バズりよりも「深いつながり」を
地域おこし協力隊の任期終了まであと9か月。その後はどうするのだろう?
「息子に聞いてみたら“まだ青森にいたい”と言っているので。その希望には応えたいなと思っています」
えむとしさんは定住し、自らが経営者となって事業を始める未来を思い描き始めた。地方で受け入れられる商品には制約があるからこそ、これまで育ててきたSNSが最大の武器になると考えている。
「まだ経営者の“け”の字も始まっていないんですけどね(笑)。
そもそも、SNSを始めたきっかけのひとつは、息子を寝かしつけた後にできることはないか?という模索でした。配送業などのバイトも考えたんですが、やはり家にいてあげたい。それに、もうちょっと未来に向けた作業や活動をしたかったという気持ちもありました。
実は最近、息子を寝かしつけた後には絵を描いていて。絵とお菓子の表現をできたらいいなと考えているんですよ」
未来を語ってくれたえむとしさんは、さらにこう続けた。
「先ほどの“バズらなくていい”というところにもつながるんですが、バズることは求めていない人にも見られることなんですよね、良くも悪くも。そして、その後は僕のお客さんにならない人のほうが多い。できれば、僕は自分自身を応援してくれる人に向けてやっていきたいし、そういう人を増やしていきたい。
瞬間的な成功ではなく、ずっと長く応援されるような。選んだことを正解にさせる背中を、息子に見せていきたいですね」
「バズり」という一時の熱狂よりも、100人の心に深く届く表現を。そう決意したシングルファザーのパティシエが深夜に描く未来には、息子への無償の愛が溢れている。彼の焼くお菓子には、単なる甘さだけではない、人生の苦みとそれを乗り越えた優しさが詰まっている。
取材・文/池谷百合子
(写真/えむとしさん提供)

