鮮烈な表現者であり、戦後日本の芸能史を体現する存在でもあった美輪明宏さん。多くの人の記憶に残る声、言葉、まなざしをしのびながら、過去の発言に込められた人生観を読み返したい。エッセイ集『乙女の教室』(美輪明宏著・集英社文庫)から一部抜粋・再構成してお届けしたい。
〝恋〟と〝愛〟の違い
乙女のみなさまの、人生最大の関心事は、恋愛ではないでしょうか。この〝恋愛〟という言葉、恋と愛とがくっついてひとつの単語になっていますが、実は、恋と愛とはまったく別なものです。
〝恋〟とは、自分勝手に相手を好きになり、一直線に突き進んで、相手にも自分を好きになってもらいたい、相手を独占したいと願う、〝自分本位〟の想い。
〝愛〟とは、相手の幸せのためなら、なんでもしてあげたい、ときには身を引くことさえ厭わない、〝相手本位〟の想い。相手を気遣い、思いやり、包み込むような感情です。
こんなにも違う恋と愛とが入り乱れ、自分本位になったり相手本位になったり、常に揺れ動いている最中が、恋愛なのです。
彼から引き算してごらんなさい
みなさまは恋のお相手を、どうやって選んでいますか?
あなたと彼が長続きするかどうかを、判断する基準があります。それは彼から、セックスとお金を引き算してみること。セックスしなくても、彼にお金なんかなくても、それでも彼が魅力的で、一緒にいたいと思える人ならば、長い間良い関係が保てるでしょう。
セックスとお金は、しばしば、相手を見る目を曇らせてしまうものです。セックスの相性がいくら良くても、しょせんすることは同じ。そのうち飽きてしまいます。お金の魔力も、けして長続きはいたしません。さてさて、今の彼が大好きなあなたに、お付き合いのコツを教えて差し上げましょう。
それは、小出しに少しずつ、ということ。
好きになって、付き合い始めて、燃え上がっている最中は、毎日会いたいし、朝から晩まで一緒にいたいもの。その気持ちはわかりますが、ずっと一緒にいると、あなたの欠点はすぐにばれてしまいますし、相手の短所もすぐにわかってしまいます。
デートは適当に切り上げて、もうちょっとそばにいたいと彼に思わせましょう。そしてすべてをさらけ出さずに、あなたの魅力は、小出しにしていくこと。人間は、ミステリアスな存在にひかれるものなのです。会うたびに少しずつ違う表情を見せて、
「え! この人にはこんな良いところがあったのか」
「この人はこんな素敵なところを隠していたのか」
「こんな経験までしていたのか!」
と、驚かせるのです。びっくりするたびに、彼はあなたに強くひかれます。驚きが大きいほど、あなたの価値も上がります。
文学、映画、演劇などの知識をはじめ、料理、家事、スポーツなどなど、引き出しはいくつあっても、多すぎることはありません。もちろん、お付き合いしながら、ひそかに引き出しを増やしていく努力も必要でしょう。
そしてここが大切です。最後の引き出しまでは、けして開けさせてはいけません。
あなたの魅力がこれで全部、と、わかった瞬間から、相手はあなたへの興味を失い、他の相手を探し始めます。たとえそこに何も入っていなくても、まだまだ開けていない引き出しがあると、相手に思わせること。まだ何か隠している、まだ開けていない引き出しがあると思えば、彼はあなたから目を離せません。
「あなたはまだ、私のすべてを知っているわけではないのよ」と、心の中でつぶやく余裕が、彼にあなたを追わせるのです。
ミステリアスな女には、男は絶対に飽きることがありません。

