10月13日にミック・シューマッハーがインディアナポリス・モータースピードウェイのロードコースでインディカーのテストに参加。2026年シーズンの参戦の可能性を感じさせた。
シュマッハーはレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングの75号車に乗り込み、インディカーを初体験。テスト後には笑みを浮かべていた。
今回のテストでシュマッハーは非公式ながら、インディNXT王者のデニス・ハウガー(デイル・コイン・レーシング)、そしてアレクサンダー・ロッシ(エド・カーペンター)に次ぐ3番手のタイムを記録している。
「シングルシーターというところに惹かれるんだと思う」
F1、そしてWECに参戦してきたシュマッハーは、インディカーを初めてテストすることになった理由を問われるとそう答えた。
「オープンホイールが好きなんだ。これは僕の父(ミハエル・シューマッハー)がよく言っていたことなんだけど『シューマッハーはホイールが見えていると大体速い』というのがあって、僕はその言葉が好きなんだ。そして、年間17戦もレースをすることも魅力的だと思う」
■インディカーの雰囲気、気に入った?
シューマッハーのテストは前週の金曜日にホンダのシミュレータセッションを皮切りに、その後はRLLの本拠地訪問も実施するなど、綿密に計画されたプロセスで進められた。
「チームの雰囲気は最高だった。まるで家族経営のような温かさがあって、みんな本当にモータースポーツを愛していることが伝わってきた」とシューマッハーは語る。
「ワークショップに足を踏み入れた瞬間から感じたんだ。みんながレースに興奮していて、クルマを試してもらってフィードバックをもらい、さらに良くしていこうという情熱にあふれていた」
一方で、キャリアの全てをヨーロッパで過ごしてきたシューマッハーにとっては、アメリカンモータースポーツならではの“言葉の壁”もあったようだ。
「たとえば『ニュータイヤ』は、こっちでは“ステッカー”(新品タイヤに貼られたステッカーが由来)って呼ぶんだ。最初にそう言われたとき、『ステッカーって何?』って思ったよ」
シューマッハーは笑いながらそう語った。
「単位だって違う。当然だけど、フィートとかヤードで話すんだ。PSI(圧力の単位)はF1でも使っていたけど、ポンドなんて初めてだった。いろいろと違いはあるけど、新しい単位系を知るのは良い経験だよ」
■F1とインディカーの違い
シューマッハーはインディカーのマシンを走らせて得た経験から、これまで走らせてきたマシンとの違いについても訊かれた。
彼は、インディカーについて「F2マシンにかなり似ている……ステアリングは少し重いかもね」と語っていて、F1マシンとの比較についてはさらにこう続けた。
「ちょっと聞こえは悪いかもしれないけど……古き良きという感じが少しある。インディカーはよりラフな感じで、F1はもっと細かく調整されている。エアロパーツがより重要かつ必要不可欠なんだ。(F1は)小さなパーツが少しでもズレてしまうと、マシン全体に影響を及ぼしてくる」
「インディカーはスペックシリーズで、かなりコストを抑える仕組みになっている。アプローチが違うんだ。F1では資金があれば、どんどん開発ができる」
「手順も少し違う。F1は“臨床的”と言えるほど精密で体系的だけど、インディカーはもっとラフで、より地に足をつけている。実際、スキッドプレートがないというのはかなり興味深かった。モノコック自体が(路面に対する車体の)限界なんだ。そのものを壊さないかぎり大丈夫、という感じでね。興味深い違いがある」
「インディカーからF1に持ち込めるものはあるし、その逆でF1に持ち込んで改善できるモノもあると思う」
■シューマッハーはインディカーに参戦するのか?
今最も大きな注目は、テストに参加したシューマッハーが2026年にインディカーへフル参戦するかどうかだ。その点についても当然シューマッハーは尋ねられた。
「今はまだ整理している最中で、もう少し時間をかけて考えたい。今日の走行は本当に楽しかったけど、じっくり分析して判断したい」とシューマッハーは言う。
「2026年に何をするかは全然オープンな状態だと思う。いろんな選択肢があるけど、インディカーもそのひとつだ。だからこそ今回、実際にどんな世界なのかを確かめたかったんだ。そうすることで考えをまとめられるとね」
ひとつ明確なのは、シューマッハーは2026年にWECかインディカーか、どこを主戦場にするにしても、ひとつのプログラムに注力するつもりだということだ。
「どんなシリーズに参戦するにしても、100%の力を注ぎたい。二足のわらじを履くつもりはない。両立すればエネルギーも分散するし、集中力も落ちる。だからやるならどちらか一方に全力を注ぐつもりだ」
そして決断の時期や、インディカーのオーバルコースについては、次のように語った。
「もちろん、自分の将来について決めたいと思っているし、そう遠くないうちに決断すると思う。オーバルテストをする前か後かは、わからないけどね」
オーバルコースでのレースは、インディカー参戦を考えるヨーロッパからやってきたドライバーにとって、決断の大きな要素になることも多い。シューマッハーはオーバルコースに対しては「怖がる理由は今のところない」と語っている。
「もちろん安全性は最優先事項だし、インディカーも改善を重ねて安全性を高めていて、今後もそこは続いていくはずだ」
「ただスピードが速い以上、限界はある。もちろん必要な対策はすべて取られていると思うよ。まだオーバルは走っていないからそれ以上のことは言えないけど、怖がる理由は今のところない」
そしてシューマッハーは、インディカーの世界に惹かれた理由について、こうも語った。
「インディカーで働いているひとが言った言葉で、僕の心に一番残ったものがあって、『チームにとって、あるいは意思決定で最も重要なのは、結局のところドライバーだ』ってね。インディカーはドライバーに大きな責任があるという考え方は僕にとって興味深いものだったし、やってみる魅力を感じさせたんだ」

