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1日の間に2年が過ぎる灼熱惑星を発見か──ガス巨星に異常な自転

1日の間に2年が過ぎる灼熱惑星を発見か──ガス巨星に異常な自転

1日の間に2年が過ぎる灼熱惑星を発見か──ガス巨星に異常な自転
1日の間に2年が過ぎる灼熱惑星を発見か──ガス巨星に異常な自転 / Credit: Keith Miller (Caltech/IPAC – SELab)

米国のカリフォルニア工科大学(Caltech)が主導した研究によって、ある灼熱の巨大惑星では、「1日」が終わる前に「2年」が過ぎ去っているらしいことがわかりました。

恒星のすぐそばを回る惑星は、常に同じ面を恒星に向けて自転と公転が一致する――つまり「1日=1年」になるのが当然と考えられてきました。

ところがこの惑星は自転があまりに遅く、恒星の周りを2周してようやく1回の自転が終わる――「1日に2年が過ぎる」状態にある可能性が示されたのです。

研究を率いたケッセリ氏は「長年研究してきた惑星でさえ、万能なモデルは通用しないことが分かってきました」と述べています。

この惑星ではいったい何が、自転をこんなにゆっくりにさせていたのでしょうか?

研究内容の詳細は2026年6月15日に『arXiv』にて公開され、『The Astronomical Journal』に投稿されています。

目次

  • 「いつも同じ顔を見せる」のが普通だった
  • 1日の間に2年が過ぎ去る灼熱惑星
  • もし自転が本当に遅いのなら、なぜなのか?

「いつも同じ顔を見せる」のが普通だった

「いつも同じ顔を見せる」のが普通だった
「いつも同じ顔を見せる」のが普通だった / Credit: Keith Miller (Caltech/IPAC – SELab)

これまでの観測により、太陽系以外の星系にも、数多くの惑星が存在することが明らかになってきました。

その中でホットジュピターと呼ばれる惑星たちは、木星と同じかそれ以上に大きな巨大ガス惑星でありながら、恒星のすぐそばを公転しているタイプとして知られています。

地球から太陽までの距離を1とすると、その30分の1以下――太陽から水星までの距離のさらに10分の1以下という、目もくらむような近さを、わずか1〜10日で1周してしまいます。

これだけ主星に近ければ、惑星の主星に近い側と遠い側とで重力の引っぱられ方に差が生まれ、その差が強く働くため、ほぼ例外なく恒星に常に同じ面を向ける「潮汐固定」と呼ばれる状態にあります。

月が地球に常にウサギ柄として知られる同じ面を見せているのと同じように、これら巨大ガス惑星たちも恒星に同じ面を向け続け、1回自転する間に1回公転する「1日=1年」という関係が常識だと考えられてきました。

左は潮汐固定されている場合、右はそうでない場合
左は潮汐固定されている場合、右はそうでない場合 / Credit: Keith Miller (Caltech/IPAC – SELab)

また潮汐固定されたホットジュピターは、片面だけが永遠に灼熱に焼かれ、もう片面は永遠の闇に閉ざされる、極端な世界になります。

さらに理論的な予測によれば、惑星の赤道に沿って強い東向きのジェット気流が吹き、昼側の熱を東へ押し流すため、いちばん熱い場所(ホットスポット)は恒星の真下よりも少し東側にずれるはずだ、とされてきました。

いわば惑星規模の「高速ベルトコンベア」が、昼側の熱を東へ東へと運んでいるイメージです。

実際、これまでに観測されてきた多くのホットジュピターは、この理論通りの姿を見せてくれていたのです。

ところが、CoRoT-2 bだけは違いました。

CoRoT-2 bでは、この一番熱い場所が、なぜか西へずれていました。

これは、ホットジュピターの大気循環の常識に真っ向から逆らう異常事態でした。

その後の再解析でも、CoRoT-2 bは「ホットスポットが明確に西側にずれている、唯一の堅実な例」として浮かび上がってきました。

他のホットジュピターは東にずれるか、ずれないかの二択。西へ振れた惑星は、CoRoT-2 bただ一つだったのです。

「なぜこの惑星だけ、こんなことになっているのか?」

これは天文学者にとって、放っておけない謎でした。

1日の間に2年が過ぎ去る灼熱惑星

1日の間に2年が過ぎ去る灼熱惑星
1日の間に2年が過ぎ去る灼熱惑星 / Credit: Keith Miller (Caltech/IPAC – SELab)

では、その犯人は何なのか?

研究者たちは当初3つの可能性を考えていました。

ひとつめは、雲が邪魔をしている説。

惑星の東側に厚い雲が広がっていて、本当はそこが熱いのに、私たちからは見えなくなっているのかもしれない。

ふたつめは、磁場が大気の流れを引っくり返している説。

惑星自身の磁場が、電気を帯びた大気の流れと複雑に作用して、本来東向きに吹くはずの「赤道のジェット気流」が、逆向きに変えられてしまっているのかもしれない。

そして3つめが、もっとも根本的な仮説――惑星の自転そのものが、公転に追いつけないほど遅いのではないか、というものでした。

しかし2018年の時点では、どれが正しいのかを区別する方法がありませんでした。

そこで今回、ケッセリ氏のチームが採用したのが、惑星の自転そのものを、その光を手がかりに読み取るという大胆なアプローチでした。

使った道具は、欧州が誇る超大型望遠鏡VLT(口径8.2メートル)に搭載された「CRIRES+(クライレスプラス)」という名の高分解能近赤外分光器です。

光をプリズムのようにものすごく細かく分解できる装置で、星の光の中に含まれる、ごくわずかな波長のずれを読み取ることができます。

なぜ波長のずれが惑星の自転を教えてくれるのでしょうか?

これは、救急車のサイレンの音が近づくときは高く、遠ざかるときは低く聞こえる、あのドップラー効果と同じ原理です。

惑星が自転していると、こちらに向かってくる側の光は青っぽく、向こうへ離れていく側の光は赤っぽくシフトします。

そのずれの幅から、惑星の表面がどのくらいの速さで動いているか――つまりどれくらいの速さで自転しているかが計算できるのです。

ケッセリ氏らは2023年、CoRoT-2 bが主星の裏側に隠れる「二次食」の前後に合わせて、複数回の観測を行いました。

チームは惑星大気中の水(H₂O)と一酸化炭素(CO)から放たれる光を、宇宙の雑音の海からなんとか拾い出すことに成功します。

そしていよいよ、自転速度を計算してみたところ――。

理論的に予想されていた、潮汐固定の場合の自転速度はおよそ秒速4.4キロメートルに対して、実際に測定された自転による光の広がりは、秒速2.2キロメートル相当しかなかったのです。

予想のおよそ、半分でした。

また研究者が計算を行ったところ、CoRoT-2 bが恒星の周りを1周する時間、つまり「1年」は、わずか約42時間なのに対して、自転1回つまり「1日」にかかる時間は約82時間となり、およそ2倍になっていたのです。

では、残りの2つの容疑者はどうだったのでしょうか。

まず「雲」説。

高分解能データを調べましたが、東半球を覆い隠すような厚い雲の明確な痕跡は見つかりませんでした。

そもそも雲は惑星の涼しい側にできやすいため、熱い東半球だけを都合よく覆い隠すのは難しいと考えられます。

ただし、この観測方法は雲をとらえる力が弱く、雲説を完全に排除できたわけではありません。

次に「磁場」説。

ジェット気流を丸ごと逆転させるには、約230ガウスという途方もなく強い磁場が必要になります。

ところが、ホットジュピターに見込まれる磁場は、強めに見積もってもその半分以下、ふつうはもっと弱いと考えられています。

230ガウスは、現実的な想定をはっきり超える強さで、可能性としては考えにくいのです。

こうして、完全な消去法とまではいかないものの、3つの中で最も観測とよく合ったのが、3つめの「のろま自転」説でした。

そしてまさにその仮説を裏づけるように、測定された自転速度は想定の半分しかなかったのです。

ケッセリ氏は「いろいろな方法を試してみたところ、『ああ!これはまさに3つの仮説のうちの1つだ!』と、とても嬉しい驚きがありました。データがそのうちの1つを明確に示しているのを見て、本当に興奮しました」と述べています。

しかし自転が遅いと、なぜホットスポットが西にずれるのでしょうか?

先にも述べたように、通常のホットジュピターでは速い自転が赤道付近に東向きのジェット気流を生み、この「ベルトコンベア」が昼側の熱を東へ運びます。

しかし別の代表的なホットジュピター(HD 209458b)を使ったシミュレーションでは、自転が同期よりも十分に遅くなると、この力学バランスが崩れ、ジェット気流の向きが東から西へ反転することが示されました。

惑星自体が公転と同じ方向にゆっくり回っていると、その「ゆっくりさ」が、大気の流れるパターンを丸ごと変えてしまうのです。

風が西に吹けば、熱も西に運ばれる。

こうして、ホットスポットが西側にずれるという、あの異常な観測結果が説明できるようになります。

配信元: ナゾロジー

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