食材に紛れていた、一行のメモ
彼が書いたものに間違いありません。私には聞かずに、ひとりで決めようとしている何かがあるのでしょうか。仕事のことか、お金のことか、それとも私たちのこれからか。考えるほど、よくない方へ想像がふくらんでいきます。結局、何も書き足さずにメモを閉じました。
本人には、どうしても聞けなくて
それからの私は、彼の手元ばかり目で追うようになりました。スマホを伏せて置く仕草も、誰かと短く電話して戻ってくる姿も、急に意味を持って見えてきます。ある日、彼は「ちょっと出てくる、すぐ戻る」とだけ言って、上着も羽織らずに出ていきました。戻ってきた彼に、思いきって「最近、何かあった?」と聞いてみます。返ってきたのは「別に、なんもないよ」のひとことで、私は小さくうなずいて話を切り上げました。
