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清水崇と道尾秀介がホラー映画に求めるものとは?第4回日本ホラー映画大賞記念インタビュー

清水崇と道尾秀介がホラー映画に求めるものとは?第4回日本ホラー映画大賞記念インタビュー

令和の時代の新たなホラー映画作家を発掘・育成する目的で2021年にスタートした「日本ホラー映画大賞」。今年5月には第4回の開催を迎え、大賞には『chorus(コーラス)』(山城研二監督)が輝いた。本賞のユニークな点は、大賞受賞監督に商業デビューが確約されるということだろう。これまで、『みなに幸あれ』(24)で下津優太、『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』(25)で近藤亮太がデビューし、下津監督は『NEW GROUP』(公開中)、近藤監督は『5秒で完全犯罪を生成する方法』(9月11日公開)と、今年早くも2作目となる新作が公開。大賞に至らずとも、第1回の入選監督である武田真悟監督が『祝山』(公開中)で劇場長編デビューを果たすなど、順調に第一線で活躍する作り手を輩出しており、本賞がホラーシーンの活性化に大きく寄与していると言っても過言ではない。
2026年5月30日に開催された第4回日本ホラー映画大賞授賞式の模様
2026年5月30日に開催された第4回日本ホラー映画大賞授賞式の模様 / [c]KADOKAWA/KeyHolder


そんな、回を重ねるごとに存在感が増しているフィルムコンペティションではあるが、第4回授賞式の選考委員による講評では「全体的なクオリティは非常に高かったが、少し物足りなかった」という厳しい言葉も飛び出す結果となった。そこでPRESS HORRORでは、第1回より選考委員長を務めている清水崇監督と、第4回から新たに選考委員として参加した直木賞作家の道尾秀介を直撃。今夏は『口に関するアンケート』(7月3日公開)、『だぁれかさんとアソぼ?』(7月24日公開)、そして『八つ墓村』(9月18日公開)が立て続けに公開され、日本ホラー映画界におけるフロントランナーとして精力的に作品を作り続ける清水監督と、ミステリ小説でベストセラーを連発しつつ、読む順番によって物語が変わる体験型の小説「N」や、二次元コードを読み取って再生する音声と小説が連動する「きこえる」など、既存の小説の枠組みを超えた意欲的な作品にも挑んでいる道尾氏。2人は、今回の日本ホラー映画大賞になにを思ったのか?そしてどんなことを求めているのか?授賞式終了直後に、話を訊いた。
【写真を見る】第4回の大賞を受賞した山城研二監督の『chorus(コーラス)』
【写真を見る】第4回の大賞を受賞した山城研二監督の『chorus(コーラス)』 / 第4回日本ホラー映画大賞 [c]KADOKAWA/KeyHolder


■「響いてくるガツンとした強さがほしい」(清水)

――選考会と授賞式を終えられての率直なご感想をお聞かせいただけますか?

清水崇(以下、清水)「第2回でゆりやんレトリィバァさんが選考委員に加わった時もそうだったんですけど、新しい方が参加されて見る目が増えると、選考の幅が広がる気がするんです。今回、道尾さんが入られたことで新たな視点が入ってきているなって、すごく新鮮に感じましたね。入選こそしませんでしたが、道尾さんが藤岡晋介監督の『爪殺 -TSUME KILL-』を強く推されていたのは、その最たる例でしょうか。彼は第1回で入選した『私にふれたもの』(武田真悟監督と共同監督)から応募してくれている監督で、以降の作品も実は観ているのですが、僕の中では『私にふれたもの』のほうがいいなって――そういった前の作品と比べるような見方をしていいかはわからないんですが、だから『爪殺 -TSUME KILL-』はそんなに推さなかった。でも道尾さんがちゃんと推してくれたのは、いいことだなと思ったんです。僕が応募作に毎回求めているのは、『私が怖いと思うのはこれだ!』っていうガツンとした強さ。『みなに幸あれ』の下津監督も『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』の近藤監督もそうでしたが、響いてくるんです。そのガツンが欲しいんですよね。それでいうと、第4回は、僕はちょっと弱かった気がします」

道尾秀介(以下、道尾)「僕はもともと、日本ホラー映画大賞は客席で観ていた側だったんです。SNSきっかけでこんな賞があるんだって知って、第1回から普通にチケットを買って毎回観に来ていました。授賞式のステージでもお話しさせていただいたんですけど、僕は小説の新人賞の選考委員もいくつかやっていまして、それと比べると、アベレージが非常に高い。小説家を目指す人たちも、もっと頑張らないといけないんじゃないの?って思わせられるくらい候補作のクオリティが高かったですね。何せお金を払って観ていたくらいなので、この選考に残る作品がどのくらいのレベルかは分かっていたつもりだったのですが、選考でさらに多くの候補作を観てみると、その半分ぐらいが本当にお金払ってでも観たいぐらいのものだったので、もう、すごいなと」

清水「応募する側からしたら、直木賞作家が選考委員に加わって作品を観てくれるということで、光栄だしうれしい反面、絶対ハードルも上がったと思うんですよね」

道尾「選考にあたって、これはホラーではないんじゃないか?みたいなものが候補作になっているのにびっくりしました。これまで最終的に各賞を受賞した作品は、しっかり“ホラー”だったじゃないですか。だから、候補の段階ではホラーなのか否かが曖昧なものまで結構入っているんだっていうのは驚きでしたね」

清水「例えば、金内(健樹)監督の作品とか?」

道尾「ええ、彼の『誰かと誰かと』もそうですし、入選しなかったけど『DUELLE』(杉浦仁輝監督)とか。あ、こういうのも候補作に選ばれるんだっていうのはいくつかありました」
第4回でPRESS HORROR賞を受賞した金内健樹作『誰かと誰かと』
第4回でPRESS HORROR賞を受賞した金内健樹作『誰かと誰かと』 / 第4回日本ホラー映画大賞 [c]KADOKAWA/KeyHolder


■「観終わった後に『ああ、この世界がそうじゃなくて良かった』とほっとできるものが僕の中ではホラー」(道尾)

――「どこまでがホラーか」の範疇とか「ホラーかホラーじゃないか」の基準って、お2人はそれぞれどう考えているんでしょう?

『羊たちの沈黙』(91)でアンソニー・ホプキンスが演じたハンニバル・レクター博士
『羊たちの沈黙』(91)でアンソニー・ホプキンスが演じたハンニバル・レクター博士 / [c]Everett Collection/AFLO

清水「人によって違うし、世の中の流れで変わってもいいのかなって気がしています。例えば『羊たちの沈黙』はホラーじゃないと思うんですが、あそこまでいったらホラーだよって言う人もいる。ジェイソンとかフレディくらいハンニバル・レクターのキャラが立っていて最早かっこいい怪人扱いになっちゃっているから、そういう意味では確かにホラー界隈に入っているよなとも思うんですけど。ただ、あの映画は別にモンスターやお化けや超常現象を扱っているわけではないんですよね。じゃあ人知を超えたものを描かないとホラーじゃないかって言ったら、そんな定義も別にないし。

一昔前まで、ホラーってオカルト映画、怪奇映画、怪談映画とか呼ばれていて、野村芳太郎監督の『八つ墓村』なんかはいま観てみると完全にホラーなんですが、当時はホラーって言葉もなかったし、原作の立ち位置から、ミステリー映画とされていました。でもオカルトや怪奇映画なんて子どもだましのB級C級のものだから大人は大手を振って観に行けない…というような世間体もあったと思います。だけど、野村監督は大作であれをやっちゃったという。そんな具合に、時代によっても変わる気もします。そう考えるとホラーというのは、なにか映画を観たい、小説を読みたい、いまどんな気分でどんなものに触れたいかっていう、消費者や読者、観客が選びやすくするために、宣伝・制作チームが作った言葉、ジャンルでしかない気はします。ちなみに小説ってどうですか?新作を売る時に、編集担当と話すと思うんですけど」

大ヒットを記録した野村芳太郎監督の『八つ墓村』(77)
大ヒットを記録した野村芳太郎監督の『八つ墓村』(77) / [c]1977/2026松竹株式会社『八つ墓村 4Kデジタル修復版 4K ULTRA HD Blu-ray 』2026年9月16日(水)発売 価格:8,800円(税込) 発売・販売元:松竹

道尾「帯に『ホラー』と謳うと売れにくいっていうのはよく言われるんですよね。いまホラーブームではありますけど、それはモキュメンタリーとかそういうものが流行っているだけで。作りは別として、売り出し方としては、それ(怖いもの)が苦手な人にも手に取ってもらえることが必要とされている。帯や表紙の作り方は重要なので、なかなか帯にホラーだとかっていうのは今書けなくなっていますね」

清水「映画界も同じですね」

道尾「あっ、そうですか」

清水「完全にホラー映画なのにポップな色のビジュアルにして、あえてホラーって言わない宣伝をしたり。それでホラーの苦手な人が観に来たら、『むちゃくちゃ怖いじゃん!なんだよ!』ってなる。でも動員にはつながる。それがヒットしたら途端に他の会社でも――僕も言われますけど、同じような色を使って『ミステリーという言葉で誘ってもいいですか』って(苦笑)。ヒット作の前例に寄せた保険をかけたがるんですよね。多分それは昔から変わらないと思う。売り出し方だけでもだいぶ世間の印象って変わるのはわかるし」
自作『口に関するアンケート』(7月3日公開)、『だぁれかさんとアソぼ?』(7月24日公開)が待機中の清水崇監督
自作『口に関するアンケート』(7月3日公開)、『だぁれかさんとアソぼ?』(7月24日公開)が待機中の清水崇監督 / 撮影/黒羽政士


道尾「物の売り方としてはそういうものなんでしょうね。経営コンサルタントの人がよく使う言葉なんですけど、『その商品の特徴をいくら説明してもお客様は買ってくれない。商品を体験した時、ユーザーにどんな変化が起きるかをアピールしないとダメだ』っていうんですね。僕は登山をするんですが、ついこの間、山に登っていたら至近距離で親子熊と遭遇したんです。小熊が飛び出してきて、その後横の茂みが揺れて、もう明らかに“横幅のあるもの”が出てこようとして…全速力で逃げたんですね。ものすごい怖かったんですよ。心情としてはいわゆるホラーですよね。ものすごい怖かったんですけど、でも、なんとか逃げられた時に、『ホラーっていうジャンルは安心しながらこれを体験できるんだから、そりゃ楽しいよな』と思ったわけです。だから、わざとコメディタッチにしたものとかB級ホラーも好きなんですけど、やっぱり正統派の上質なホラーというか、観終わった後に『ああ、この世界がそうじゃなくて良かった』とほっとできるものが僕の中ではホラーに近いのかなと思いますね」

清水「身を持って体感されたんですね」

■「僕のホラーは“当たり前のものを崩す”っていうところから入る」(清水)

道尾「ちなみにホラー映画を作る時って、ホラーを作り続けている人のほうがいいものを作りがちなんでしょうか?それとも急に他ジャンルの人がポーンと大当たりを作ったりということが」

清水「ありますね。聞いてみたら、本人にそんなにホラー志向はないんだけどもっていう」

道尾「そうなんですね。聞いた話なんですが、UFOって世界中で目撃されているじゃないですか。どんな人による目撃談が多いのかを調べたら、普段空を見ない人が多いらしいんです。研究者だとか、いつも下を向いて本ばかり読んでいるような。で、夜たまに外に出て空を見上げると、すごく不思議なものを見る。要するに、空を見慣れてないからなにかを見てUFOだと思い込んでしまう。慣れてないことをやると、やり慣れてる人に比べてとんでもなく新しいものを発見するっていうことがあるんですよね。なので、他のものを作ってるつもりが、実はとんでもないホラーが出来上がってしまうということはあるのかなって」

清水「映画ではないですが、鈴木光司さんの『リング』はそうみたいなんですよね。鈴木さんは科学的な解釈ですべて成立するはずだっていうお考えの持ち主で。以前テレビ番組で共演させていただいた時に、心霊系の番組なのにあまりにも鈴木さんが『幽霊やお化けなんて、そんなもん』っていうスタンスだったので、稲川淳二さんや僕が閉口してしまったことがあったんですけど…(笑)。そういう人だからこそ『リング』が生まれたんだなと。一言も、幽霊とかお化けとか死んだ魂がなんて書いていないけど、読んでいる人がいつの間にかそっちに誘われてしまうもので怖がらせてやろうじゃないか、って作られた。たまたま目の前にVHSが置いてあったから、じゃあ死んだ人たちはVHSを見たことにしようとか。最初はそれくらいで始めたらしいんです。だから往々にしてあるんですよね。作家としてホラーまっしぐらで書こうとしている人を超えてしまう瞬間みたいなのが。それは多分映画でも同じだと思うんです」
有名な映画化のほか、スペシャルドラマ、連続TVドラマもされた鈴木光司「リング」(角川ホラー文庫)
有名な映画化のほか、スペシャルドラマ、連続TVドラマもされた鈴木光司「リング」(角川ホラー文庫) / 鈴木光司著/定価:924円(税込)/KADOKAWA刊


道尾「鈴木光司さんの『リング』は、例えば男女のまばたきの回数の違いとか、科学的な視点で、『これは女性の目だ』っていうことになるじゃないですか。科学はやっぱり我々にとって慣れているものだから、いつのまにか一緒くたにしてホラーを飲み込んじゃうんですよね。それによって超常現象を信じちゃう。あれはすごくいいシステムだと思いました」

(編集部注:小説『リング』では、主人公の浅川と同級生の高山が奇怪なビデオテープの映像を仔細に解析する中で、時折現れる一瞬の黒い幕が人間の「まばたき」ではないかと気付き、男女のまばたきの平均回数の違いから、映像を録画したのが“女性”ではないかと推測する場面が登場する)

清水「ところで道尾さんが直木賞を受賞された『月と蟹』って少年2人の話じゃないですか」

道尾「はい」

清水「あれは、少年2人にして、同級生の女の子を絡ませているのにはなにか基盤があるんですか?ホラー的な思考は別にないんですよね?」

道尾「キャラクター設定なんかに関しては、ホラー的な思考はないですね。でもホラーは好きなので。心理描写とか、読んだ時に怖いって言われることはよくあるんですけど、それは僕の趣味が入っているとは思います。これは最近知ったんですけど、スカイツリーの根元って三角形なんですよね。三角がだんだん丸くなってくるんです。上だけ見ると丸い建物に見えるんですけど、根元は三角で。やっぱり三角形って一番安定するんですよね。それで少年、少年、少女っていう、あの三角関係が物語を一番安定させてくれると、そこは考えてやりましたね」

清水「なるほど。まさかスカイツリーの根元の話をされるとは(笑)」

道尾「実際に見に行ったら本当に三角でした(笑)」
今回より日本ホラー映画大賞の選考委員に就任した道尾秀介
今回より日本ホラー映画大賞の選考委員に就任した道尾秀介 / 撮影/黒羽政士


清水「今のお話を聞いていても、道尾さんは発想や考え方が独特ですね。三角か…確かにバンドとかでも女性1人で男性2人のほうが安定するというか」

道尾「僕は音楽もやるんですが、例えば不快な音、不協和音みたいなものを作るには、やっぱり和音を知らないとできないんですよね。和音が一番安定するんだってことを知っていれば、その崩し方もわかるので、不協和音みたいなものを入れることもできますし」

清水「すごい理知的ですね。それでいて、あんな心情に訴える文章を書けてしまうとは!」

道尾「安定する三角に対して、ホラーだとむしろそのバランスを崩すことで気持ち悪さを見せるみたいなことができそうですよね。ホラー映画の作り方ってどうなんでしょう?最初から何か形があって、それを崩して気持ち悪くしようって思うのか。例えば、今日のステージにも映っていましたけど(第4回日本ホラー映画大賞のポスタービジュアルを指して)肖像画があって、顔に大きな穴が開いてるって、怖いですよね。普通は顔に穴が開いてないから怖いわけですもんね。そういう順序で考えるものなんですか?それとも、最初から怖いものが浮かぶのか」
第4回日本ホラー映画大賞のキービジュアル
第4回日本ホラー映画大賞のキービジュアル / 冨安由真(とみやす ゆま)『Woman In Room』


清水「人にもよるとは思うんですけど、僕の場合は“当たり前のものを崩す”っていうところから入ります。遊び感覚とかで、『ありがとう』っていう本来ポジティブにしか思えない言葉が怖くなる瞬間って何だろう?って発想をしたり、子どもの姿がどうして怖くなるのか?って考えたり、アイドルの歌詞なんかでも考えますけど。例えば加山雄三さんの歌で『幸せだなァ…僕は死ぬまで君を離さないぞ』ってありますが、『死ぬまで君を離さない』って、よく考えたら怖いですよね」

道尾「なるほど」

清水「僕はそんな、いたずらなひねくれた考え方が多いのですが、監督や脚本家によって違うとは思いますね。第3回で大賞を獲った片桐絵梨子監督は、発想がそもそも風変わりで面白い。他の人がしないような昔のおとぎ話や童謡や妖怪から発想している。一方で、第1回大賞の下津監督なんかは、パターンを整理して図式的に考えている。僕はできない発想ですね。そんなに整理できないんで」

道尾「最近では僕もいろいろと、世の中の『よく考えたらおかしいこと』をミステリーの物語に入れられないだろうかと日々考えるんですけど、ちょっとしたズレだとか、さっき清水さんがおっしゃった、『幸せだなァ』の怖さみたいな、ああいうものの発見って、ネットの集合知にちょっと勝ち目がないなって思う時があるんですよ。ネットだと“在野の天才”みたいな人がいて、たまにすごく面白いのが流れてくるじゃないですか。たった一言だけでむちゃくちゃに面白いとか。ああいうのに本当に敵わないなって」

清水「そういうネットとかで上げている人に、脚本を作るときに来てもらってどういう発想をするだろうか?って考えることもあります。ただ思いつきでパッとやっているだけで、実際にはモノにならないタイプなのかとか。漫画とかでも、同人誌とかを描かれていて、抜群に絵は上手いんだけれども、オリジナルがないとダメな人っているじゃないですか。パロディしかできないとか。だから、ゼロから小説だったり映画だったりを作る人とはだいぶ違うんだろうなと。ただ、もらっちゃいたくなるネタはいくらでもあるんですが」

道尾「確かに。そうですね」

■「ホラー映画大賞で、俳優さんももっと注目されるといい」(道尾)

――第1回から第3回までの日本ホラー映画大賞の入選作品は現在、各配信サービスで観られるようになっています。清水監督も道尾先生もすべてご覧になられているわけですが、過去3回の中で個人的にオススメの作品などあったりしますか?

道尾「僕は第2回の『彼は僕だったかもしれない』(ヤマモトケンジ監督)ですね。女子高生が出てきて、集団自殺をするために待ち合わせて廃墟に行って…という。あれ、すっごい好きでした」

清水「あれって俳優賞を獲りましたよね?」

――「ホラーちゃんねる賞」として、二色冬香さんが主演女優賞を受賞されました。日本ホラー映画大賞で過去唯一の俳優賞です。
(編集部注:『彼は僕だったかもしれない』は残念ながら現在配信されていません)
『彼は僕だったかもしれない』(ヤマモトケンジ監督)で二色冬香がホラーちゃんねる賞を受賞した第2回日本ホラー映画大賞の様子
『彼は僕だったかもしれない』(ヤマモトケンジ監督)で二色冬香がホラーちゃんねる賞を受賞した第2回日本ホラー映画大賞の様子 / 撮影:久保田和馬


道尾「あの女子高生役の女優さんがとても良かった。僕はリアル脱出ゲームを手掛けているSCRAPって会社と一緒に『DETECTIVE X』という犯罪捜査ゲームを作っていまして、ゲームの中で容疑者の写真とかムービーが入ってくるんですけど、実はムービーを作る際に、あの女優さんにオファーしましたもん。事務所に連絡して」

清水「えーっ!本当ですか?」

道尾「結局うまく条件が合わなくて実現はしなかったんですけど。あの作品は彼女の演技力も含めて未だに印象に残ってますね」

清水「あの子が成長して、同じ監督の作品に出ていましたね。第3回で入選した『東京から西へ100マイル』(ヤマモトケンジ監督)。ゾンビもので、ガソリンスタンドの中にいる女子高生役で」

道尾「賞をもらうのも監督だし、ノミネートされるのも監督の名前ですけど、俳優さんももっと注目されるといいですよね」

清水「でも嬉しいですね。ホラー映画大賞をきっかけに、作家先生がオファーしているなんて」

道尾「将来的に有名になってくれたら、『いや、僕はこの子のデビュー作を観てるから』って言えますよね(笑)」

――清水監督は過去を振り返って、これ!みたいな作品は?

清水「第1回の『父さん』(平岡亜紀監督)って作品が好きなんですよね。監督は女優さんでもあるんですが、実は僕、女優である彼女ともともと知り合いだったんです。顔と名前が一致していなくて、賞を獲って登壇してトロフィーか賞状を渡す時に『え?知ってるよね?』って。あとはやっぱり、第3回大賞の『夏の午後、おるすばんをしているの』(片桐絵梨子監督)はすごいなぁと思いますね」
第1回で審査員特別賞を受賞した平岡亜紀監督の『父さん』
第1回で審査員特別賞を受賞した平岡亜紀監督の『父さん』 / [c]KADOKAWA


――ありがとうございます。今回残念ながら入賞が叶わなかった監督、入賞したけれど大賞に届かなかった監督、次回以降応募してみようと考えている監督などさまざまな人たちがいるかと思いますが、そんな方々に向けて、最後に、今後の日本ホラー映画大賞で求める才能や作品について、想いをお聞かせいただけますか?

道尾「僕は自分で作品を作る時もそうなんですけど、例えば10人が全員50点をつけて平均50点になる作品よりも、5人が0点だけど残り5人が100点をつけて平均50点になるような作品が好きで。そういう作風っていうのは、ホラーっていうジャンルにとても合っているように思うので、そういったものがたくさん出てきてほしいですね」

清水「個人的に今の道尾さんの言葉がすごく刺さります。少しでも自作の平均点を上げることで仕事をしてるので(苦笑)。そんな僕があれこれ言うのって、なんかどうやっても八方塞がりになりそうで怖いんですけど…。でも、やっぱり新しいのが見たいですね。いまって、どんどん精神的な怖さのクオリティは上がっている気がするんです。『今何を見せられたんだろう?』っていう体験をさせてくれるような。それはそれで進みつつも、直接的な怖さも追求してほしい。“古き良き”ではない、新しいスプラッターの方向性とか突破口を広げてくれる人が出てこないかなって。僕はそっち系じゃないんですが、そういう人もやっぱり生まれてほしいですね」


取材・文/PRESS HORROR編集部
配信元: MOVIE WALKER PRESS

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