増えていたベンチの写真
アルバムの一番上に、新しい写真が増えていました。写っていたのは、近所の公園にある古いベンチでした。付き合い始めた頃、よくそこに座って、コンビニで買った飲み物を並べながら何でもない話をしていた場所です。
写真に人は写っていません。ただ、ベンチの端に少しだけ影が落ちていて、彼がそこに立って撮ったのだと分かりました。空のメッセージと、その写真。偶然だと思うには、つながりすぎていました。
「何が言いたいの」と送ろうとして、入力した言葉を消しました。怒りたい気持ちも、聞きたい気持ちもありました。でも、彼が何も言わずに揺さぶってきたように思えて、そのまま返すのは嫌でした。
そして...
私は結局、返信しませんでした。共有アルバムも削除しませんでした。ただ、その写真を何度も開くことはやめました。答えを求めているのか、謝りたいのか、ただ懐かしくなっただけなのか。それは彼が言葉にしない限り、私には分かりません。
あのベンチには、たしかに大切だった時間があります。けれど、何も書かれていないメッセージに、私まで何も言えないまま戻る必要はないと思いました。
アルバムは、もう少しだけ残しておきます。ただ、彼からの空白に私まで空白で返さないこと。それが今の私にできる、最初の区切りなのだと思います。
(20代女性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
