読んだと、嘘をついた
カフェで彼女に「最後まで読んだ?」と聞かれたとき、俺は思わず「読んだよ」と答えました。
本当は、最後まで読めていません。読み終えていないと言えば、まだ未練があるように聞こえる気がしました。別れを切り出したのは自分なのに、そんなことを言う資格はないと思ったのです。
彼女が「じゃあ、本を渡す前に半券を抜いておくべきだったね」と言った瞬間、俺は言葉に詰まりました。ページの間に、あの日の展覧会の半券が挟まったままだったのです。
そして...
半券が残っていたということは、彼女にはもう分かっていたはずです。俺が最後まで読んでいないことも、読み終えることができなかった理由も。
それでも彼女は、それ以上何も言いませんでした。ただ本を受け取って、小さく笑っただけでした。
別れを決めたのは俺です。けれど、本当に終わらせる覚悟ができていなかったのも、俺のほうだったのだと思います。
(20代男性・会社員)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)
