ためらいながら送ったひとこと
このまま黙っていても、勝手にふくらむ想像に振り回されるだけです。私は迷った末に、できるだけ軽く聞こえるように打ちました。
「あの香水、開けたの?」
送信したあと、返事はすぐには来ませんでした。やはり聞くべきではなかったのか。そう思いかけたころ、彼から電話がかかってきました。出ると、彼はいつもより早口で、何かを言いかけてはやめる、を繰り返しています。そしてようやく、観念したように切り出しました。
「本当は、ずっと使ってた」
私が想像していたのとは、まるで違う打ち明け話が始まりました。
そして...
彼は、私と会う日にだけ、その香水をほんの少しだけつけていたのだそうです。ほんのひと吹きだったから、私はその香りに気づけずにいたのでした。
けれど、せっかくの贈り物を使い切ってしまうのがもったいなくて、それでいて私の前で使っていると言うのが照れくさくて、つい開けてないと言い続けていたのだといいます。
誰かのための香りではなく、私と会うための香り。種明かしを聞いて、抱えていた不安はゆっくりとほどけていきました。それでも、ひとこと素直に言ってくれていれば、私はこんなに遠回りをせずにすんだのです。
次に会うときは、香るかどうかそっと確かめてみよう。そう思いながら、私はもう一度あの写真を見直しました。
(20代女性・事務職)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
