「Intel入ってる」
かつて安心の代名詞だったそのキャッチコピーが今、ユーザーの不信を招いている。
米インテルが、第11~14世代CPUに搭載される内蔵GPU(グラフィックス機能)のドライバー更新を、2025年9月で「レガシーサポート」へ移行すると発表していることによるものだ。対象はデスクトップ、ノートの両方。第14世代はまだ店頭で現行モデルとして流通しており、ユーザーからは「最新機種がもう型落ち扱い?」と不満が噴出している。
これまで毎月出ていたドライバー更新は、今後は四半期に1回、主にセキュリティー修正のみに縮小される。アプリ互換や性能最適化の更新は打ち切られ、発売日に合わせた「Day 0ゲームサポート」も終了。その結果、新作ゲームや動画編集ソフトで不具合が出ても即時パッチは期待しにくく、次の定期更新まで待つことになる。
影響が大きいのは専用GPUを持たず内蔵グラフィックスを使用する一般ユーザーで、映像出力の不安定化やマルチモニター周りの不具合が懸念される。一方、独立GPU(ゲーミングPC等)を積むモデルは、各GPUメーカーの更新が別途提供されるため、影響は比較的、限定的だ。
こうしたものの背景には、経営の苦境がある。製造技術でライバルのTSMCに後れを取り、独自GPU「Arc」初期はドライバーの未成熟が指摘されるなど、商業面でも苦戦。人員削減が進み、2022年に約13万人だった従業員は、2025年末にはおよそ7万5000人と、4割以上の削減規模に達する見通しだ。開発リソースが逼迫する中、細かなサポート維持が難しくなった事情がうかがえる。
ユーザーの反応は割れている。「もうAMDに乗り換える」「『インテル入ってる』のステッカー外した」と失望する声は多いが、「再建のためにはやむなし」「GPU開発に注力すべき」と理解を示す意見もわずかに見られる。ただ、共通するのは「裏切られた」という思いだ。性能競争で拮抗する現在、差を生むのはもはや速度より「誠実さ」かもしれない。
かつて半導体の代名詞だったインテルは今、信頼を取り戻す最中にある。痛みの先に再び「Intel Inside」を誇れる日が来るのだろうか。
(ケン高田)

