最新エンタメ情報が満載! Merkystyle マーキースタイル
脳トレ四択クイズ | Merkystyle
シリーズ累計300万部突破! 珠玉のラブコメラノベ『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件』の“じれったさ”がオレを狂わせる

シリーズ累計300万部突破! 珠玉のラブコメラノベ『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件』の“じれったさ”がオレを狂わせる

時々天使は僕らに 悪戯をして教えるよ誰かを愛するためには もっと努力が必要

槇原敬之「どうしようもない僕に天使が降りてきた」より

 どうして、恋と雨は相性が良いのでしょう? どう考えても、鈍色の雲で覆われた曇天より、晴れわたった青空のほうが、さわやかに違いないだろうに、恋愛がテーマの小説や映画には不思議と、雨や雪の日が頻出します。

 もちろん、晴れた日の出番はもっと多いわけですが、あるいは、物語のなかで恋がドラマチックな進展を迎える割合は、雨の日のほうが高いかもしれません。しとしとと雨滴がそぼ降るセンチメンタルな景色は、ある種の心象風景として多くの名作や名曲を飾ってきたわけです。

 GA文庫からリリースされている佐伯さん(敬称ではなく筆名)の恋愛ライトノベル『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件』も、ある雨の日の出逢いから始まります。

ライター:海燕

ジャンル横断エンタメライター。主にマンガ・アニメ・ゲーム・映画を題材に、読者が感じる違和感や評価の分かれ目を言葉にする記事を執筆。最近の仕事は『このマンガがすごい!2025』CLAMP特集、マルハン東日本「ヲトナ基地」連載など。

X:@kaien

note:@kaien

※本記事は『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件』の内容にふれています。

 この作品の主人公である高校生の藤宮周(ふじみや・あまね)は、たまたま通りがかった公園で、一人の可憐な少女が雨に打たれながらブランコに座っているところに出くわします。その雨のしずくにきゃしゃな肢体をぬらした天使――それは偶然にも彼の隣の部屋に住む、学内で「天使様」というあだ名の美少女・椎名真昼(しいな・まひる)だったのでした。

■藤宮周(ふじみや・あまね)

進学して一人暮らしを始めた高校一年生。家事全般が苦手で自堕落な生活を送る。友人も少なく、自己を卑下しがち。

■椎名真昼(しいな・まひる)

周のマンションの隣人でクラスメイト。学校一の美少女で、品行方正、成績優秀、いつも微笑みをたたえ、天使様と呼ばれている。家事全般が得意。

(GA文庫公式Webサイトより引用)

 その寂しげな横顔を見過ごせなかった周は、なにげなく真昼に声をかけ、1本の傘を置いて去っていきます。よこしまな下心があると疑われないように、すばやく。それが、彼のささやかで平和な日常が変わりはじめる、最初のきっかけ。

 その後、真昼が周の部屋に傘を返しに来たとき、彼が風邪をひいてしまっていたことから、2人の関係は始まり――少しずつ、少しずつ、その距離が縮まっていきます。

 一作のラブコメディとして、ありふれたパターンといえば、そうかもしれません。雨に濡れた女の子に傘を差し出すくらい、一気に惚れ込むほど劇的な行為というわけでもないでしょう。実際、真昼もこの時点では、周に感謝する一方、彼のことがそこまで気になっているふうではありません。

 しかし、ともかく、それは1つのターニング・ポイント。いかにも無骨で不器用な少年と、ひとり何か深い悩みを抱えこんだ「天使様」の関係は、ときにいくらか配慮に欠けた一言で遠ざかったりしつつも、いつのまにか接近していきます。そうでなくちゃ!

 興味深いのは、ストーリーはあくまで周の視点からのみ描かれるので、真昼がどのような心情を抱えているのか、はっきりとはわからないこと。もちろん敵意や嫌悪を抱いていたら近寄りはしないでしょうが、実際のところ、真昼が周にどのくらい好意を感じているのかは不明です。

 本当にただの隣人として見ているのか? それとも、ほのかな恋心が萌芽しているのか? 周のフィルターを通して見ているかぎり、まったく推測できません。

 周のほうにしても、自分の部屋で一緒に過ごそうと誘ったりするのだから、彼女に何かしらの好感を抱いているのは間違いないでしょうが、それが恋の切なさへと発展してゆくものかどうか、いまひとつはっきりとしないのです。

 そもそも周というキャラクターは、どうにも思春期男子そのものにして、いわゆる「鈍感系主人公」の典型、どこかしら推理小説でいう「信頼できない語り手」めいたところがあり、彼が語る真昼の印象は、誤解を恐れずに言えば、あまり信用できません。

 それどころか、彼がいないところで真昼が他の人間とどのように向き合っているのか、その描写すら徹底的に省かれているため、本当のところ、真昼が何を考え、思い、悩んでいるかも不明のまま。そして、周もどこまで行っても鈍感なままです。

 普通に考えたら、隣室の女の子が毎日のように料理を作りに来てくれたら(最序盤で2人はそうした関係になります)、有頂天になって舞い上がりそうなものですが、周はそういうふうには考えません。

 「いや考えろよっ!」という気もしますが、周はあくまで朴訥に、真昼のような美少女が自分など相手にしてくれるはずもない、と思い込むばかりなのです……。それはやはり年ごろの少年としていかがなものか。もどかしいにも程がある。

 ただ、このどうしようもない鈍感少年だからこそ、真昼のほうも安心して部屋に出入りしているともいえるわけで、彼の態度をどう評価すべきかは微妙なところ。

 どうしても、もっとさっさと距離を詰めれば良いのと思ってしまうけれど、このいっそじれったいくらい緩慢な速度が、おそらく2人にとってはちょうど良いのかもしれません。

 実際、「信頼できない語り手」であるにもかかわらず、周が少しずつ真昼の可愛らしさに惹かれていく様子そのものは、文章の隙間から垣間見るように実感できます。そのくらい真昼は可憐でかわいい。ただ容姿が秀でているだけでなく、人間性そのものに何ともいえない、かわいらしさがあります。

 そのように、まるで恋愛に不慣れな2人らしい、カメの歩みめいたスピードではあっても、いったん変わってしまった関係が元に戻ることはありません。不器用ながらも真実の優しさを示す少年と、意外に口が悪い学園の天使様、2人の間柄はゆっくりと着実に進展してゆきます。

 その曖昧な関係性がいったいどこで決定的なポイントを迎えるのか、読者としては非常に気になるわけで、リーダビリティの高い文章のおかげもあって、ものすごい速度で読み進めてしまいました。

 あとがきでは「ほのぼのじれじれなゆるふわラブコメを目指して書いた作品」と記されているので、みごとに術中にハマっているわけですね。ぐぬぬぬ。

 そして、やがて周と真昼の温かな日々は、初めてのクリスマスを迎えることとなります。オープニングは雨で、クライマックスは雪。そこまで読むと、その天候の変化が象徴するように、2人の「ほのぼのじれじれ」な関係が、かなりのところまで変わっていっていることがわかるでしょう。

 槇原敬之に『どうしようもない僕に天使が降りてきた』という名曲がありますが、さながらこの曲の歌詞をなぞるように、「目が死んで」いた少年の前に現れたキュートな天使は、彼の生活を変え、また、彼によって変えられていくのです。

 どうにもお人好しで親切なこの「天使様」に対する、周のそっけなく不愛想な態度には、大いに口を出したいことがあるものの、それも作者のねらい通りであることは間違いありません。『DEATH NOTE』ではないけれど、ぜんぶ“計画通り”なんだろうなあ、きっと。

 そもそも、ラブストーリーとは本来、『ロミオとジュリエット』のように、愛し合う2人の間に何らかの障害があって結ばれないという展開が主流にして王道だと思います。

 ですが、この種のじれじれラブコメの場合、いっさい障害がなくても結ばれないわけで、ある意味で作者の陰謀がすべて。この先に過酷な障害が待っていないことを祈るばかりです。

 そういうわけで、もともと「小説家になろう」で人気が出て書籍化、マンガ化、アニメ化と進んだことからもわかる通り、もどかしくも楽しい作品でした。続き読も。

 それにしても、やっぱり、ぼくはこの主人公には、せっかく目の前に降りてきた天使を逃がさないよう、もっと注意してもらいたいと思ってしまう。いや、この天使はべつに、悪戯をしかけたりしなさそうだけれど、それでももっと努力が必要なことはたしかだぞ。周、がんばれ!

配信元: ねとらぼ

提供元

プロフィール画像

ねとらぼ

「ねとらぼ」は、ネット上の旬な情報を国内外からジャンルを問わず幅広く紹介するメディアです。インターネットでの情報収集・発信を積極的に行うユーザー向けに、ネットユーザーの間で盛り上がっている話題や出来事、新製品・サービスのほか、これから興味関心を集めそうなテーマや人物の情報などを取り上げ、ネットユーザーの視点でさまざまなジャンルのトレンドを追います。

あなたにおすすめ