
ウランは、人体や環境に悪影響を及ぼす有害な重金属です。
しかも、水に溶ける化学状態になると、地下水とともに移動し、もともとの汚染源から離れた場所へ広がる恐れがあります。
そのため、ウランで汚染された鉱山跡地や地下水では、ウランをどうやってその場に封じ込めるかが大きな課題となっています。
しかし最新研究で、鉱山の水にすむ細菌群集が、水に溶けたウランを移動しにくい固体へ変える働きを持つことが明らかになりました。
今後の研究次第では、汚染水中を移動するウランをその場に封じ込め、地下水への拡散を抑える新たな方法につながるかもしれません。
では、細菌はどうやってウランを「固体化」させたのでしょうか?
研究の詳細は、独ヘルムホルツ・ドレスデン・ロッセンドルフ研究センター(HZDR)により、2026年5月4日付で科学雑誌『Nature Communications』に掲載されています。
目次
- ウランを「水に溶けにくい」状態に変える
- 細菌パワーで、水に溶けたウランが96%減少
- 「一瞬しか存在しない」はずの5価ウランが安定していた
ウランを「水に溶けにくい」状態に変える
ウランは、周囲の酸素量や水質によって、異なる化学状態に変化します。
汚染水の中では、おもに「6価ウラン」と呼ばれる高い溶解性の状態で存在します。
6価ウランは水に溶けやすいため、地下水とともに移動しやすいという問題があります。
一方、電子を受け取って「4価ウラン」になると、水に溶けにくい鉱物を形成し、その場にとどまりやすくなります。
そのため、微生物の力で6価ウランを4価ウランへ変え、汚染地域から動かないようにする方法が研究されてきました。
これはウランそのものを消す方法ではありません。
水に溶けて移動できる状態から、固体として移動しにくい状態へ変えることで、汚染の拡大を防ぐという考え方です。

研究チームは今回、ドイツ東部のエルツ山地にあるシュレーマ=アルベローダ鉱山の坑内水を使用しました。
この鉱山は1990年まで世界有数のウラン採掘地でしたが、閉山後に地下坑道が水で満たされ、現在も坑内水の処理が必要になっています。
採取した水には、鉱山の地下環境に適応した天然の細菌群集が、最初から含まれていました。
チームは、この鉱山水に「グリセロール」という細菌の栄養源を加え、酸素のない暗所で130日間培養。
グリセロールは植物や動物の脂肪に含まれる成分であり、一部の細菌にとって炭素源やエネルギー源になります。
つまり、もともと坑内水にいた細菌たちに「エサ」を与え、その活動を活発にしたのです。
なお、今回新種の細菌が発見されたわけではありません。
鉱山の水に生息する複数の細菌が協力することで、ウランを固定する働きが生じると示された研究です。
細菌パワーで、水に溶けたウランが96%減少
実験開始時、坑内水には1リットルあたり約1ミリグラムの6価ウランが溶けていました。
ところがグリセロールを加えて細菌を活性化すると、130日後には0.04ミリグラムまで低下しました。
水中の6価ウランが、約96%も減少したことになります。
一方、グリセロールを加えなかった試料での減少は約25%、細菌を死滅させてからグリセロールを加えた試料では約36%でした。
対照実験でもウランが多少減っているのは、容器の表面や水中の鉱物粒子などに吸着したためと考えられます。
しかし、生きた細菌とグリセロールを組み合わせた試料で最も大きく減少したことから、細菌群集の活動がウランの固定を強く促したと判断できます。
実験を進めると、水中には黒い沈殿物が現れました。
電子顕微鏡で調べたところ、細菌の表面にはウランを含む、ごく小さな粒子が集まっていました。
【こちらが、細菌の表面に形成されたウランの微小粒子の画像】
その大きさは、おもに直径2~3ナノメートルです。
1ナノメートルは100万分の1ミリメートルなので、肉眼では到底見えない小ささです。
分析の結果、4価ウランは「ウラニナイト」と呼ばれる鉱物のナノ粒子になっていました。
さらに、ウランが鉄や酸素と結びついた「FeU(V)O₄」という別のナノ粒子も形成されていました。
つまり、細菌はウランを食べて消してしまったのではなく、化学状態を変化させ、細胞表面や沈殿物の中に固定していたのです。

