レッドブルのマックス・フェルスタッペンがF1シンガポールGPで2位となったことで、ここ数戦でレッドブルが見せていた進歩が、特定のタイプのサーキットに限定されたものではないことが明白となった。
もちろん、次戦のサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)は数多くの中速コーナーがあり、全く異なる挑戦が待ち受けている。まさにローレン・メキーズ代表が「マクラーレンに完敗した」と語ったザントフールトと近いタイプのサーキットだ。
そのためレッドブルの成功はどこでも保証されているわけではないものの、彼らは夏休みの後に確かに何かを見出したようだ。何しろ夏休み後のフェルスタッペンは、2位2回に優勝2回、誰よりも多くのポイントを獲得しているのだ。
重要なのは、その「何か」が実際に何を意味するかだ。マクラーレンのアンドレア・ステラ代表が指摘したように、ひとつの要因はレッドブルがマクラーレンより長くマシン開発を継続していることだ。
レッドブルはモンツァで新フロア、シンガポールで新フロントウイングを導入した。チーフエンジニアのポール・モナハンによれば、これが今季最後の大幅アップグレードとなる見込みだ。対照的にマクラーレンは早い段階で2026年のマシン開発に注力しているが、両チームのアプローチにはそれぞれ合理性がある。
マクラーレンはシーズン前半から大きなアドバンテージを持っていたため、次世代マシンへの開発シフトを極めて早期に決断できた。一方レッドブルは全く異なる状況に直面していた。前代表のクリスチャン・ホーナーが表現したように、チームは長い間「ふたつの異なる時計を見ていた」状態だった。つまりシミュレーションと実際の走行データの相関関係がずれていたのだ。この問題をまず解決しなければ、チームは2026年に盲目状態で突入し、再び誤った方向へ進むリスクがあった。
これらのツールを検証する最善の方法は現行マシンを通じてチェックを行なうことであり、レッドブルがRB21の開発を継続するのは完全に論理的な判断だった。
レッドブルの新たな哲学と、メキーズ代表が担う役割
最近投入されたアップデートは期待通りの成果をもたらした。これはふたつの面で朗報だ。トラック上のパフォーマンスが向上しただけでなく、より重要なのは、レッドブルのツールが徐々に改善されていることを裏付けた点である。
「今年のマシンで検証できたことは極めて重要だ。データ分析手法が正しく、開発プロセスが正しいことを示している」とメキーズ代表は語る。
「これにより来季のマシン開発に向けた冬の期間に確信が持てる」
現行マシンに関しては、フェルスタッペンがシンガポールGPで認めたように、新フロアは効果的だったが、レッドブル復活の「完全な理由ではない」という。
復活の主な要因について問われると、フェルスタッペンは「哲学の違いだ」と答えた。彼は詳細は明かせないとしつつ、ふたつの重要要素をほのめかした。
チームは金曜日に堅実なベースセットアップからスタートし、最初のフリー走行後にセットアップを全面的に見直す必要がなく、微調整のみで済むようになったという。さらに重要なのは、レッドブルがRB21のオペレーションウインドウ(機能する領域)を的確に見極める能力を高めた点だ。たとえそれが狭くとも。
アドバイザーのヘルムート・マルコは新フロアによってウインドウがわずかに拡大したと補足したが、より重要なのはチームが運用面で進歩したことだと強調した。
「我々のエンジニアは経験豊富だし、マックスも今やベテランドライバーだ。以前より彼らを大いに頼っている。もはや数字が示すことを盲目的に従うことはない」
これはレースウィークエンド全体の準備と実行にも当てはまる。イタリアGPではテクニカルディレクターのピエール・ワシェを含む複数のシニアメンバーがダウンフォース増加を提案したが、最終的にはフェルスタッペンの意見が採用されたのだ。
こうした変化には、メキーズ代表が大きく影響している。グランプリ前週の木曜日、彼はフェルスタッペンと約20分間対話し、技術面を含む週末の全選択肢を検討する。チーム代表がエンジニア出身という強力なバックグラウンドを持つ利点だが、メキーズ自身はメディア対応で極めて謙虚な姿勢を崩さない。
「私の貢献度は依然ゼロだ」と彼は語った。
「私はモンツァで話した時と同じ真剣さで言っている。パフォーマンス向上の基本はチーム全員の努力によるもので、マックスからの極めて強力かつ明確なインプットが支えとなっている」
レッドブルのマネジメント上層部はそうした謙虚さを評価しているが、Motorsport.comがメキーズの発言をマルコに伝えたところ、彼は笑いながら言った。
「貢献ゼロ? まったくのでたらめだ!」
マルコ曰く、メキーズは重要な役割を担っているという。フェルスタッペンとのコミュニケーションだけでなく、エンジニアや技術責任者であるワシェ、モナハンとの連携においてもだ。
フェルスタッペン自身も、メキーズの「適切な質問を投げかける」能力を称賛している。レッドブルには今や、技術チームに異議を唱えられる最高責任者が存在するのだ。
RB21には以前からポテンシャルがあったのか?
ではフェルスタッペンが正しいのか? つまりRB21には以前からこのポテンシャルがあったのかという疑問は残る。
これはタラレバの話であり、検証はほぼ不可能だが、フェルスタッペンがシーズン前半に収めた勝利から、いくつかの手がかりは得られる。
日本GPでの勝利は主に予選での好アタックと鈴鹿サーキットの追い抜き難いというコース特性に起因していたが、エミリア・ロマーニャGPでの勝利はより本質を物語るモノだった。
フェルスタッペンはスタート直後のコーナーでオスカー・ピアストリ(マクラーレン)をアウト側から追い抜く見事な走りを披露したが、それ以上に重要なのはその後の展開だった。
彼は純粋なレースペースでマクラーレン勢と互角。ミディアムタイヤでのスティントをピアストリよりも長く維持することに成功した。
次のレースでフェルスタッペンはオランダメディアに対し、なぜ突然調子が上がったのか完全には理解していないと認めたが、これは彼の最近のコメントと完全に一致する。RB21にはポテンシャルがあったが、シーズン前半はチームがその能力を引き出せなかったのだ。
エミリア・ロマーニャGPはレッドブルが絶妙なバランスを掴んだ数少ない例であり、その後数ヵ月にわたる学習の積み重ねを経て、チームはマシンをより深く理解できるようになった。
これは驚くべきことではない。理解の深化は、これまでの失敗経験に基づいているからだ。つまり自然な進化なのである。
Motorsport.comがメキーズに、レッドブルのマシンには以前からポテンシャルがあったというフェルスタッペンの見解に同意するか尋ねたところ、彼は興味深い回答を示した。
「こう言っておこう。ミルトンキーンズでは初戦から現在に至るまで、全員が極めて懸命に働き、そのマシンの潜在能力を引き出す努力を決して諦めてこなかったと思う」
「ここ数週間の進歩は確かに目覚ましく、これもまた、決して諦めなかったファクトリーの全員の功績だ。そして、その鋭い感覚で我々に様々な可能性を探求するよう促し、ついにパフォーマンスを引き出す道筋を見出したマックスの功績でもある」
この慎重な表現には理由がある。ホーナーは去ったが、多くのチームメンバーは残っている。だからこそメキーズは、最初からポテンシャルがマシンに秘められていたという主張に直接同意することを巧妙に避けたのだ。
まずチームの努力を称賛することで、シーズン序盤から在籍していたメンバーへの批判を回避しつつ、「新たな道」について語る際にフェルスタッペンの理論を微妙に裏付けたのである。
最後に、メキーズはチーム内の焦点は未来に向けられるべきであり、過去を振り返る意味はないと強調した。
「万能薬など存在しない。アップデートは順調に進み、マシンを走らせる様々な方法も試されてきた」
「総合的に見て、ほとんどのサーキットで競争力のあるパッケージを構築できているようだ。しかし、年初に実施したアップグレードの段階でどこまで到達できたか、と振り返るのは非常に難しい。我々は過去ではなく未来を見ている」

