待ち合わせは、決まって私が遠出する駅
付き合い始めてから、待ち合わせの場所を決めるのはいつも彼でした。指定されるのは決まって、私の最寄りから何駅も離れた場所です。彼の家からはむしろ近いその駅へ、私は毎回ひとりで向かいます。
最初は気にしていませんでした。ただ、同じことが続くうちに、私の都合は関係ないのだろうかと感じるようになりました。会うための道のりの多くを、私だけが歩いている。その事実が、じわりと心に積もっていきました。
「早く着いちゃった」という彼の言葉
その日も、改札を出ると彼はもう先に来ていました。ベンチに座って、のんびりとスマホを眺めています。私の姿を見つけると、彼は軽く手を挙げて言いました。「早く着いちゃった」と、悪びれる様子もありません。
こちらは家を出てから乗り換えを重ねて、やっとたどり着いたところです。彼にとっては数分の距離なのだと、あらためて思い知らされました。楽な側にいる人の何気ないひとことが、その日はやけに引っかかったのです。
