
約束をすっぽかす。
思ったことをすぐ口に出す。
突然、予定にない行動を始める。
こうした人、みなさんの身近にいるでしょうか?
これらの行動は周囲を振り回し、ときに強い苛立ちを生みます。
しかし不思議なことに、その人が放つ自由さや勢いに、なぜか惹きつけられてしまうこともあります。
実は心理学では、このような傾向が一つの性格特性として認知されており、それを「脱抑制(disinhibition)」と呼んでいます。
脱抑制は、ひとことで言うと、衝動的にでリスクを取りやすく、計画や目標を最後までやり遂げにくい性格特性のこと。
今回は、人を困らせるのに、同時に強い魅力にもなりうる「脱抑制」という性格特性について見ていきます。
目次
- 「脱抑制」に当てはまるタイプはこんな人
- 脱抑制の高い人が「魅力的に見える」理由
- 脱抑制をコントロールする方法とは?
「脱抑制」に当てはまるタイプはこんな人
心理学で、人の性格は主に、5つの基本型をとって「ビッグファイブ」として理解されています。
具体的には、以下の5つです。

その中で、今回のテーマと深く関わるのが「誠実性」です。
誠実性が高い人は、計画性が高く、約束を守り、締め切りを意識し、物事をコツコツ進める傾向があります。
学校の成績、仕事の生産性、健康管理など、多くの場面でプラスに働きやすい特性です。
一方の「脱抑制」は、この誠実性の反対側に位置する特性として捉えられます。
脱抑制が高い人は、思いつきで行動しやすく、考える前に口に出しやすく、予定や計画から外れやすい傾向があります。
友人との約束を忘れる。
返信をしないまま予定を流してしまう。
会話中に、相手を傷つける言葉をぽろっと言ってしまう。
本人に悪気がなくても、周囲から見ると「無責任」「気まぐれ」「信用できない」と見えてしまうことがあります。
ただし重要なのは、脱抑制が高いことと、道徳的に悪いことは同じではないという点です。
風邪をひきやすい人が、免疫の働きの違いによって体調を崩しやすいように、脱抑制が高い人は、衝動を止めたり、計画を維持したりすることが苦手な傾向を持っています。
もちろん、だからといって周囲に迷惑をかけてよいわけではありません。
しかし、それを単純に「怠けている」「わざと人を困らせている」と決めつけると、この特性の本質を見誤ってしまうのです。
なお、ここで扱う脱抑制は主に性格特性としてのものです。
一方で、脱抑制は双極性障害、注意欠如・多動症、認知症など、一部の心身の状態や神経疾患に関連して症状として現れる場合もあります。
そのため、日常的な性格傾向と医学的な症状は、混同しすぎないよう注意が必要です。
脱抑制の高い人が「魅力的に見える」理由
こう見ると、脱抑制は困った特性のように思えるかもしれません。
しかし実は、この特性にはプラスの面もあります。
それは、行動の速さ、大胆さ、自由さ、そして「今を生きる力」です。
脱抑制が高い人は、深く考えすぎずに動けることがあります。
多くの人がメリットとデメリットを考え続けて動けないとき、彼らはあっさり決断することがあります。
慎重な人にとっては危なっかしく見える一方で、その勢いが場を前に進めることもあります。
また、脱抑制が高い人は、自発的で気ままな魅力を持つことがあります。
たとえば、どんよりして退屈な休日に突然電話をかけてきて、「今から遊びに行こう」と誘ってくるような人です。
予定通りに動くのは苦手でも、思いがけない経験へ連れ出してくれる人です。
頭で考えすぎる人に対して、「もっと心で動いてもいいのではないか」と思わせてくれる人です。
これは、周囲にとって刺激になります。
計画性や几帳面さは安心を与えますが、脱抑制のある人の自由さは、別の種類の魅力を放ちます。
その人といると、日常の空気が少し変わる。
予定調和ではない出来事が起こる。
自分だけでは選ばなかった行動を試してみたくなる。
そのため、脱抑制の高い人は、苛立たしいのに、なぜか強く印象に残る存在になることがあります。
さらに脱抑制は、創造性、大胆さ、深い感情表現につながる場合もあります。
抑制が弱いからこそ、型にはまらない発想が出やすい。
慎重になりすぎないからこそ、新しい挑戦に踏み出せる。
感情を抑え込みすぎないからこそ、率直で強い表現ができる。
もちろん、これは脱抑制が常によい結果を生むという意味ではありません。
衝動的な行動は、人間関係を壊すこともあります。
無計画な決断は、金銭的な損失や健康上の問題につながることもあります。
相手を傷つける発言をしてしまえば、後から謝っても完全には戻らないこともあります。
それでも、脱抑制を単なる欠点として片づけることはできません。
それは人を危うい方向へ導く一方で、人を大胆にし、自由にし、ときに強い魅力を与える両刃の剣なのです。

