6月21日(日)は父の日だが、そんな“父”にまつわるサービスとして話題を集めている「レンタルお父さん」。特殊なビジネスの立ち上げ人である株式会社ファミリーロマンス代表取締役・石井裕一氏は、自身もレンタルお父さんとして数多くの現場を経験している。そんな石井氏にサービスの現場の実情や裏側を語っていただいた。
「第三者に対して、絶対バレてはいけない」
――石井さんの会社は2004年に開業されましたが、始めたきっかけは?
石井裕一(以下、同) この事業を立ち上げたのは、もともとは『mixi』で繋がったシングルマザーで困っている方に、私個人としてレンタルお父さんの活動を始めたのがきっかけでした。
サービスを立ち上げたものの最初の頃は、やっぱり「やばい人じゃないか?」と思われることも多くてあまり受け入れられなかったのですが、その後に自社サイトを立ち上げて、ビジネスとして運営できるようになりました。
近年メディアに取り上げてもらうことも多いので、ありがたいことに依頼件数は年々増えているんですよ。
自分1人から始めたサービスですが、弊社では「レンタルフレンド」「レンタル恋人」「レンタルお母さん」といった派生サービスもあり、現在は全国各地に総勢5000人以上のスタッフが在籍しています。
――5000人とはすごいスタッフ数ですね。起業のきっかけとなった「レンタルお父さん」とはどのようなサービスなのでしょうか?
たとえば結婚前の両家の挨拶や結婚式への参加、正月の親族の集まりなどでご依頼されるケースは多いです。
ほかにも、若い女性の依頼人で、「お父さんはすごくイケメン」と彼氏にしゃべってしまって本物の父親がいるのにレンタルしたという方や、父親がいない女性が自分の誕生日にレンタルお父さんにバラの花束を持ってバイト先まで来てもらいたいとか、そういうライトなご依頼もありますね。
お父さんがいなかったり、実の父親を嫌っていたりする20~30代の依頼人だと、父親とのコミュニケーションを味わってみたいという理由でサービスを利用してくださるんですが、あえて毎回レンタルするスタッフを替えるという依頼人もいますね。
いろいろなタイプの父親像を味わってみたいということだと思います。
――依頼人の要望にぴったりハマるスタッフを派遣するのも簡単ではなさそうですね。
そうですね。依頼が入ると、まずは依頼人からの要望に当てはまりそうなスタッフをご案内します。
日程の調整がついたら担当スタッフに依頼内容を伝えるというのがおおまかな流れになりますが、重要なのは「誰に対してお父さんを演じるのか」ということ。
たとえば、依頼人の子どもには「本当のお父さんとして対応してほしい」と言われることがあります。もちろん依頼人ご自身の利用であればその人だけに演じればいいけれど、第三者に対しても演じる場合は“絶対にバレてはいけない”んです。
一度きりでは終わらない“父親役”の責任
――事情を知らない人たちの前でも「お父さん」を演じなくてはいけない。しっかりした事前準備が必要になりますね。
スタッフにはどういう父親像になってほしいのかをしっかり指導し、レンタルお父さんとしての“形”を作り上げていきます。
基本的な育児の考え方と一緒ですけど、子どもの考えを否定的に受け止めないとか、しっかり話を聞いたうえで叱るとか。
ある程度のメソッドに沿ったうえで、依頼人の意向を踏まえて方針を決めています。家族や父親が深く描かれている映画を観て学ぶのもとても重要ですね。
また、スタッフは1日に複数の案件を持つこともあるんです。最初の依頼では子どもの好きな料理や遊びを頭に入れ、次の依頼では兄弟の名前を覚えなくてはならず、そのまた次の依頼ではポケモンの種類と名前をたくさん覚えないといけない、といった感じ。
情報量が多く大変なので、細かい設定はいつでも見れるようにスマホに入れておくように指示しています。
――想像以上に、レンタル先の家族の人生に深く関わっていく依頼もあるというということに驚きました。
レンタルお父さんに重要なのは“リピートの可能性がある”という心づもりです。
依頼人のお父さんとして婚約者やその親族に紹介されるというパターンは多いですからね。その流れで、結婚式で父親としてスピーチを頼まれることも少なくありませんし、出産の立ち会いをしてほしいという依頼もあるんですよ。
“一度依頼を受けて父親を演じたらその後も依頼人家族との関係は続いていくものだ”、そういう覚悟や感覚を持つ必要があり、このサービスを通じてすごく考えさせられたところですね。

