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イルカのメスは強引な交尾をする「ヤバいオス」を避けるために、犯人の声を聞き分ける

イルカのメスは強引な交尾をする「ヤバいオス」を避けるために、犯人の声を聞き分ける

イルカのメスは強引な交尾をする「ヤバいオス」を避けるために、犯人の声を聞き分ける
イルカのメスは強引な交尾をする「ヤバいオス」を避けるために、犯人の声を聞き分ける / Credit:Canva

イギリスのブリストル大学(UoB)などの国際研究チームによる研究によって、メスのイルカはオス一頭一頭の鳴き声を聞き分け、強引な交尾行動で知られるオスを避ける行動をとっていることが明らかになりました。

しかも、その反応は「自分が襲われた経験」だけではなく、そのオスがメス全体に対してどう振る舞ってきたかという「評判」のような仕組みを利用している可能性も示されました。

論文の筆頭著者は「もっとも厳しい社会環境のなかでも、メスが戦略的にふるまっている証拠が得られた」と述べています。

研究内容の詳細は2026年6月1日に『PNAS』にて発表されました。

目次

  • オスの強制交尾にメスはなすがままなのか?
  • 「見えないオスの声」を、メスに聞かせてみる
  • 「個人的な経験」ではなく「全体の評判」だった

オスの強制交尾にメスはなすがままなのか?

オスの強制交尾にメスはなすがままなのか?
オスの強制交尾にメスはなすがままなのか? / Credit:Canva

これまでの研究でイルカたちは、それぞれが自分専用のオリジナルメロディを持っていることが知られています。

専門的にはこれを「シグネチャーホイッスル(個体識別の鳴き声)」と呼びます。

このメロディの面白いところは、子供のころに自分で作るという点です。

生まれて間もないころに、自分だけのフレーズを試行錯誤しながら組み立て、いったん完成すると、そのメロディは生涯ほとんど変わりません。

一頭ごとに違うので、聞いている仲間からすれば、まさに「名前」として機能するわけです。

仲間のイルカたちは、その鳴き声を聞き分けて、「ああ、あの個体だな」と認識します。

さらに、他のイルカのメロディを真似ることで、その個体を「呼ぶ」こともできることがわかっています。

声で名乗り、声で呼び合う社会。

それがイルカの世界です。

しかも、このシャーク湾の個体群では、この鳴き声は条件のよい場所で最大2.2キロメートル先まで届くといいます。

広い海の中で、姿が見えなくても、声だけで「誰がそこにいるか」が伝わってしまうのです。

またこの「声で互いを認識し合う社会」においてオスたちは「同盟」を組んでいることが知られています。

目的はメスに対する交尾行動です。

繁殖期になると、オスたちは仲間と協力して、特定のメスを取り囲み、自分たちのそばに留めようとします。

この行動はときに数時間、ときに数週間も続くことがあります。

日本語にすれば「強引な囲い込み」とでも言うのが近いかもしれません。

そして、この囲い込みは、しばしば暴力をともないます。

メスが逃げようとすると、オスたちは噛みついたり、体を打ちつけたり、追いかけ回したりします。

さらに「ポップ」と呼ばれる威嚇音を出して、メスに「離れるな」と圧力をかけることもあります。

メスにとっては、怪我の危険があるだけでなく、餌を探す貴重な時間まで奪われてしまうわけです。

これが、シャーク湾の海の中で繰り広げられている現実でした。

そして研究者たちは、長年この光景を見ながら、ある問いを抱えていたのです。

——メスのほうは、何らかの対策をとっているのではないのか?

「見えないオスの声」を、メスに聞かせてみる

この問いに答えるため、研究チームが選んだのは、音を聞かせて反応を見るという、シンプルでありながら巧妙な実験でした。

まず、研究者たちは過去の録音から、11頭のオスイルカの「自分専用メロディ」を24種類用意します。

これが「声の材料」です。

次に、対象となる17頭のメスについて、どのオスとどのくらい付き合いがあるか、どのオスがどれくらい強引な振る舞いをしてきたかといった長年にわたり蓄積されたデータを用意しました。

そして実験当日、研究者たちはボートでメスを見つけると、ボートから水中に降ろした小型スピーカーからオスの鳴き声を海中に流しました。

反応を見せたメスたちは、平均してわずか1.8秒で動き始めました。

声を聞いてから、ほぼ即座に「どうするか」を決めていたのです。

そして、その「決め方」にこそ、研究者たちが探し求めていた答えがありました。

妊娠できる時期のメスは、よく強引な囲い込み(強制的な交配行動)をするオスの声を聞くと、はっきりと長い距離を逃げたのです。

平均で33メートル以上、長いときには100メートルを超えて遠ざかったケースもありました。

一方、子育て中だったり高齢だったりして「いま囲い込みの標的になりにくい」メスたちは、同じ声を聞いてもほとんど反応しませんでした。

平均してわずか13メートル程度しか動かず、多くの場合はそのまま泳ぎ続けたのです。

イルカのメスたちは囲い込みの常習犯として知られるオスに対して「いま自分が標的になりうるかどうか」を考慮し、必要なときだけ逃げていたのです。

研究チームのドローン映像には、ある印象的なシーンが残っています。

DCHという名がつけられたメスが、別のメスと一緒に泳いでいたところ、COOというオスの鳴き声が流れました。

すると二頭はほぼ同時に、180度向きを変え、音のした方向を振り返ったのです。

やがて隣のメスは元の方向に戻りましたが、DCHはしばらく音源の方を向き続け、30秒後には元の進行方向へ戻りました。

声を聞いて、即座に身体の向きを変え、音源の方向を確かめるような一連の動きが、空からの映像にくっきりと記録されていたのです。

配信元: ナゾロジー

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