「残酷だけど美しい映画だった」(20代・男性)、「いい意味で期待を裏切られた!」(20代・女性)、「歩いているだけなのにめちゃめちゃおもしろい!」(30代・女性)、「友情、狂気、絶望のすべてがある」(50代・女性)などの多彩な感想が寄せられている本作の魅力について、観客から寄せられた印象深いコメントと共に迫っていきたい。
戦争により国家が分断された近未来のアメリカ――。冷酷な少佐(マーク・ハミル)のもと、ひたすら歩き続ければ、多額の賞金とどんな願いも一つだけ叶えられる権利を獲得できる“ロングウォーク”が国を挙げて開催されていた。この“祭典”に参加するのは50人の若者たち。様々な背景、想いを抱えながら競技に挑む彼らを待ち受けていたのは、想像を超える恐怖と絶望だった…。

■観る者の心を削る!肉体的かつ精神的な恐怖演出

歩みを止めれば即射殺というデスゲームであり、ルールは「時速4.8kmをキープすること」「速度を下回り警告を受けないこと」「最後の一人になるまで歩き続けること」といたってシンプル。警告を3つ受けた者、競技から逃れようとコースを外れた者は失格となり、周囲で監視している兵士によって射殺される。「裏技や生存ルートがなく、必ず一人しか生き残れない絶望感がすごい」(20代・男性)という言葉通り、誤魔化しが効かず、ルールを破った者は一人、また一人と確実に命を奪われていく。まさに「狂歩」(40代・男性)だ。
最後の一人になるまで休むことなく歩き続けなければならない“ロングウォーク”に、肉体的にも精神的にも追い詰められていく若者たち。殺し方は射殺のみだが、「苦痛を感じさせるレパートリーが豊富」(10代・男性)とあるように、目を背けたくなるようなゴア表現や「死を悲しむ暇すら与えられない」(30代・女性)という友を失う精神的疲弊など、容赦ない演出で観客の感情を煽っていく。

「足が攣ったり、鼻血が出たりと身体が限界を迎えていく描写が印象的」(30代・女性)
「足首が捻れて戻らないシーンが頭から離れない」(20代・女性)
「生々しく痛みや疲れを描いていて、観るだけでこんなに疲れたのは初めて」(20代・男性)
「死に様があまりに即物的」(50代・男性)
上記の言葉が示すような肉体的描写にド肝を抜かれたという声はもちろん、
「死ぬ人を観るより、死ぬ人を見た人を観るほうがつらかった」(10代・男性)
「摩耗していく精神にずっと手に汗握っていた」(30代・女性)
「身体の痛みは映画で観慣れているけど、助け合ったあとで見送るつらさは想像もできない」(30代・女性)
「精神力のない自分は観ているだけで気が狂いそうになった」(20代・男性)
といった言葉も散見するなど強烈なシーンに多くの観客が食らったようだ。基本的には歩くだけという静謐な物語に、暴力が唐突に差し込まれる臨場感には、「静かななかに突如銃声が鳴り響く、そんなシーンが続くことに精神的な痛みを感じた」(10代・男性)、「終始ずっと緊張しながら観ていた」(20代・女性)、「没入して足が痛くなった」(20代・女性)という声まで寄せられた。
■個性豊かな若者たちが築き上げる絆が激アツ!
ライバルでありながら友情を築いていく若者たち。ある復讐心を胸にゲームに参加した主人公レイ(クーパー・ホフマン)を筆頭に、複雑なバックグラウンドを持った個性豊かなキャラクターたちが青春ドラマを織り成していく。

「誰か一人しか残らないゲームなのにあふれる人間味がいい」(40代・男性)といった声が寄せられていたレイと友情を築き、物語の中心となっていくのが、「道を示してくれる自分の近くにいてほしい人物」(20代・男性)、「タフで優しい、優しいからタフなのか?」(30代・女性)など、印象に残ったという声が多かったピーター(デヴィッド・ジョンソン)。「2人ともつらい過去があるから人に優しくできるんだろうなと思った」(10代・女性)とあるように、極限の状況下でも人間性を失わずに、周囲に気を配りながらサバイブしていく姿が印象的だ。

また、ノリを間違えてしまい周囲にちょっかいをかける“嫌なやつ”になってしまったバーコヴィッチ(チャーリー・プラマー)に、「哀れだが愛おしく感じる」(30代・男性)、「本当の悪人ではない」(40代・男性)などの声が寄せられるなど、どの人物もキャラが立っており、ゆえに人間模様が心を揺さぶる。
「こんなに美しいデスゲームは初めて」(30代・女性)
「かけがえのない友と出会い、その別れが訪れるとわかっているのに歩き続けるつらさ」(50代・男性)
「これ以上、仲良くならないでと思ってしまった」(20代・男性)
「必ず終わりが来ることがわかっているのに関係を結ぶ、究極の一期一会」(30代・男性)

レイとピーターを中心とする若者たちの美しくもせつない友情、青春模様に心を揺さぶられる一方で、悪役を一手に引き受けるのが、ロングウォークを支配する少佐。「声の重みと存在感に納得」(40代・女性)といった声も寄せられるなど、「スター・ウォーズ」シリーズのルーク・スカイウォーカー役で知られるマーク・ハミルの、嬉々とした悪役ぶりは青臭くなりすぎないバランスを保っており、さすがの一言だ。
■「もし自分だったら…?」極限の物語が人間性をあぶり出す

若者たちが徐々に余裕を失い、追い詰められていく姿を映しだす本作は、観終わった際には「私自身が参加したら、どんな自分が見えてくるのか、とても興味深い」(30代・男性)、「どう生きるかと同時に、どう死ぬかを考えさせられる」(50代・男性)とあるように、過酷な旅路を見守るうちに「もしも自分だったら…」という考えが浮かんでくる。
極限の状態下でも思いやりを失わないキャラクターたちの姿に「友情が人を人たらしめる」(30代・女性)、「ロングウォークの参加者がこの世界で一番人間性を失っていないと感じた」(30代・女性)といった熱い言葉が散見されたが、自分なら…となると、打って変わってシビアな言葉が並ぶのもリアル。
「自分のことで精一杯になると思う」(20代・女性)
「自分の命が懸かっているなかで他人を助ける余裕を持つのは難しい」(20代・男性)
「人を蹴落とす空気になって助け合いにならない気がする」(10代・男性)
それでも「一人では戦えないと思う。別れはつらいが互いのことを理解しながら進んでいきたい」(20代・女性)、「助け合いながら進むしかないと思い込んでやります」(30代・男性)といった希望的な言葉も見られ、自分の人間性と向き合える作品となっているようだ。
■長い旅路の末に、彼らがたどり着く結末とは…?

「絶望から始まり、絶望で終わった」(20代・男性)
「壮絶、救いようがない…」(30代・女性)
「いまの時代に必要な“共生”が描かれている」(40代・男性)
「つらいことがあっても歩き続けなければならない。まるで人生のような映画」(20代・男性)
「デスゲームものの新たな名作です」(20代・女性)
キング作品ならではの後味の悪さや恐怖に加え、一筋の希望を感じさせる青春模様も盛り込まれており、観客によって様々な受け取り方ができる『ロングウォーク』。「自分もロングウォークに参加しているような気分になるほど没入感がすごい」(20代・女性)とあるように、映画館でチェックして、若者たちの苦しみや痛みを追体験してみてほしい。
構成・文/武藤龍太郎
