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〈戦争とW杯〉最後の1枠を逃したイラン代表がロッカーに残した“敬意の言葉”…敗者の品格が問いかけたもの

〈戦争とW杯〉最後の1枠を逃したイラン代表がロッカーに残した“敬意の言葉”…敗者の品格が問いかけたもの

北中米W杯のグループステージ最終戦でエジプトと引き分け、各組3位チームの上位8チームに与えられるラウンド32進出の最後の1枠に届かなかったイラン代表。終盤には勝ち越しゴールかと思われた場面がVARで取り消され、無念の敗退が決まった。それでも彼らが試合後のロッカールームに残したのは、フェアプレーと敬意をたたえるメッセージだった。

 

戦争と外交緊張の影を背負いながら、グッドルーザーとして大会を去ったイラン代表。その姿は、サッカーが勝敗だけでは語れない競技であることを改めて示していた。

アメリカを去るイラン代表が残した“敗者の品格”

戦争と外交緊張の影が、ピッチの外にまで及んだ北中米W杯。その中で、イラン代表が残したあるメッセージが話題となっている。

6月26日(日本時間27日)、グループステージ最終戦、イランはシアトルでエジプトと対戦した。試合は1−1。終盤にはイランが勝ち越したかに見える場面もあったが、VARの結果、オフサイド判定でゴールは取り消された。

勝てば決勝トーナメント進出に大きく近づく一戦。さらに他会場の結果も絡むなかで、イランは最後の1枠を争う立場にいた。あと一歩でノックアウトステージに手が届く可能性があっただけに、選手たちの落胆は想像に難くない。

しかし、エジプト戦後に、イラン代表がロッカールームに残した言葉は、判定への恨み言ではなかった。そこにあったのは、フェアプレーや敬意、サッカーの精神を訴えるメッセージだったと現地メディアが報じている。

「私たちはイランから来ました。何千年ものあいだ、勝利よりも名誉を重んじてきた国からです。私たちにとって、サッカーは結果を競うだけのものではありません。人格が試される場でもあります。勝ち点は、さまざまな方法で手にできるのかもしれません。

しかし、敬意はそうではありません。チームはグループを突破できるかもしれません。しかし、公正さと名誉を通してのみ、人は歴史の前で胸を張って立つことができます。フェアプレーは、サッカーのルールに記された単なる一文ではありません。

それは、この競技の魂です。シアトルの皆さん、温かいもてなしに感謝します。そして、心を、声を、存在のすべてをイランに捧げてくれたすべてのイランの人々に感謝します。イランは、常に誇り高く立ち続けます」

勝敗の行方が揺れ、最後の1枠を逃し、政治的にも厳しい状況に置かれていたチームが、最後に残した言葉が怒りではなく、相手や競技へのリスペクトだったこと。その振る舞いに、このメッセージは複数の海外メディアで取り上げられた

敗退したチームに向けられる言葉として、「グッドルーザー」という表現がある。悔しさを押し殺すことでも、敗北を美談にすることでもない。負けたあとにこそ、そのチームが何を大切にしていたのかが見える。今回のイラン代表は、まさにその意味で、グッドルーザーとして大会を去ったチームだった。

戦争と外交緊張のなかで戦った代表チーム

今回のイラン代表は、通常の出場国とは異なる環境で大会を戦っていた。米国とイランの関係は緊張状態にあり、イラン代表には入国や移動、滞在に制限が課されていたと報じられている。チームはメキシコのティファナを拠点とし、米国内での試合のたびに移動する形を余儀なくされた。

W杯は本来、選手たちにとって最高の舞台であるはずだ。だが、イラン代表にとっての北中米W杯は、サッカーだけに集中できる大会ではなかった。

もちろん、安全保障上の理由から開催国が入国管理を行うこと自体は、国際大会において避けて通れない問題でもある。だが、選手たちが背負っていたものは、単なる移動の不便さではない。国と国の対立、戦争の空気、政治的な視線。そのすべてが、彼らのプレーの背景にあった。

もっとも、イラン側が不満を示していなかったわけではない。エジプト戦後にイラン代表FWメフディ・タレミは、FIFAに対して厳しい入国制限や一部のチーム関係者・スタッフに米国ビザが発給されなかったことなどについて批判したと報じられている。

「大会の初めから、私たちはこうしたことに不満を訴えてきました。これは災難のようなW杯です」「(FIFAの)インファンティーノ会長は初戦後にロッカールームに来て、すべての問題を解決すると言いました。しかし実際には、FIFAは何もしませんでした」(メフディ・タレミ/イギリス紙『The Sun』より)

大会期間中の米国での滞在制限や拠点変更、ビザ問題、過酷な移動についても、タレミやガレノイ監督、チーム関係者はFIFAや開催国側の対応を厳しく批判していた。だが、エジプト戦後のロッカールームに残された言葉は、少なくともフェアプレーと敬意を前面に出すものだった。

このロッカールームに残されたメッセージは重みを持つ。彼らはチームとして「不公平だ」と叫ぶこともできた。VAR判定への不満をぶつけることもできた。最後の1枠を逃した悔しさやアンフェアな運営に怒りとして表現することもできた。

だが、彼らは最後にサッカーの言葉を選んだ。勝者でも敗者でもなく、尊厳を失わないチームとして、ピッチを去ろうとしたのである。

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