国際サッカー連盟(FIFA)が自業自得の大揺れだ。W杯決勝トーナメント2回戦(ベルギーVSアメリカ)で、前の試合で退場処分を受けたアメリカ代表フォラリン・バログンの出場停止処分を「1年間猶予する」とした「判定覆し」問題である。
トランプ大統領がFIFAのインファンティノ会長に電話をして、出場停止処分に異議を唱えたことで、まさかの「解除」に。露骨な政治の介入による変更措置で、本来ならば出場できないはずのベルギー戦にバログンが出場したが、1-4で惨敗している。
すると60年ぶりのW杯優勝を目指すイングランド協会が、準々決勝の大一番ベルギー戦(日本時間7月12日午前6時開始)に向けて、メキシコ戦(7月5日)でレッドカードを受けたDFジャレル・クアンサーの出場停止猶予を求める検討に入ったのである。
インファンティノ会長はトランプ大統領からの電話は認めたものの、「FIFAには独立した司法機関がある」とした上で、決定への関与を否定。バログンの出場停止が猶予されることは「発表されるまで知らなかった」と弁明した。この説明を信じる者はどれだけいるのだろうか。
あちこちで波紋を広げている大スキャンダルだが、インファンティノ会長にとっては悔やみきれない「お手付き」になる可能性がある。FIFAでは2027年3月18日に、会長を筆頭とする役員改選があるからだ。
インファンティノ会長は前任者の金銭スキャンダルを糾弾して2016年途中から就任したこともあって、次の任期となる4期目の立候補が可能な立場にある。今年4月のFIFA理事会(カナダ)では既に「私は次回のFIFA会長選に出馬します」と宣言している。
インファンティノ会長はスイス生まれの56歳で、サッカー選手としての経験はいっさいない。日本サッカー協会(JFA)関係者が言う。
「スポーツ法務の専門家として、欧州サッカー連盟(UEFA)の参謀役である事務総長(2009年~1206年)のキャリアで名を馳せました。2016年にFIFA会長に就任。これまで2度(2019、2023年)再選されています」(JFA関係者)
欧州サッカー連盟は「一線を越えた」と反旗を翻した
FIFA会長選の方法は単純明快だ。加盟国211カ国のサッカー協会が1票を持ち、投票する。ここまでのインファンティノ体制はアジア、アフリカ地域の協会が支持してきた。前回W杯開催地のカタールや、次回大会(スペイン、ポルトガル、モロッコの3カ国共催)のさらに次となる2034年サウジアラビア開催の決定に向けて、中東各国の政府首脳と昵懇に。問題のトランプ大統領とは、2018年頃から蜜月関係が続いている。
各国とのパイプ作りは巧妙で、
「トランプ大統領のために新設した『FIFA平和賞』を贈り、このW杯決勝戦ではトロフィー授与者にすると、独断で決めていた」(W杯を取材するサッカーライター)
JFAはインファンティノ会長を支持する代表国のひとつ。インファンティノ会長が全面的に推進してきた女子サッカーが発展しているが、
「JFAの宮本恒靖会長は女子W杯を日本に招致すべく、インファンティノ会長と何度も交渉をする親密な関係です」(前出・JFA関係者)
「FIFAが一線を越えた」とUEFAが反旗を翻すなど、世界ではインファンティノ体制に「異議あり」の声が。3月の役員改選に向けてFIFA理事に立候補することを決めているJFA宮本会長は、トランプ介入騒動にノーリアクション。何をかいわんや、である。
(小田龍司)

