引き止める一言が、出てきませんでした
相手の話をしながら、彼女の相づちが短くなっていくのに気づいていました。コートを取った彼女は、「よかったね。応援してる」と笑いました。本当は違うんだ、と言いかけて、俺は口をつぐみました。彼女はもう伝票を引き寄せていて、ここで引き止めれば同じことを繰り返すだけだと思いました。ずるいのは、ずっと俺のほうでした。
そして...
氷のないグラスには、彼女が一口つけただけの炭酸が残っていました。隣で空になった自分のコーヒーカップだけが、やけにきれいに見えます。新しい恋の相談に来たはずが、俺は昔のままの注文をして、昔のまま彼女を見送りました。区切りは、まだついていませんでした。
(20代男性・会社員)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)
