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日本のサッカー哲学に風穴を開けた!多彩なエゴイストを描く「ブルーロック」の強烈なメッセージ

日本のサッカー哲学に風穴を開けた!多彩なエゴイストを描く「ブルーロック」の強烈なメッセージ

「このままでは日本サッカーは未来永劫――W杯優勝は不可能かと」
「『自分たちのサッカーをすれば勝てる』?
『日本のパスサッカーは世界に通用する』?
そんなこと言ってっからいつまで経ってもベスト16止まりなんだよ」
(漫画「ブルーロック」第1話より抜粋)

こんな刺激的なセリフが次々と飛びだす、漫画「ブルーロック」の第1話が世に放たれたのは、2018年8月1日。同年7月2日に、サッカーロシアW杯で日本代表がベスト16で敗退した、わずか4週間後だった。

2002年の日韓W杯で日本が初めて決勝リーグへの進出を果たしてから、四半世紀。23名の日本代表のうち、15名の海外クラブチーム所属メンバーを招集して臨んだ大会だったが、今回もベスト8の壁は破れなかった。それも、先制点を奪ったあと、2-0でリードし、夢の実現まであと少しというところでの敗北。後半アディショナルタイムでの失点、「ロストフの14秒」のあと放心し、絶望したサッカーファンは少なくなかったはずだ。

どうすれば勝てるのか?

そのアンサーを「革命的なストライカー育成」と定め、18歳以下の優秀なストライカー300名を最後の1人になるまで戦わせるサバイバルフィールド「青い監獄」に送り込んだのが、「ブルーロック」だった。

■「チーム力」を武器にしてきた日本サッカーを根本からぶっ壊す「ブルーロック」

「本田?香川?んーー?」
「そいつらってW杯優勝してなくない?じゃあカスでしょ」

日本サッカー界だけでなく、ファンにもケンカを売るようなセリフにヒヤヒヤしつつも、日本代表チームの課題を明確な言葉にした爽快感。

エリック・カントナ、ペレら名選手の言葉を引用し、「革命的なストライカーたちは皆、稀代の“エゴイスト”だ」と言い切る、極論ではあるが説得力のある主張。

「チーム力」を武器にしてきた日本サッカーを根本からぶっ壊す、「エゴイストたれ!」という、強烈なメッセージ。

「青い監獄」の全権を握る指導者、絵心甚八が説く、型破りな育成論のなかには、「みんな仲良く」という理想論を掲げながらも格差や歪みを放置し、表面的な「平和」を維持しようとする日本社会と、なかよしこよしの輪からはみ出ることを恐れ、思考停止に陥っている人々への強烈な否定、さらに新しい日本、新しい日本人の誕生を待ちわびる希望の叫びが内包されている。

だから、理屈なく魅了されてしまう。300人の未成年を日常から切り離し、負けたら未来永劫サッカー界から追放されるというムチャクチャな実験なんて「あり得ない」と思うのに、その末にとんでもないエースストライカーが誕生するのではという期待を抱いてしまう。太陽の明るさに向かって進むというよりも、ブラックホールの引力に引きずり込まれるような感覚で、気づいたら虜になっているという蠱惑的な魅力が「ブルーロック」には確実にあるのだ。


■多種多様な個性を持ったエゴイストたち

そんな物語の構造的な魅力の発露となっているのが、多種多様な個性を持ったキャラクターたちだ。

主人公の潔世一は、全国出場を懸けた県大会で、GKと1対1で対峙する絶好の機会を迎えたのにもかかわらず、「サッカーは11人でやるスポーツだ」と考えて仲間へのパスを選択し、勝利を逃した高校2年生の少年。「もし、あの場面でパスじゃなくシュートを撃っていたら」と忸怩たる思いを抱え、己のサッカー人生を変えるために「青い監獄」に足を踏み入れる。

心の底に閉じこめられていた己の強烈なエゴを自覚し、成長していく主人公の潔世一(「ブルーロック(1)」)
心の底に閉じこめられていた己の強烈なエゴを自覚し、成長していく主人公の潔世一(「ブルーロック(1)」) / 原作/金城宗幸 著/ノ村優介 発売中 価格:627円 講談社刊

自分の得意なところを聞かれても即答できない、技術も身体能力も平凡な選手である潔だったが、「青い監獄」の非常識なルールや暴論に翻弄されながらも、こんなところで終わりたくないという一心で足搔き、心の底に閉じこめられていた己の強烈なエゴを自覚し、成長を遂げていく。「青い監獄」入寮当時のランクは300人中299位で、最下位クラスから実力で登っていく“下剋上”キャラクターというところも、応援したくなる要素だ。

潔を脱落のピンチから救った蜂楽廻(「ブルーロック(2)」)
潔を脱落のピンチから救った蜂楽廻(「ブルーロック(2)」) / 原作/金城宗幸 著/ノ村優介 発売中 価格:594円 講談社刊

ほかにも、潔と同じチームで、彼を脱落のピンチから救った蜂楽廻。天才的なボールコントロールセンスを持つが、面倒くさがりの凪誠士郎。「オシャ」に異常な拘りを持つ蟻生十兵衛。自らを「王様」と称する馬狼照英。潔に似た能力を持ち、潔を潰そうとする二子一揮。漢気と熱血にあふれた國神錬介。トップアスリートになる夢を親から押しつけられて育った氷織羊。50メートル走5秒77という驚異的なスピードを持つ千切豹馬。財閥御曹司の退屈な生活から抜けだすために「青い監獄」に参加した御影玲王。「青い監獄」のトップランカーである糸師凛。“新世代世界11傑(ワールドベストイレブン)”の一人だが、口汚く乱暴なミヒャエル・カイザーなど、漫画らしいキャラクターからすぐ隣にいそうなヤツまで様々。

【写真を見る】天才的なボールコントロールセンスを持つが面倒くさがりの凪誠士郎(「ブルーロック(5)」)
【写真を見る】天才的なボールコントロールセンスを持つが面倒くさがりの凪誠士郎(「ブルーロック(5)」) / 原作/金城宗幸 著/ノ村優介 発売中 価格:594円 講談社刊

■“エゴ=人格”で閉塞感とモヤモヤを吹き飛ばす

ポジションによってキャラクターの性格をつけていくスポーツ漫画は多いが、本作では全員がFW。その個性を、生育歴や経験によって形成された“エゴ=人格”と、その人格だからこそ獲得できた“能力”で表現しており、キャラクターを知れば知るほどおもしろさを感じるところも、ブラックホール的な魅力の一つだろう。

特に、「青い監獄」に参加する前のエピソードを書いた「小説 ブルーロック 戦いの前、僕らは。」を読むと、よりキャラクターが理解できるのでおすすめ。古い価値観に縛られ停滞している社会、過去の実績に囚われ新しいやり方を取り入れられない体質、形骸化したルールを押しつけて若者の声に耳を塞ぐ大人、勝手に限界を決めて努力を放棄する己の弱さ…。いま、心に抱いている閉塞感とモヤモヤを吹き飛ばす力を手に入れたいのなら、読んで損はない。

「小説 ブルーロック 戦いの前、僕らは。 潔・凪・蜂楽」
「小説 ブルーロック 戦いの前、僕らは。 潔・凪・蜂楽」 / 著/もえぎ桃 原作/金城宗幸 その他:ノ村優介 イラスト:三宮宏太 発売中 価格:770円 講談社刊

6月11日から北中米W杯の本大会がアメリカ・カナダ・メキシコで開催中だ。日本代表メンバーに名を連ねるのが上田綺世。日本人選手史上初のエールディヴィジ得点王となり(オランダプロリーグの得点王)、海外のサッカーサイト「MAD FOOTBALL」の2025ベストCFでは、アルゼンチン代表のラウタロ・マルティネスを抑えて5番目に選出された俊英だ。世界で活躍する日本人選手の多くがMFやDFというなか、FWとして名を上げている上田選手の活躍には大いに期待したいところ。
映画『ブルーロック』は8月7日(金)公開
映画『ブルーロック』は8月7日(金)公開 / [c]金城宗幸・ノ村優介/講談社 [c]CK WORKS


前回カタールW杯が開催された2022年秋にはテレビアニメ「ブルーロック」が放送され、日本代表の活躍と共に本作も話題に。そして、2026年にはついに実写映画化。主人公、潔世一を演じる高橋文哉を筆頭に若きストライカー役で旬の若手俳優たちが集結し、絵心甚八役には窪田正孝がキャスティングされている。さらなる広がりを見せる「ブルーロック」から目が離せない。

文/ナカムラミナコ
配信元: MOVIE WALKER PRESS

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