公明党による“連立離脱”の衝撃が続いている。党の存亡をもかけた決断のウラには何があったのか? 公明党元国会議員、創価学会関係者に話を聞いた。
故・池田大作名誉会長が「上品で素晴らしい人材」と評価
公明党が連立離脱を決めた10 月10 日、「集英社オンライン」の記者は、支持母体である創価学会の総本部がある信濃町で話をきいた。
創価学会職員だという50代の男性は「公明党は企業献金に反対してきました。でも自民党さんは寄り添わなかったじゃないですか。一言で言えば自業自得です。参院選のように、選挙もボロ負け続きですし、一緒にやる意味がなくなった」と語った。
他にも「自民党と一緒にいる公明党ってグルなの?とも思われてしまうし、よかったんじゃないですか」(都内在住40代・女性会社員)など連立離脱に賛同する声が多くあがった。
なぜ公明党は連立からの離脱を選んだのか。
公明党の斉藤鉄夫代表(72)は、自民党の高市早苗総裁(64)が総裁に選出された10月4日に、①「政治とカネ」の問題、②靖国神社参拝、③外国人政策についての懸念を伝達していた。連立継続のためにはこれらの懸念が解消される必要があるとしていた。
筆者の取材に対し、公明党の元国会議員はこう語る。
「私の経験から言っても、公明党の重要な判断には、支持母体である創価学会の意向が関わっていた。当時は創価学会のトップに公明党の創立者でもある故・池田大作名誉会長が君臨し、その下に創価学会会長が“総裁”的な立場でいて、公明党の党首は“渉外部長”といった感覚でした。
今回も学会側の意向もあり、高市さんとの第一回目の交渉の時から、連立離脱の流れは既定路線になっていたとみています。創価学会の原田稔会長を含めて、『このまま自民とは組めない』という思いだったのでしょう。ただ、結論は決まっていたとしても、理由付けを整理する必要があります。それがあの3項目だったとみています」
公明党が2021年、当時の岸田文雄政権に、18歳以下の子ども1人につき10万円を支給する臨時特別給付金を要求した時もそうだが、「創価学会本部の意向が働いていると公明党は強い」(同前)という。元公明党の議員が続ける。
「公明党の斉藤代表は清水建設の研究職でしたが、1993年に旧広島1区から公明党公認で出馬し、初当選しました。非常に謙虚な性格で、立候補要請があった時に、最初は固辞したと言われています。
池田大作名誉会長が『上品で素晴らしい人材』だと評価し、特別待遇をするきっかけになった。池田氏が斉藤氏に会い、『お前は、創価学会を守るために議員になるんだ』と伝えたと聞いています。
公明党では、“総合企画室”という部署が、学会本部とのやりとりを担当しますが、太田昭宏元代表や北側一雄元副代表と同様に、斉藤氏もこのポストを経験した。現在の創価学会の原田会長、そして長谷川重夫理事長も庶務室長として池田氏の側にいた人物です。斉藤氏とは信頼関係もあり、連携は取りやすい」
最終的に公明党は、企業・団体献金の受け皿を政治家が代表を務める政党支部ではなく、政党本部と都道府県組織に限定する案を“丸呑み”することを要求。そして、その案に対する高市氏の対応が不十分だとして、10月10日の会談後に連立離脱を表明した。
小泉進次郎農相が自民党総裁になっていれば…
公明党は2024年衆院選、2025年都議選、参院選と“3連敗”しており、参院選後には「党存亡の危機」と総括。現役世代や若年層の支持が伸びず、党の広報戦略の刷新に取り組んできた。最近では、YouTube『公明党のサブチャンネル』などで、SNS上で話題になるような、やわらかい発信にも力を入れている。
別の公明党関係者はこう語る。
「1994年に公明党の一部が新進党に合流し、その後、紆余曲折はありましたが、1999年に自公連立となったあとも、選挙における公明党の票は順調に伸び続けていた。2005年衆院選の比例得票数は890万票くらいとっていた。それが、今年の参院選では521万票くらいですから、非常に下がっている。
827万世帯の党員の高齢化なども指摘されますが、統一教会問題を受けて、“宗教2世”の問題などがクローズアップされ、宗教全般へのネガティブなイメージが出てしまった影響もあるように感じています。党存亡の危機を迎える中、学会員以外の無党派層の支持も集めることのできる政党にしなければならないという方針になっていた。
その中で起きたのが、今回の連立離脱だった。自民党から距離を置き、平和の党として独自色を出して党を再生しようという戦略です。とはいえ、連立解消により、公明党としても小選挙区での候補者擁立が非常に困難になり、茨の道ですが……」(公明党関係者)
ただし、高市氏の歴史認識や政治姿勢を問題視したという声も根強い。歴史的に、創価学会や公明党は日中友好に力を入れてきた。実際、斉藤氏は総裁戦後の10月6日に国会内で、中国の呉江浩駐日大使と面会している。
「池田先生は『女性の声を大事にしなさい』とおっしゃっていたことから、創価学会婦人部の発言力は強く、政治とカネの問題への忌避感があったのは確かでしょう。それに加えて、日中友好に力を入れてきた公明党としては、高市氏の歴史認識や政治姿勢が許容できないことも、離脱の引き金となったはず。高市氏に比べて、リベラル色が強いとされる小泉進次郎農相(44)が自民党総裁になっていれば、ここまで急な動きにはならなかった可能性もある」(同前)
高市氏に近い自民党関係者は「公明党は、総裁選で小泉氏を支援した自民党のグループとやりとりが多い。一連の離脱劇については、両者の“連携”を疑う声もある」と指摘する。斉藤氏も10月11日配信のYouTube番組で、将来的な再連立の可能性に言及している。

