『ジョーズ』に先駆けた動物パニック映画
マイケルにとって初のソロヒット曲となった「ベンのテーマ」は、映画『ベン』(1972年)の主題歌でした。賢いネズミに率いられたネズミ軍団が人間を襲うという恐怖映画『ウィラード』(1971年)の続編だったのです。
大量発生したネズミが人間を襲う映画なんて、誰が観るのか? そう思われていた『ウィラード』でしたが、劇場公開されると予想外の大ヒット。そこで急きょ製作されたのが『ベン』でした。登場するネズミの数は『ウィラード』の500~600匹から、『ベン』は2000匹にアップしています。スティーブン・スピルバーグ監督のサメ映画『ジョーズ』(1975年)に先駆けた動物パニックもののヒット作でした。
ネズミたちのリーダーである「ベン」は、『ウィラード』では人間の裏切りに遭いますが、タイトルロールとなった『ベン』では孤独なダニー少年と仲良くなります。大人たちはネズミたちを駆除しようとしますが、ダニー少年は懸命にベンをかばいます。ダニーとの間に友情を感じたベンが、ダニーをいじめる近所の悪童にかじりつくなど、人間とネズミとの温かい交流が描かれています。
下水道に生息するネズミの大群を、大人たちが火炎放射器を使って撃退するシーンが『ベン』のクライマックスとなっています。実際のネズミたちを使って撮影しているため、今なら動物福祉の観点から問題視されるかもしれません。かなり「ヤバい」系の映画です。
マイケル自身も動物好きで有名だった
マイケルはやがてソロ活動を本格化し、「今夜はビート・イット」や「バッド」などの大ヒット曲を飛ばし、世界的なスーパースターとなっていきます。人気者のマイケルに群がる大人たちのなかには、お金目当ての人も少なくなかったようです。
そんなマイケルが家族同様に愛したのが、チンパンジーのバブルス君でした。また、マイケルの新居には動物園や遊園地も併設され、「ネバーランド」と呼ばれます。マイケル自身も、すぐに裏切る人間の大人より、純真な動物たちに愛情を注いだようです。
ちなみに映画『ベン』は、『水曜ロードショー』(日本テレビ系)で放映されたので、覚えている人もいるのではないでしょうか。当時の『水ロー』は、「いやぁ、映画って本当に面白いですね」の決めゼリフで知られる映画評論家の水野晴郎さんが解説を務めていました。マイケルの米国での人気ぶりを、水野さんは早くから日本に伝えていたひとりでした。
マイケルの歌声の美しさもあって、動物パニック映画『ベン』は一度観たら忘れられない異色作となっています。
