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二宮和也「好きなものを信じること」 “シークレットシネマ”に込めた映画愛と名監督たちの教え

二宮和也「好きなものを信じること」 “シークレットシネマ”に込めた映画愛と名監督たちの教え

映画愛にあふれるアンバサダーが選んだ人生の1本を、当日までタイトルを伏せて一夜限りで上映する特別企画「シークレットシネマ」が幕を開ける。映画館へ向かう胸の高鳴りを一層膨らませてくれる企画で、アンバサダーに就任したのは、二宮和也。彼の選んだ1作が6月25日(木)に全国の映画館にて上映される。山田洋次やクリント・イーストウッドをはじめ、錚々たる監督陣との出会いを糧に、唯一無二の存在感と表現力を培ってきた二宮。映画と縁の深い彼が、作品選定のこだわりをはじめ、スクリーンで映画を観る特別さや、名監督たちの背中から受け継いだ学びを語った。

■「映画館のスクリーンで観る意義のある作品を、まじめに選びました」

「シークレットシネマ」は、映画愛にあふれるアンバサダーが選んだ人生の1本を、当日までタイトルを伏せて一夜限りで上映する特別企画
「シークレットシネマ」は、映画愛にあふれるアンバサダーが選んだ人生の1本を、当日までタイトルを伏せて一夜限りで上映する特別企画 / スタイリスト/福田春美、ヘアメイク/金山貴成

日本映画製作者連盟、外国映画輸入配給協会、モーションピクチャー・アソシエーション(MPA)、そして全国興行生活衛生同業組合連合会の4団体で構成される「映画館に行こう!実行委員会」。本企画は、「映画館に行こう!実行委員会」主導のもと、映画界の未来を担う若手メンバーが集結し、「1人でも多くの方に、改めて映画館へ足を運んでほしい」という願いを込めて立ち上げたものだ。あえて作品を知らずに劇場へ足を運ぶという“偶然の出会い”を通して、普段あまり映画館へ行く習慣がない人や、常に新しいエンタテインメントを探している人々へ向けて、劇場の大きなスクリーンと特別な空間でしか味わえない体験を提案する。当日は、アンバサダーが映画や作品にまつわる思い出や映画館の魅力を語るトークショーも開催され、その様子は全国の劇場へ生中継される。


観客は「二宮はどのような映画を選んだのか?」とワクワクしながら上映開始の時間を待ち、スクリーンを見つめることになる。アンバサダーに就任した二宮は、「恥ずかしいですね。表に出ている人間からすると、少しでも“偏差値”を高く見られたいもので。やっぱり『センス、あるね』と言われたいじゃないですか(笑)」と選んだ映画から、自身が透けて見えてくることに照れ笑い。

そんななか、作品を選ぶうえで基準としたのは“一夜限り”というイベントの特別感だ。「お客さんにとっては内容もわからないまま、一夜限り、一発勝負で観る映画になるので、エッジがあるもののほうがおもしろいかなと思った」と刺激的なものでありつつ、「もちろん僕が“おもしろい”と感じたものを観てほしいと思いましたし、映画館のスクリーンで観る意義のある作品。“ボケを入れてもおもしろいのかな”、“いや、それはやめておこう”と思ったり(笑)。本当にいろいろと考えたんですが、最終的にえらくまじめに選んだものになりました」と、自らも心から「映画館で観たいと思う作品」だと太鼓判。「その映画を知らなかったという人もいれば、映画館で観たかったけれどタイミングを失っていたという方もいると思うんです。いろいろな方に響く1本になればうれしいですし、ぜひ楽しんでほしいです」と期待を寄せる。

二宮和也の選んだ1作が6月25日(木)に全国の映画館にて上映される
二宮和也の選んだ1作が6月25日(木)に全国の映画館にて上映される / 「映画館に行こう!」実行委員会

幅広い層に向けて、映画館で映画を観る醍醐味や、映画そのものの魅力に触れてもらうきっかけとなるイベントだ。本企画に共鳴したという二宮は、「いろいろなデバイスで映画を観られるような時代だからこそ、映画館に対する価値がようやく出てきたんじゃないかと感じている」と、映画館だからこそ生まれる没入感を、改めて実感する時代だと分析する。

映画館で映画を観るという時間は、「ある種、過酷でもある」と持論を述べた二宮。「トイレに行きたくても、飲み物を買いたいと思っても、流れている映画は止まらない…というのは、過酷な状況でもありますよね」と微笑みながら、「そんななか、“この映画を観たかった”という人たちが、その時間が空いていたからと無作為に集まって、一斉に同じ空間を共有する。お酒を飲み交わしたり、食事を共にしたこともない人間が、2時間くらい同じ方向を見つめるって、なかなか特殊なものだと思うんです。さらに一緒になって笑ったり、感動したりするなんて、とてもおもしろいことですよね。“みんなでこの映画を観た”という、共犯関係のような関係性を築くようなところがある。それは映画館に行かないとできない、映画との向き合い方です」と想いを巡らせる。

映画館ならではの“映画の楽しみ方“について語る二宮
映画館ならではの“映画の楽しみ方“について語る二宮 / スタイリスト/福田春美、ヘアメイク/金山貴成

加えて「やっぱり人間は、“携帯を観ちゃダメですよ”、“騒いじゃダメですよ”といった、ある程度のルールがあるほうが集中して映画と向き合えるものだと思うんです」と映画館ならではの空気感にも言及。「じっくりと向き合うことで、後からその映画を振り返った時には、“どういう状況で観たのか”という思い出と繋がっていく。家での楽しみ方とは違う経験ができて、それを思い出として蓄積できるのが、映画館という場所なのかなと感じています」と映画を観るだけではなく、“体験”へと昇華してくれる場所だと語る。

映画館は、その時、その空間でしか味わえない“体験”が生まれる場所。もし映画館に行ったことがない人がいるとしたら、二宮は「ぜひ満席の映画館を味わってみてほしい」とオススメする。「満席って実は、とても貴重な機会なんですよね。満席のなかで映画を観るというのは、なかなかできない経験。人生で一度、体験してみると楽しいかもしれない」と一体感や熱気を堪能してほしいと、穏やかな笑顔を見せる。

■「自分の出演作は、公開時にお客さんと一緒に観ることが多いです」

二宮にとって映画館は楽しい場所だと感じた原体験は、「小さなころに、よく映画館に行っていた記憶」だという。

初めて映画館で観たのは、「東映まんがまつりのアニメの2本立てだったと思う」と記憶を蘇らせながら、「小さいころはよく映画館に行っていました。当時はまだ指定席ではなく、子どもたちも通路の階段に座ったりして『ドラゴンボール』を観る…みたいな」とにっこり。「いま思うと、親が休める時間だったのかなという気もしていて。夏休みならば映画館は涼しいし、映画を観ている間は子どもたちもそこにずっと座っているから。親としては助かったんじゃないかな。まあなんであれ、本人は楽しんでいましたけれど」と少年時代を懐かしむ。

【写真を見る】二宮和也、自分の出演作は「お客さんと一緒に観ることが多い」撮り下ろし写真もたっぷり掲載!
【写真を見る】二宮和也、自分の出演作は「お客さんと一緒に観ることが多い」撮り下ろし写真もたっぷり掲載! / スタイリスト/福田春美、ヘアメイク/金山貴成

ここ数年で考えても、シベリアの強制収容所(ラーゲリ)にて不当に抑留され捕虜となりながらも、生きることへの希望を捨てなかった山本幡男の壮絶な半生を描く映画『ラーゲリより愛を込めて』(22)で第46回日本アカデミー賞の優秀主演男優賞を受賞、累計販売本数200万本超の世界的大ヒットを記録したゲームを実写映画化した『8番出口』(25)が世界的ヒットを果たすなど、二宮は映画界でもひときわ鮮烈な存在感を発揮している。自身の出演作を映画館で観客と一緒に楽しむことはあるのだろうか?

すると二宮は「お客さんと一緒に観ることは多いですね。多いというか、ほぼそうです」と回答。


周囲の観客には「1回も気づかれたことはないです。僕、そこらへん、うまいんですよ」とご満悦の表情を浮かべながら、「あまり試写とかに行かないタイプで、たいてい公開してから映画館でお客さんと一緒に観ます。映画館で公開された時こそ、その作品が生まれた瞬間になると思うので、お客さんのリアクションを共有したいなという想いもあって。『ラーゲリより愛を込めて』ではお客さんが泣いている姿を目にすることもあって、そうするとやっぱり感動します。現場が大変だったとしても、伝わってよかったなと思いました」としみじみ。また『8番出口』では、主人公と一緒に地下通路に迷い込むような、新たな興奮を観客に提示した。第78回カンヌ国際映画祭「ミッドナイト・スクリーニング部門」に正式招待され、二宮も現地での上映に立ち会っていたが、「音楽もそうだけれど、映画も万国共通なものになりつつある」と肌でその熱を感じ取ったという。

「その人が出演している映画を、本人と一緒に観に行ったらおもしろそう」と口にした
「その人が出演している映画を、本人と一緒に観に行ったらおもしろそう」と口にした / スタイリスト/福田春美、ヘアメイク/金山貴成

今後の構想として「“やってみたらおもしろいかな”と思うのが、その人が出演している映画を、一緒に観に行くこと」だ。「出ている本人だけ、嫌な空間になるんですが」と笑いながら、「そのあとに、“あそこはああだったね、こうだったね”と話すのもおもしろいはず!演劇とかだと、舞台が終わったあとにみんなでご飯を食べて行って、その日のお芝居や作品について話す機会って結構多いものだと思うんです。映画でも、そういうことをやってみたらおもしろいんじゃないかな」と仲間と鑑賞しながら、映画談義をしてみたいと目を光らせていた。


■「“好きだ”、“楽しい”ということを日々積み重ねていくことが、大事なのかなと思っています」

「シークレットシネマ」は、映画界の未来に希望を抱く若い世代が中心となって、始動したプロジェクトだ。彼らのパワーに頼もしさを感じつつ、二宮は「若い世代が頑張らないと、映画館に足を運んでもらうのが難しい時代が来るのかなと思っていたんですが、むしろ最近はだんだん活気が戻ってきていて。邦画がすごく元気だと感じている」と確信を込めて語る。

邦画界に広がる活況を目の当たりにしているという
邦画界に広がる活況を目の当たりにしているという / スタイリスト/福田春美、ヘアメイク/金山貴成

「昨年に公開された邦画は、すごい成績を出した作品ばかり。そのなかで『国宝』は、観ていない人ですらどういった内容なのか理解しているような映画になった。『国宝』はまさに、ヒットと呼ぶに相応しい映画ですよね。ここ数年はアニメが全盛の時代でしたが、これから10年経っても、あの時代には『国宝』があったと言われ続ける作品なんだと思います」と邦画界に広がる活況を目の当たりにしながら、「山田洋次さんがよく言っていたのが、『映画という文化、エンタテインメントの歴史は、まだ1世紀余りに過ぎない。文化が1世紀で根付くはずはないんだ。これからもインフレし続けて、上昇していくものなんですよ』と。そして、『これからはものすごいスピードでいろいろな作品、いろいろな人が出てくる。だから頑張らないといけない世代ですよ』と言うんですね。そうだな、頑張らないといけないなと思いました」とこれから、より大きな熱量が映画界を包み込んでいくはずだと先を見据える。


その言葉をくれた山田洋次監督をはじめ、蜷川幸雄監督のもと映画単独初主演を飾った『青の炎』(03)、ハリウッドデビューを果たした『硫黄島からの手紙』(06)では、クリント・イーストウッド監督とタッグを組むなど、錚々たる名監督と時間を共にしてきた。あらゆるジャンルで八面六臂の活躍を遂げてきた二宮のキャリアに、映画の仕事はどのような影響を及ぼしているのだろう。

二宮は、「好きなものを信じること。それがいかに大変で、すごいことなのかということを映画界の先輩方が実証してくれています」と胸に刻まれた学びを口にする。

「山田さんもそうなんですが、クリントも、『映画を好きだから撮っているのではなくて、自分が好きなものを撮っていたら、それが映画になったんだ』と言うんですね。クリントが“撮るのが速い”と言われる所以はそこにあるんだと思います。“好きなものを撮っているだけだから、気づいたら終わっちゃう”って。“繋ぐのが得意だから、それを繋いだら映画になっただけだ”と言うんです。カッコいいので、もし僕が監督をやることになったら、そう言おうと思っているんですけど」と破顔しながら、「それくらい好きなものに、愚直に向き合っている。蜷川(幸雄)さんだって、最後までそうやって向き合っていた。そして山田さんもクリントも、絶対に辞めるタイミングがあったと思うんです。でも辞めなかったというのは、責任感でもないし、儲かる・儲からないとかそういうことでもないし、ただただ“好きだ”ということなんだと思うんです。そして好きだから続けるというのは、実は一番難しいことなんじゃないかと。そういったことを、諸先輩方から教えていただいています」とたくさんの刺激を受けながら、歩みを進めていることを明かす。「出るのも、つくるのも、観るのも、すべて。“好きだ”、“楽しい”ということを日々積み重ねていくことが、大事なのかなと感じています」。

山田洋次監督やクリント・イーストウッド監督から受け継いだ学びを語った
山田洋次監督やクリント・イーストウッド監督から受け継いだ学びを語った / スタイリスト/福田春美、ヘアメイク/金山貴成

「1本や2本、みんなの心のなかに残っている映画ってきっとあるものだと思うんです。そう思うと、映画ってやっぱりみんなの支えになるものなんだろうなと感じます」と終始、映画の力を噛み締めていた二宮だが、こんな興味深い視点も飛び出した。

「自分が“つまらないな”と思える映画に出会うことも、すごく必要で。仲間と話して盛り上がるのって、実はそっちだったりする。怖いもの見たさじゃないけれど、そういうものも観ておくべきで、そこから得られるものが必ずあるんですよね。映画館はそういった衝撃の出会いを与えてくれるものでもあるし、それを“ここにいるお客さんたちと一緒に観たんだ”と思うと、明日を生きる力になるというか(笑)。僕はポスターに書かれた1行、2行を信じて映画に行くしかなかった世代なので、観に行って“嘘だろ…”と感じるようなつまらない映画ももちろんあって。タイパもコスパも悪いけれど、そうやって過ごすことはとても豊かだったなと思うんです」。たしかに違和感を通して、自分の感性を知ることだってできるのが映画だ。

「恥ずかしい」と照れ笑いをのぞかせた二宮
「恥ずかしい」と照れ笑いをのぞかせた二宮 / スタイリスト/福田春美、ヘアメイク/金山貴成

予期せぬ巡り合わせへ飛び込むことが、人生を豊かにしていく…。真摯な姿勢で、楽しそうにインタビューに応える二宮の言葉の端々には、そんな想いが垣間見える。「もし映画館の館長になったとしたら?」と尋ねてみると、「例えばイベントの実施日が6月25日ならば、15年前の6月25日に上映されていたもの、20年前の6月25日に上映されていたもの、30年前の6月25日に上映されていたものと、日付縛りで特集上映を組むのもおもしろいかもしれませんね。その時代のトレンドや歴史、技術が見えてくるかもしれない」と映画との邂逅が、まだ知らない世界へ踏み出すきっかけになることを願っていた。

取材・文/成田おり枝
配信元: MOVIE WALKER PRESS

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