環境省によると、2026年度に入ってからのクマによる人的被害は4〜5月で19人(速報値)、うち死者は4人に上った。4月の出没件数は1759件で、記録が確認できる2009年度以降で過去最多。岩手や福島では4人が被害に遭い、岩手では3人が死亡している。前年度の2025年度はすでに被害者238人・死者13人と過去最多を記録しており、夏休みシーズンを前に今年もそれを上回るペースで被害が拡大している。
"見えない経済被害"は年間数百億円規模か
この被害の裏側で急速に膨らんでいるのが、経済問題だ。
クマ出没情報サイト「KumaWatch」の分析によると、農作物・林産物・人身被害といった直接損失だけで年間50〜80億円規模、観光業の機会損失や自治体の対策費用まで含めた間接コストを合わせると、年間で数百億円規模に達するとの見方もある。
「果樹園では1本の木で年20〜30万円の損失が出ることもあり、登山道が1週間閉鎖されれば周辺の宿泊施設や観光業者の売り上げが数千万円規模で吹き飛ぶケースもあるという。自治体側も駆除委託費や電気柵の補助、出没時のパトロール人件費などで、被害多発地域では年間数千万〜数億円の予算を組まされている。東京商工リサーチの調査では、クマ被害の影響を受けたと答えた企業のうち45.7%が『護身用グッズを設置・配布した』と回答しており、企業活動にまで負担が広がっている実態が見えるのです」(防災ライター)
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不動産価値にも"クマの有無"が影響もっとも、こうした一方で意外な余波も出ている。
不動産コンサルティング会社・環境ステーションは、クマ被害が深刻な地域で購入希望者が様子見に入る一方、クマの生息域から外れた地域では「安全性」が新たな資産価値として注目され始めているとの指摘もある。
「また、一方で対策グッズ業界には"特需"が到来しており、北海道・札幌の専門店ではクマ撃退スプレーなどの売れ行きが好調、仙台の登山用品店では対策グッズの売り上げが前年の2倍以上に伸びたとの報道もある。被害と特需が同時進行しているのが、今のクマ経済の実態なのです」(全国紙社会部記者)
九州だけが"別世界" くまモン経済は1.5兆円超
そんな中、まったく影響を受けていない"別世界"も存在する。野生のクマが1989年に絶滅したとされる九州だ。
熊といえば、思い起こされるのが熊本県のPRキャラクター「くまモン」だが、その関連商品売上は2023年度単年で過去最高の1664億円、累計では1兆4596億円に達する。本州・北海道でクマが人を襲うたび報道が過熱する一方、九州のくまモンはそうした被害を他所に、依然「熊本の人気者」として変わらぬ人気を保ち続けているのだ。
同じ"熊"という言葉でも、東北では命と財産が脅かされ、九州では経済が回り続ける――この奇妙な対比が、近年の「クマ被害」の裏を象徴した構図といえそうだ。
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