呼ばれる手口である。平和主義、環境保護、自己決定権、人権——民主主義社会で誰もが正当と認める価値観の皮をかぶせ、その内側に日米同盟の分断という地政学的目的を包み込んで送り込む。

最大の実験場は台湾だ。中国は「中国はいずれ米国を超える」「米国は衰える」という認識を執拗に植え付け、台湾人の間に「超大国の敵にはなりたくない」という意識を植え付けつつある。

その結果、軍事的脅威に直面しているにもかかわらず、中国を嫌うと答える台湾人は、日本の8〜9割と比べて明らかに低い。これが認知戦の成果である。

武力行使への忌避感という日本の美徳は、巧妙な認知戦にとって格好の標的

市場という首根っこを押さえることで、相手に何も言わせずに口を塞ぐ。これもまた、銃を一発も撃たない戦争である。

そして、これは日本への警鐘にほかならない。有事に「戦うより逃げろ」「基地があるから狙われる」という言説が情報空間を覆い尽くせば、それはミサイル以上に確実に国家の防衛意志を麻痺させる。武力行使への忌避感という日本の美徳は、巧妙な認知戦にとって格好の標的なのだ。

世論調査が示した日本人の意志だけでは、安心材料にはならない。8割が中国に親しみを感じないという土壌は、裏を返せば、中国関連の情報——たとえそれが偽情報であっても——に過剰反応し、嫌悪と恐怖から冷静な政策論議を見失いやすい社会だということでもある。

相手を好きにさせる工作は失敗した。だが、相互不信を極限まで高め、対話の余地を奪い、社会を分断する工作は、着実に根を張っている。

中国のプロパガンダは、少なくとも対中親近感の上昇としては表れていない。しかし、疑心と分断の種としては、日本の深層に不気味に根を下ろしつつある。

文/小倉健一  写真/shutterstock

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