本作は心理カウンセラーの主人公、平瀬小春が妹の菜々美と共に抗えない恐怖の連鎖へと引きずり込まれていく姿を描いた学園ホラー。主演を務めるのは、アイドルグループ「FRUITS ZIPPER」のメンバーとして第76回NHK紅白歌合戦への出場を果たし、ファッション誌「ViVi」の専属モデルを務めるなど、多方面で活躍中の鎮西寿々歌。本作が映画単独初主演にしてホラー初挑戦となる。MOVIE WALKER PRESSでは、今年の3月に都内のスタジオで行われた本作の撮影現場に潜入。清水監督と鎮西のインタビューと併せて、撮影時の模様をお届けする。
■いるだけで周りを明るくする、鎮西の存在感

本作の舞台となったのは、夏休み前、 “絶対にやってはいけない”遊びが噂になっているとある高校。「誰もいない階段の13段目でカセットテープに日付と名前を吹き込むと、名前を吹き込まれた人は死ぬ」というその遊びを実行した学生たちの日常は歪み始め、とある事件が発生する。事態を重く見た学校は、心理カウンセラーの平瀬小春(鎮西)に学生たちのメンタルケアを依頼。小春が学生たちへのカウンセリングを行っていくうちに、怪異へと巻き込まれていくさまが描かれる。
この日撮影されていたのは、小春が妹の菜々美(星乃あんな)の居場所を探すなかで、不気味な存在による恐怖に襲われるシーン。外は桜が舞い散るうららかな陽気のなか、スタジオ内は薄暗くしんと静まり返り、いまにも“なにか”が出そうな空気に包まれていた。深呼吸のタイミングまで、清水監督からの細かな指示を受けながら、真剣な表情でリハーサルに臨んでいたのは座長を務める鎮西。ホラー初挑戦となる鎮西を主演に抜擢した背景について、清水監督はこう振り返る。

「昔から、ホラーのイメージがあまりない方やホラー作品への出演経験がない方をホラーに振るほうが僕自身も楽しいし、それに乗っかってくれれば本人も楽しんでくれるパターンが多いんです。鎮西さんはいるだけで周りを明るくするオーラというか、存在感を持っているのが本当にすごいです。いろんな女優さんやアーティストさんたちと接してきましたが、鎮西さんはポジティブなオーラが強いので、どうやって打ち消してやろうかなと(笑)。『FRUIT ZIPPER』としての鎮西さんのファンの方も『こんなおすず見たことない!』みたいな状態に持っていけたらなと思っています」。
■世代を問わず、日常の延長線上にあるホラーを
本番がはじまると、恐怖に襲われ恐れおののく小春の姿を、現場にいる全員が固唾をのんで見守る。人間が恐ろしいものと遭遇した時のリアルな心情や行動を何度も検討しながら、役者と向き合っていく清水監督。そんな監督の意図を丁寧にくみ取りながら撮影に臨む鎮西は、ホラーシーンの撮影について次のように明かす。

「実は私はホラーがあまり得意なほうではないんです。でも、作る側に回ってみると『観に来てくれた方に怖がってほしい』という“いたずら心”が芽生えたというか、清水監督が仰っていた『ホラーで人を楽しませたい』という感覚に、私の気持ちもすごくリンクするようになってきました。撮影中、私自身もめちゃくちゃ怖かったです。ホラーの演出が私の目の前で起こった時は、本当に怖くて声が出なくなったりとかして。そういうシーンがどんどん続くので、何度も絶叫できる作品になっていると思います」。

カットがかかると、撮影の合間のスタジオ内には笑い声が響き渡るように。フレッシュなキャスト陣が集った和やかな雰囲気の現場は、まるで本物の学校のように見える瞬間もあった。今作の舞台は学校だが、そこに込めた意図について清水監督はこう語る。
「どの作品もそうなのですが、年齢や性別を問わず、観るお客さんにとっての“日常的な空間”や誰もが接する“文化の延長”にホラーの入り口を作りたいと思っています。今回は学校がメインの舞台になるということで、いまの高校生たちを中心に、上の世代の人にも『学生の時、こういうのが流行ったよな』というところから入ってもらえたらと。僕が学生の頃には“こっくりさん”が流行っていて、学校で禁止されたりとか、そういうことがありました。そんなふうに誰しも日常にはびこっている、どこまで噂なのか本当なのかわからないようなところに入り口を作ろうと思いました」。

■鎮西と清水監督にはまさかの共通点が…!?
小春が菜々美の姿を見つけ、菜々美を追う緊迫のシーンでは、静かなスタジオに鎮西の切実な悲鳴が響き渡る。「菜々美!」と声を張り上げ、カットがかかったあとにも息を切らし続ける鎮西の姿からは、妹のことを思う優しい姉の心情がひりひりと伝わってきた。そんな鎮西に対し、清水監督はどのようなイメージを抱いていたのか。

「アイドルをやっていることもあり、(鎮西に対して)可愛らしいイメージを持っている人が多いなかで、最初は20代後半の女性を演じてもらうことへの不安や心配もありました。鎮西さん演じる小春の役柄として、しっかりせざるを得なくなる感じを出したいと思っていたのですが、(すでに撮影を終えた)妹とふたりきりのシーンでは見事に演じてくれました。彼女は子役の頃に『天才てれびくん』シリーズのてれび戦士をやっていたと聞いたんですが、実は僕も『天才てれびくん』のミニドラマの助監督や監督をしたことがあるんですよ。時代的にはちょっとズレがあり、ウエンツ瑛士くんや大沢あかねさんがいた頃だったので、てれび戦士時代の彼女には会ったことないんですけど。あそこで育ってきた子たちはしっかりしていて、自分がどう動けばいいか、ポジショニングや立ち回りに長けている子が多いのでそこは安心していました」。
■生徒役を演じるフレッシュで実力派な俳優陣
本作には次世代を担うみずみずしいキャストが集結し、鎮西の脇を固めている。小春の妹、菜々美役にはティーン向けファッション誌「ニコラ」の専属モデルを今年の3月まで務め、『ゴールド・ボーイ』(24)や『この夏の星を見る』(25)にも出演している星乃あんな。菜々美を気にかける同級生の丈太郎役には、幼少期から子役として活躍する、『キングダム』(19)や『るろうに剣心 最終章 The Final』(21)、『水は海に向かって流れる』(23)の大西利空。この日、ふたりは “ホラー”らしいシーンの撮影に臨んでいた。星乃と大西の印象を、清水監督はこう語る。

「星乃さんも大西くんもオーディションで選んだんです。星乃さんに関しては実は僕が別の作品を観た時から惚れ込んでいて、『この子天才かも』と思っていたので、ぜひオーディションに参加してほしいとお願いしていました。オーディションの時には、ほかの同級生役も含めて役柄を変えながら演じてもらい、『やっぱり星乃さんは菜々美役がいいな』と思い、決めました。いま一緒にやっていても、セリフがなくても佇まいひとつで『天性の役者だな』と思わされることがあって、彼女と鎮西さんが姉妹っていうのもバランスとしてよかったと思います」。

「大西くんは、女子ばかりの登場人物のなかでメインの男の子の役がひとりだから、どういうタイプにするか悩みました。ただスマートでかっこいい二枚目じゃちょっとおもしろみにかけるので、少し抜けているところがあって、女子からツッコまれているような愛されキャラの部分も欲しいな、というなかで、大西くんが一番はまっていたんですね。彼のいい意味で軽薄で、計算高く、賢いところとか、そういうバランスが丈太郎という役には欲しかったしちょうどいい。彼でよかったなと思っています」。
■あえて「怖さ」を強調しない、清水監督ならではの演出

菜々美と共に“遊び”を実行する同級生たちにもフレッシュな面々が顔をそろえている。西野マキ役には、ABEMA「今日、好きになりました。夏休み編2023」への参加で話題となった向井怜衣。奥山衣緒理役には、ファッション誌「Seventeen」の専属モデルを務める小國舞羽。黒滝だいあ役には第79回カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門に正式出品された『タイタニック・オーシャン』(2026年公開予定)への出演で話題の室はんな。
スタジオでは、怪異によって“とある人物”たちが小春の前に立ちはだかるシーンの撮影も行われた。清水監督は、彼らが発するセリフをいわゆる“幽霊”のような怖い言い方ではなく、あえて明るく言わせる、という独自の演出を加えた。「これ以上ないくらい不自然な人形のように」と、首の傾き、目の見開き、身体の向きなど視覚的な指示を与えながらも、セリフは自然な話し方をベースにする。そのなかで語尾だけを変に上げたり、違和感のあるイントネーションにしたりすることで、より気味の悪いシーンへと仕上がっていった。

■鎮西が振り返る撮影の日々「ホラーってスポーツのよう」
本作に込めたテーマについて清水監督に尋ねると、ホラーとはまた少し違う角度の答えがあった。「僕のなかでのこの作品の裏テーマに、“昨今のSNSでの誹謗中傷”というのがあります。それで心を病んで引きこもってしまったり、最悪な場合、自殺に追い込まれてしまったりすることが大人でもある。そういったテーマの部分も身近に感じながら、怖さも含めて楽しんでもらえたら、という想いです」。

鎮西にもいまの気持ちを聞いてみると、ホラー作品に出演するということへの彼女なりの捉え方、そして本作の魅力をいきいきと語ってくれた。「本当にあっという間の1か月ちょっとでした。最初は自分が演じることでいっぱいいっぱいだったのですが、ホラーシーンをメインで撮らせていただくようになってからは『ホラーって思ったよりも体力を使うんだな』と思って。ホラーってスポーツのようだな、と演じながら感じました。すごく楽しい日々なので、撮影の終わりが見えてきてさみしい気持ちになっています。これまでの清水監督の作品を観てきた方には、監督の“いま一番ホットなホラー”を観ていただけると思います。私を応援してくださっているホラーにあまりなじみがない方も、『今年の夏はちょっと違う刺激が欲しいな』みたいな感覚で映画館にお越しいただけたらうれしいです」。

鎮西の言う「清水監督のいま一番ホットなホラー」はどんな作品に仕上がったのか、公開を楽しみに待ちたい。
取材・文/編集部
