『ゼルダ』大型新作は、時期的にまだ先か
もちろん任天堂も、可能であれば大型新作を次々にリリースしたいはず。しかし、近年は開発費や人件費の高騰が続いており、AAA級タイトルの開発期間も長期化しています。
実際、『BotW』から続編となる『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』(以下、TotK)の発売までは、約6年を要しました。同程度の期間が必要だと仮定すると、2023年発売の『TotK』に続く大作級の完全新作は、2029年頃になる可能性も十分考えられます。
『BotW』は3,384万本、『TotK』は2,256万本という世界的なヒットを記録し、従来のシリーズファンだけでなく、多くの新規ユーザーを獲得しました。しかし、新たな『ゼルダ』作品が長期間登場しなければ、せっかく増えた新規ユーザーがシリーズから離れてしまう恐れがあります。
その事態を回避するには、次の大型『ゼルダ』までの空白期間を、『ゼルダ』関連作品で埋めなければなりません。そこで白羽の矢が立ったのが、『ゼルダの伝説』シリーズ初のスイッチ2独占作品となる『時オカ』のリメイク版なのでしょう。
ちなみに、シリーズ作でいえば『ゼルダの伝説 知恵のかりもの』が2024年に発売されており、遊び応えのある良質な作品でした。しかし、描画表現やゲーム性の方向が『BotW』とは大きく異なっていたため、2025年5月発表の販売本数は409万本ほどです。1タイトルとしては十分な成果ですが、『BotW』によって広がった新規ユーザー層にはあまり届いていないことも、各販売本数の比較でうかがえます。

2011年のリメイク版『ゼルダの伝説 時のオカリナ 3D』(任天堂)
「3Dゼルダ」のファン層をつなぎとめるのに最適?
『ゼルダの伝説』シリーズは、初代作品の時点で2Dアクションアドベンチャーゲームの面白さを構築し、スーパーファミコン時代の『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』で頭ひとつ抜けた完成度を見せました。
そうした偉大な作品に続き、シリーズの転換点となったのが、1998年に発売された『時オカ』です。シリーズ初の本格的な3D作品として登場した本作は熱烈な支持を集め、「3Dゼルダ」という新たな流れを確立しました。シリーズはその後、「2Dゼルダ」と「3Dゼルダ」というふたつの流れに分かれて進化を続けていきます。
『BotW』や『TotK』は、3Dゼルダの系譜に名を連ねる最新作です。そして、その道筋をさかのぼると、『時オカ』にたどり着きます。『BotW』や『TotK』へと続く、3Dゼルダの原点ともいえる存在です。
『BotW』や『TotK』で増えた新規層を意識するなら、やはり「3Dゼルダ」を投入するのが自然な選択です。しかし前述の通り、完全新作をいますぐ用意するのは難しい状況にあります。
それならば過去作のリメイクが候補となりますが、『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』はWii UでHD版が発売され、『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』もスイッチ向けにリマスターされました。『風のタクト』以降のトゥーンリンク作品も高い人気を誇りますが、『BotW』や『TotK』から入った新規層にどれだけ響くかは未知数です。
その点『時オカ』は、2011年にリメイクされたものの、すでに15年近く前の作品です。また、2011年のリメイクはニンテンドー3DS向けだったため、「現代基準の映像で生まれ変わり、大画面で楽しめる『時オカ』」は、まだ誰も体験したことがない未知の領域です。
『時オカ』は、『BotW』や『TotK』につながる3Dゼルダの原点であり、シリーズの転換点となった歴史的名作です。そして、大画面向けでは初の本格リメイクになる可能性が高いとなれば、このタイミングに投入する『ゼルダ』作品として、『時オカ』ほどふさわしいタイトルは他になかなかありません。
『BotW』や『TotK』でシリーズに触れた新規ユーザーにとっては、3Dゼルダの原点を知る絶好の機会になります。また、往年のファンにとっても、大画面かつ高画質でもう一度名作を遊べるチャンスです。その両方に訴求できるポテンシャルを考えれば、任天堂が『時オカ』を選んだのもうなずけます。
