それでも性的満足度と強く結びつくのは「パートナーとのオーガズム」だった
ここで興味深いのは、ひとりのときの方がオーガズムに達しやすい女性が多かったにもかかわらず、性生活全体の満足度とより強く結びついていたのは、パートナーとのオーガズムだったことです。
研究では、パートナーとの性行為におけるオーガズム頻度は、性的満足度を有意に予測していました。
一方、ひとりでのオーガズム頻度は、最終的な分析モデルでは、性的満足度を高める明確な予測因子ではありませんでした。
これは、ひとりでのオーガズムとパートナーとのオーガズムが、女性にとって同じ意味を持っていない可能性を示しています。
ひとりでのオーガズムは、自分でコントロールしやすく、安心して得られる生理的な解放です。
一方、パートナーとのオーガズムには、快感だけでなく、親密さ、信頼、つながり、愛情表現といった意味が加わります。
実際、パートナーといるときの方が達しやすいと答えた女性たちは、感情的なつながりや親密さ、パートナーへの魅力、愛情表現が快感に関わっていると回答していました。
つまり、パートナーとのオーガズムは、単なる身体反応ではなく、関係性の中で生まれる体験でもあるのです。
ただし、ここで注意すべき点があります。
この研究は、オーガズムが性的満足度のすべてを決めると主張しているわけではありません。
実際、研究では、オーガズム頻度が女性の性的満足度のばらつきを説明した割合は11%にとどまっていました。
つまり、性生活の満足度には、オーガズム以外にも多くの要素が関わっています。
愛情、安心感、相手への信頼、痛みや不快感の少なさ、コミュニケーション、性的行為の内容、関係全体の満足度など、さまざまな要因が組み合わさっているのです。
さらに、この研究は横断調査であり、「パートナーとのオーガズムが性的満足度を高める」と因果的に断定することはできません。
性的満足度が高い人ほど、パートナーとの性行為でリラックスしやすく、好みを伝えやすく、その結果としてオーガズムにも達しやすいという逆方向の可能性もあります。
それでも、この研究が示すメッセージは明確です。
女性がパートナーとの性行為でオーガズムに達しにくいことを、「女性の体はそういうものだから」と片づけるべきではありません。
多くの場合、そこには変えられる要因があります。
刺激の方法を見直すこと、十分な時間をかけること、性的な好みを伝えやすい関係を作ること、相手に評価される不安を減らすこと、そしてオーガズムを義務にしないことです。
女性がひとりのときに達しやすい理由は、孤独だからではありません。
むしろ、自分の心と体に正直になりやすく、プレッシャーから自由でいられるからです。
その安心感や自由さを、パートナーとの関係の中にも持ち込めるなら、性の満足度は単なる「結果」ではなく、ふたりで育てていける体験になるのかもしれません。
参考文献
Why Women Orgasm More Alone Than With a Partner
https://www.psychologytoday.com/us/blog/inclusive-insight/202606/why-women-orgasm-more-alone-than-with-a-partner
元論文
Sexual Satisfaction and Orgasm Experiences During Partnered and Solo Sex Among 27,931 Users of the Flo App
https://doi.org/10.1007/s10508-025-03393-y
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

