2024年4月、東京・上野で焼肉などの飲食店を約20店舗展開した会社社長、宝島龍太郎さん=当時(55)=と妻の幸子さん=同(56)=が殺害され、遺体が栃木県那須町に遺棄された事件で、殺人罪などで起訴された7被告の一部の公判が東京地裁で始まった。事件発覚直後、被告の1人が捜査をかく乱するため警察に出頭し、“上部”を隠す芝居を打ったもののウソと疑われると半日もせずに泣いて供述をひっくり返していたことがわかった。
平山被告は「幇助犯だと思います」と一部罪状を否認
事件で東京地検は宝島さん夫婦の長女・真奈美被告(33)や、その内縁の夫の関根誠端(せいは)被告(34)らを殺人や死体遺棄罪などで起訴している。
起訴状では7人は共謀し2024年4月15日夜、東京都品川区東五反田の空き家で宝島さん夫妻を首を絞めるなどして殺害し、遺体を車で那須町に運んだ上、焼いて遺棄したとされる。
上野では当時、宝島さん経営の『サンエイ商事』の系列飲食店が並ぶ通りがあり、“宝島ロード”と呼ばれるほどだった。事件は、夫妻の経営に不満を持った真奈美、関根両被告が経営の主導権を奪おうとして始まったと捜査当局はみている。
「警察、検察の見立ては、まず関根被告が宝島ロードでキャッチをしていた佐々木光被告(30)に殺害計画を明かし実行役の手配を持ち掛けたというものです。
佐々木被告は渋谷のクラブで知り合った平山綾拳被告(27)に、殺害の実行部隊を集めるよう指示。平山被告はこれまたクラブ友達の姜光紀(カン・グァンギ)被告(22)と元俳優の若山耀人(キラト)被告(22)の2人を確保し、この“カン・キラト”コンビが殺害と遺体遺棄を担ったとみられます。
さらに、犯行現場になった空き家は関根被告の知人で不動産会社役員だった前田亮被告(38)が提供した、というのが当局の描く事件像です」(社会部記者)
犯行当日、関根、前田両被告が宝島さん夫妻を「新規店舗の物件を見に行こう」と車で連れ出し、東五反田の空き家へ向かった疑いがあるという。
「屋内駐車場でカン、キラト両被告が夫婦をハンマーなどで殴り首を絞めて殺害し、両被告は平山被告の車に遺体を乗せて那須まで運び遺棄したとみられます。しかし民家の近くで、遺体は翌朝には発見されました」(社会部記者)
遺体が見つかった4月16日には、2つの遺体のうちひとつが宝島さんのものと判明。栃木県警は同日夕までに遺棄現場近くで、ナンバープレートが鮮明に見える平山被告の車にカン、キラト両被告が乗っている防犯カメラ映像を確保し、平山被告の逮捕状請求の検討を始めていた。
6月22日に公判が始まったのはその仲介役の平山被告と実行犯集めを指示した佐々木被告だ。罪状認否で平山被告は「(自分は殺人などの)幇助犯だと思います」と一部罪状を否認。佐々木被告は起訴事実を認めた。
元マル暴刑事の取り調べで“落ちた”平山被告
翌23日も両被告の公判は継続。公判では、平山被告が遺体発見翌日に警視庁大崎署管内の交番に出頭した後、「カン、キラトの2人が偶発的に殺したが他には自分以外に関与した者はいない」とのストーリーを最初主張したが、すぐに供述を翻していたことが2人の警察官の証言でわかった。
23日に最初に検察側証人として出廷したのは大崎署のA刑事だ。24年4月17日朝、出頭直後の平山被告を聴取したA刑事は、その際の供述内容を以下のように証言した。
「(平山被告は)『車を貸した仲間が那須で死体を捨てて燃やした。仲間の名前はカンとキラトだ』と答えた。さらに、『被害者夫妻には自分がアメ横で仕事を紹介してくださいと声を掛けて最初に知り合ったが、夫妻の名前は知らない』と説明した。
『カンとキラトが“不動産の話をする”と言って夫妻に会いに行った後、キラトが電話で“やっちまった”と言ってきて、殺したのだと思った』と供述した。
さらに平山被告は『スマホの地図アプリで遺棄場所を探しカン、キラト両被告に伝えた』と供述。『遺体が見つかったのでカンに出頭しようと誘ったが、結局一人で出頭してきた』と平山被告は話し、『他に事件に関与した者はいない』と意思表示した」(A刑事)
夫妻と知り合った経緯など、支離滅裂な内容だが、平山被告が任意聴取を拒否することを避けるため、A刑事は敢えて不審点を追及しなかったという。
だがそこで大崎署に到着した栃木県警捜査一課のB刑事が代わって詰めると供述はひっくり返る。次に証言台に立ったB刑事は次のように証言した。
「平山には不良っぽい印象を抱いたので、自分は『元マル暴』(暴力団担当刑事)でヤクザや不良を相手にしていたと説明すると徐々に心を開いてくれた。
『家族はどうなの? 彼女はいるの?』と問うと平山は泣き出したので『落ちた』と思い、『その涙が物語っているじゃないか』と声をかけた」(B刑事)
さらに平山被告は“仮の話”と前置きし、「H君」という男の話を始めたという。こんな内容だ。
「H君はクラブで出会ったヤクザと繋がりのある“兄弟分”から『始末やれる人を探している』『最後、すなわち(死体)遺棄までで1400万円の報酬を渡すので実行役を2人探して欲しい』『ただしこれは強制でなく任意だから』と言われた。
そこでH君が、同じクラブで出会ったカンとキラトに依頼したところ、2人は了承。遺棄現場の那須は『依頼主の土地だからバレない』と最初から決まっていた。
H君は犯行用に車を貸し出し、ガムテープやガソリン、結束バンド、延長コードなどの凶器をあらかじめ用意していた。兄弟分からはボストンバッグに入った1400万円を受け取り、カンとキラトに500万円を渡した。
しかし間も無く遺体発見が報じられたので、H君は兄弟分に出頭を促された。この時に口裏合わせした内容が(A刑事に話した)調書の内容で、兄弟分からは名前を出さないよう指示された」(B刑事が紹介した平山被告の供述内容)

