クライマックスシリーズ・ファーストステージで2連敗し、今季の戦いを終えている巨人に、来季への不安を露呈する采配があったとして、物議を醸している。山口寿一オーナーは9月17日のオーナー会議後に「来季も阿部監督でいく」と明言しているが、阿部采配の何が問題だったのか。
それはCS第2戦、延長11回裏。6-5と巨人が1点リードし、あと1人を抑えれば勝利という場面だった。阿部慎之助監督は8番手の田中瑛斗を続投させた。田中は10回を無失点に抑えていたが、11回は二死から3連打を浴び、最後は蝦名達夫にサヨナラ打を許した。
ここで田中の被打率を見てみると、対右2割3分6厘、対左2割7分8厘。11回の先頭打者、牧秀悟と次の山本祐大は右打者で、これをどちらも内野ゴロに斬っている。
ここでDeNAは代打・度会隆輝を打席に送る。DeNAは代打として松尾汐恩(右)をすでに起用済みで、残る打線は左打者が中心。特に度会はシーズンの対左打率1割9分4厘と苦手傾向があり、ここで田中に代えて左投手を投入していれば、抑えていた可能性があった。結果論になるが、短期決戦での継投判断としてはどうだったのか。
さらにベンチ構成の問題も明らかになった。ベテラン長野久義を登録した影響で、巨人はDeNAよりも投手枠が1人少ない布陣となり、延長戦で継投の余力を失った。長野は出場機会のないままシリーズを終え、10月14日に引退の意向が報じられている。これが「思い出起用」「その1枠が命取りに」との評価が出るのは致し方ないところかもしれない。
一方のDeNAは主砲オースティンのほか、宮﨑敏郎、ビシエドといった中軸を欠きながらも、若手が奮起。林蒼汰、度会らが粘り強くつなぎ、蝦名が試合を決めた。相手打線の穴を突けなかった巨人との差が、短期決戦の明暗を分けた格好だ。ファンコミュニティーを見てみると「左を出すだけで勝てた」「西舘を降ろすのが早すぎた」など、侃々諤々。指揮官への疑問が噴出していた。
ファンとの温度差は広がり、データ軽視や継投判断の遅れなど、阿部監督への信頼感は薄まった。野球に「たれ、れば」を持ち出しても仕方がないが、来季は巨人ファンのいっそう厳しい目が、阿部監督の動きに注がれることになる。
(ケン高田)

