
「あぶない刑事」シリーズの鷹山敏樹役では、言わずと知れたダンディな一面を見せ、「ゴールデンカムイ」シリーズで演じた新選組の“鬼の副長”こと土方歳三役では“渋カッコいい”と多くのファンを魅了してきた舘。「あぶない刑事」では、ハーレーでの疾走や、華麗な二丁拳銃さばき、ショットガンを駆使した豪快なアクションで多くの観客を虜にした。また、「ゴールデンカムイ」での土方役でも、年齢を感じさせない切れ味鋭い殺陣と迫力のアクションが大きな話題を呼んだ。

そんな舘が本作で演じる主人公の南条弘は、『ハーレーライダー』という映画のバイクアクションで一世を風靡した大スター。70歳を超えたいまも芸術作品で数々の賞を受賞し、世間からも高い評価を得る一方で、「まだまだアクションがやりたい」という衰えを知らない俳優だ。マネージャーの川奈舞(西野七瀬)は、そんな南条に日々、振り回されている。

ある日、俳優仲間の尾崎誠(宇崎竜童)のバイク事故をきっかけに、“免許返納”を求める世論の矢面に立たされ、思わぬ逃走劇に発展することに。さらに物語は、反社会的勢力のボスとの接触や半グレ集団との乱闘など、予測不可能な展開の連続に、観客は最後まで目が離せない。

昭和から令和にかけて、数々の印象的なキャラクターを演じ、日本のカルチャーアイコンとしていまでも活躍している舘。伝説の刑事ドラマで観客を魅了してきた76歳のスターが挑戦する新しい一面に心揺さぶられること、間違いなし。

そして、舘の熱演を一層盛りたてていくのが、様々な名作に対するオマージュで、映画愛にあふれた仕掛けが随所に散りばめられている。南条に舞い込んだ政府広報CMの撮影では、「あぶない刑事」シリーズでお馴染みの名車レパードが登場。さらに、南条と尾崎が若き日に共演した『ハーレーライダー』や、川奈の子役時代の出演作「おさん」、そして南条が旅の途中で出会うトラック運転手、安田(八嶋智人)の存在など、“あの名作”を思わせる小ネタが、観客の想像力をかき立てる。

また、舘自身も「この作品は森田監督へのオマージュです」とプレミアイベントで語っていたが、“南条弘”というキャラクター自体も、舘が主演した明石知幸監督&森田芳光脚本の映画『免許がない!』(94)で演じた主人公のアナザーストーリーになっている。

年齢を重ねても第一線で活躍する海外スターといえば、ハリソン・フォード、アーノルド・シュワルツェネッガー、シルヴェスター・スタローン、マイケル・キートンを思い出す。舘と同様、意欲的に作品に取り組み続けており、80歳手前に「インディ・ジョーンズ」シリーズの最終章『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』(23)に挑んだフォードは実にあっぱれだったし、41年ぶりに「コマンドー」最新作で特殊部隊コマンドーの元隊長役のオファーが来たとされるシュワルツェネッガーには話題騒然となった。

スタローンはドラマ「タルサ・キング」でマフィア同士の激しい銃撃戦などダイナミックなアクションを魅せた。さらにキートンは、1988年公開のホラーコメディ『ビートルジュース』の約36年ぶりの新作として復活した『ビートルジュース ビートルジュース』(24)で、再びくせ者キャラクター、ビートルジュースを怪演したことも記憶に新しい。

こういった名優たちの活躍は多くの人々に勇気を与えるもの。本作で舘もまた、時代を超えて輝き続けることで、観客を心躍る世界に誘おうとしている。ダンディで渋いパブリックイメージを自ら覆す、舘ひろし史上最高の“ノンストップドライブコメディ”は、まさに映画ファンにうってつけの快作なので、ぜひ映画館でご覧いただきたい。
文/山崎伸子
