送れなかった言葉
写真を追加したあと、彼女にメッセージを送ろうとしました。「元気?」と入れて、すぐ消しました。「あの場所に来た」と入れて、それも消しました。どの言葉も、今さら自分だけ楽になろうとしているように見えました。
別れる前も、俺は彼女にちゃんと向き合いませんでした。だから今さら懐かしさだけを送るのは違うと思いました。謝るなら、何に対して謝るのかまで言わなければいけない。けれど、それを言葉にする覚悟もまだ足りませんでした。
画面には、何も書かれていない吹き出しだけが残りました。送るつもりはありませんでした。それなのに、触れた場所が悪かったのか、空のまま送信されてしまいました。取り消すこともできたはずなのに、俺はそれすらしませんでした。
そして...
彼女から返信は来ませんでした。来ないことに、どこかで安心している自分もいました。返ってきたら、今度こそ何かを言わなければならないからです。そこまで考えて、俺はまた逃げようとしているのだと分かりました。
共有アルバムに写真を足したことも、空のメッセージを送ったことも、彼女にとっては迷惑だったかもしれません。懐かしさを口実に、終わった時間へ勝手に手を伸ばしただけだったのかもしれません。
それでも、あのベンチで言えなかった後悔だけは残っています。彼女に届いた空白は、間違いではなく、俺が最後まで言葉にできなかった未熟さそのものだったのだと思います。
(20代男性・飲食店勤務)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)
