日本代表が初出場を果たした98年フランスW杯に、GKとして選出された小島伸幸氏(60)。試合出場こそならなかったものの、歴史的な「W杯初試合」で感じたピッチ内外の“ギャップ”を明かしてくれた。
─最も思い出深い試合といえば、やはり仏W杯ですか。
小島 そうですね。特に第1戦のアルゼンチン戦です。当時は何もかもが初めての経験だったので、今思えば、ジーコさんとかピクシー(ドラガン・ストイコビッチ氏)といった、W杯の空気感を知るJリーグ関係者にあらかじめ話を聞いておけばよかった。ピッチ内外で驚くことばかりだったんです。移動の際に警察車両が先導してくれて、飛行機の真横までバスで乗り付けてくれたり、試合も現地のフランス人が観に来ると思っていたのに、日本人サポーターがめちゃくちゃ多くて驚きました。
─初のW杯という大舞台に、チームとして浮足立ってしまったのでしょうか。
小島 結果的に3戦全敗という厳しい結果を突きつけられました。対戦したアルゼンチンやクロアチアといった強豪国は、ここぞという勝負どころでの力の使い方がうまかった。自分たちのやりたいプレーをギリギリのところで絶対にさせてもらえず、世界とのレベルの差を痛感させられましたね。
─その後は、解説者の立場からW杯を盛り上げています。これから決勝トーナメントが始まりますが、過去の大会で記憶に残っている試合はありますか。
小島 まず決勝トーナメントではないのですが、14年ブラジルW杯のグループBの初戦、オランダ対スペインが忘れられません。前回王者のスペインが順調に先制してペースを握ったかに見えましたが、前半終了間際に追いつかれると、後半は怒涛の4失点で粉砕されました。衝撃的な大敗を喫し、そのままスペインはグループステージで敗退。まさかの優勝候補が“壊された”驚愕の試合でした。恐怖すら覚えた一戦です。
─何が起きるかわからないのもW杯の魅力ですね。
小島 決勝トーナメントで個人的に最も思い入れが強いのは、古い話になりますが、小学生の時にテレビで見た78年アルゼンチン大会の決勝戦、アルゼンチン対オランダです。アルゼンチンのFWマリオ・ケンペスが2得点を挙げて初優勝を決めました。NHKの放送をベータのビデオデッキに録画して、テープが擦り切れるほど何度も繰り返し見ました。「こんなに多くの人が熱狂するなんて、サッカーってすげー!」と度肝を抜かれ、当時は少年野球も並行していたのですが、“引退”を決意。サッカーだけに絞るきっかけになった、人生の原点とも言える名勝負でしたね(笑)。

