
俳優の渋谷凪咲が主演を務めるホラー映画「あのコはだぁれ?」が、10月よりLeminoで配信開始した。同作は大ヒットした「呪怨」シリーズを手掛け、ハリウッドリメイク版として世界で公開された「THE JUON/呪怨」が日本人監督として全米興行収入1位になるなど、“Jホラー”を牽引する清水崇が監督を務め、2024年7月に劇場公開された。2025年はほぼ毎クール連続ドラマに出演し、幅広い役を体現する渋谷。元NMB48メンバーで、アイドル界屈指の“大喜利モンスター”から実力派俳優へ転身を遂げた彼女のキャリアに迫る。
■NMB48の“バラエティークイーン”として活躍
渋谷は1996年8月25日生まれ、大阪府出身の29歳。2012年に大阪・難波を拠点とするアイドルグループ・NMB48に4期生として加入し、2023年12月に卒業するまで約11年間在籍。「夢中人」でセンターを務め、卒業シングルとなった28枚目のシングル「渚サイコー!」でもセンターを務めたほか、途中AKB48と兼任したり、派生ユニット・てんとうむChu!やQueentetにも所属したり、幅広く活動した。
大阪出身らしくお笑いが大好きで、ダイアンを「お笑いの完全体」とリスペクト。他にもかまいたちや見取り図など、バラエティー番組でお笑いコンビとの仕事も多く、冠番組「〜凪咲と芸人〜マッチング」「凪咲とザコシ」(いずれもテレビ朝日)を担当したことも。
渋谷自身、大喜利のセンスに長けていてバラエティー番組に多数出演。自身のYouTubeチャンネル「なぎちゃんネル」で“24時間大喜利”にチャレンジしたり、YouTubeチャンネル「佐久間宣行のNOBROCK TV」の企画「【恐怖】NMB48渋谷凪咲が裏ではお笑いにストイックすぎて、後輩にも面白いお笑いを強要する大喜利モンスターだったら?」に出演して大バズりした経験もある。
現在までに615万回以上再生されている同企画では、見事な大喜利の回答が話題となったが、同時に渋谷の演技力の高さも多くの人の目を引いた。グループの後輩・坂田心咲に大喜利を強要したり、ダメ出しをする姿(演技)が真に迫り過ぎていて、共演した他グループのアイドルが渋谷に恐怖を感じたり、渋谷と仕掛け人を一緒に務めた坂田が本当にダメ出しをされたかのように涙してしまう場面もあったり、普段のニコニコした顔とは全然違う“憑依型”とも言える演技が際立っていた。
演技に関しては、グループに在籍していた2018年に公開された映画「海辺の週刊大衆」に出演。お笑いコンビ・ピースの又吉直樹が主演で、無人島に取り残された男が砂浜にあった週刊誌1冊と共に救助を待つという、何も起きないサバイバル映画。磯山さやか、矢本悠馬、鈴木福らが出演し、渋谷はヒロインのユキ役で登場。シュールな作品でもしっかりとその世界に溶け込んでいた。
他に、2023年4月期に放送されたドラマ「だが、情熱はある」(日本テレビ系)にも出演。オードリー・若林正恭と南海キャンディーズ・山里亮太の半生を描いた作品で、King & Princeの高橋海人(『高』はハシゴダカが正式表記)とSixTONESの森本慎太郎がW主演を務め、山里が好きになる女性・丸山花鈴を渋谷が演じた。すごく自然体で演じていて、渋谷の俳優としての才能の片鱗が垣間見えた。
■NMB48を卒業…演技の仕事をメインに
本格的に演技に取り組み始めたのは、グループ卒業してから。NMB48劇場で卒業発表した際に、演技の仕事をしたいという思いを伝えたこともあって、卒業後は俳優業をメインに活動を行っている。
以前から片鱗を見せていた演技の才能をしっかりと見せてくれたのが、2024年7月に劇場公開された映画「あのコはだぁれ?」だった。映画初主演となるこの作品で、渋谷は中学校の臨時教師・君島ほのかを演じた。夏休みの補習クラスを担当することになったほのかだったが、1人の女子生徒が突然屋上から飛び降りて謎の死を遂げてしまう。教室にいるはずのない生徒“あのコ”の存在が教室で不気味な影を落とす…。
この中学に来る直前、ほのかの目の前で恋人が車にはねられる事故が起こるなど、身の周りでよからぬことが立て続けに起こっており、不可解な謎に巻き込まれてしまう被害者でありながら、生徒たちを守る教師としての立場もある、という難しい役どころを巧みに演じた。映画初主演となる本作で、「第48回日本アカデミー賞」の新人俳優賞を受賞している。
主演作での評価の高さもあり、この1年連続ドラマに引っ張りだこ。2024年10月期の「離婚弁護士 スパイダー」(日本テレビほか)には潜入捜査が得意なフリーランスの調査員・伊原麻衣香役で出演。普段はぶっきらぼうに関西弁を話すが、変装して潜入するときはそのキャラクターになりきるという役なので、毎回違った変装とキャラクターを表現し、俳優としての才能を遺憾なく発揮した。同作は深夜枠ながら人気を博し、2025年にシーズン2、シーズン3も放送・配信された。
さらに、2025年1月期の小野花梨主演の「私の知らない私」(日本テレビ系)では主人公・羽田芽衣の高校時代からの友人・中谷莉奈役。SNSの裏アカでは誰からも愛される理想の自分を演じていたり、やや表と裏のギャップもある役だった。同じく2025年1月期には「地獄の果てまで連れていく」(TBS)で主人公・橘紗智子(佐々木希)の後輩で、因縁の相手・花井麗奈を演じた。一見するとニコニコしていて、かれんで上品な女性ながら、人の命を何とも思っていない残忍なサイコパスを演じ、視聴者に強烈な印象を与えた。
7月期にはなにわ男子・大橋和也主演の「リベンジ・スパイ」(テレビ朝日系)に社長令嬢であり、広報部員として父の会社で働く藺牟田花役で出演。コンビニおにぎりの包装紙の開け方が分からないなど、やや箱入り娘なところがあり、体も弱いのだが、自分の意志をしっかり持つキャラクターを体現。2025年に演じた他の役とは全く違う魅力を放ち、演技の振り幅を見せつけた。
そして10月12日にスタートしたドラマ「ぼくたちん家」(日本テレビ系)にも出演。及川光博が演じる主人公・波多野玄一の恋を見守る、パートナー相談所のカウンセラー・百瀬まどか役ということで、今回はどんなキャラを演じてくれるのか楽しみだ。
NMB48卒業後、俳優として躍進を続ける渋谷。その活躍の“起点”となり、俳優としての才能をしっかりと示した「あのコはだぁれ?」で、彼女の“サイコー!”な演技を再確認してみるのも良さそうだ。
◆文=田中隆信

