カラーのスペシャリストが考える白と黒

勝:皆さん“白や黒なら間違いない”と思っていらっしゃるんですが、実はそこが一番失敗しやすいところなんですよ。
ーー:白や黒は万能ではない?
勝:私たち日本人が普段「白」と思っているのは、真っ白ではなくて少し黄みがかったり、アイボリーっぽいものが多いんです。
だから、真っ白を合わせると逆に浮いてしまうことがあるんです。
黒も同じで、素材や色味によって印象が大きく変わります。
ーー:なるほど、私たちが“白”“黒”とひとくくりにしているのは思い込みだったんですね。
勝:はい。そして色だけでなく、素材感も大きなポイントです。
たとえば、フォーマルな深いグリーンのスーツに真っ白のインナーを合わせると「なんか違うな」と感じてしまうことがある。
でも、そこに少し光沢感を持たせた素材を使えば自然に馴染みます。
逆にナイロンのようにテカテカした質感だと、浮いてしまうんです。
なので、このキャミソールはシルバーよりのカラーなんです。
ーー:色と素材、両方のバランスで全体の印象が決まるんですね。
勝: そうなんです。私はテーラーとして日々スーツを仕立てながら、夜は学校に通い、色彩学やパーソナルカラーを学んで資格も取得しました。
仕事が終わってから机に向かうのは大変でしたけど、「お客様に似合う一着を届けたい」という思いがあったから続けられました。
服の色は必ず顔に反射します。
現場で感じてきたことを、理論として裏付けたかったんです。
ーー:「なんか違う」を説明できるようになったわけですね。
勝:そうなんです。スーツそのものは素敵なのに、インナーの色や素材感で損をしている方が多いんです。
私にはそれがすごくもったいなくて。
だからこそ「この1枚なら大丈夫」と思っていただけるインナーをつくろうと思いました。

ーー:それで生まれたのが、キャミソールやブラウスのラインナップ。
勝:はい。たとえばレースブラウスはシャツ型にして、スーツにもデニムにも合わせられるようにしました。
カーディガンも、首元が詰まったデザインが苦手な方でも着やすいように、抜け感を工夫しています。
ひとつひとつに「実際のお客様の声」を反映しているんです。
ーー:ただのおしゃれアイテムではなく、「実際に困っている人の解決策」なんですね。
勝:私はスーツを通して「人の可能性を広げたい」と思っているんです。
そのために必要なのはデザイン性だけでなく、「その人が自信を持てる1枚」。
スーツ1着でも、インナーを変えるだけで印象は全く変わります。
それを知ったら、もっと自分を楽しめると思うんです。
ーー:読者の方にとっても「白や黒は万能」という思い込みを外すきっかけになりそうです。
最後に、インナー選びで悩んでいる方へメッセージをお願いします。
勝: 「とりあえず白や黒でいいや」ではなく、「どんな白か」「どんな黒か」「どんな素材か」を意識してみてください。
そうするだけで、スーツも自分自身ももっと輝きます。
インナーは単なる脇役ではなく、自分を引き立てる大事な存在。
ぜひ、自分にとって本当に本当に合う1枚を見つけてほしいです。
撮影/Re.muse 銀座店 (photo by 幡野美紀 from Cinderella Fit)
〒104-0061 東京都中央区銀座3丁目2−11 GINZA SALONE 11F
勝友美様のご経歴

勝友美(かつ・ともみ)
株式会社muse代表取締役
兵庫県宝塚市出身。アパレルメーカーにて販売員を務め、入社初日にトップセールスとなる。その後、スタイリストとして海外ポータルサイトの新規事業立ち上げに参画したのち、オーダースーツ業界へ転身。最高峰の技術を習得し、2013年に『Re.muse』を創業。
2018年より、テーラー業界では日本初となるミラノ・コレクションへの3度の出展を果たす。2023年に世界最高峰のファッションショー、パリ・コレクションへ出展し、ミラノに続き、業界初の快挙を遂げる。Re.muse のスーツは着る人を自信で包む”ヴィクトリースーツ”と呼ばれ幅広い世代からの人気を博している。
また、市場がない中でレディーススーツのマーケットを独自で切り開き牽引する存在であり、女性活躍の発展にも貢献している。
2024年には『Re.museBEAUTY』を立ち上げ、化粧品業界への参入を果たす。女性起業家として業界の枠を越え多くのメディアに出演すると共に、自身の経験を基にYouTubeなどを通じ精力的に配信を行っている。SNS総フォロワー88万人(2024年10月時点)
■著書 (最新順)
・貫く力(出版社:KADOKAWA)
・人は自分に嘘をつく(出版社:KADOKAWA)
・営業は「バカ正直」になればすべてうまくいく(出版社:SBクリエイティブ)
