その最新作にして第5弾『キングダム 魂の決戦』(公開中)では、原作屈指の人気エピソード「合従軍編」がついに実写化される。楚、趙、魏、韓、燕、斉の六国が同盟を結び、秦国へ侵攻。未曽有の危機を迎えた秦は、国門である函谷関で国の存亡を懸けた総力戦を決行する。信や飛信隊をはじめ秦を代表する名将たちが一堂に会し、シリーズ最大級の戦いが繰り広げられる。

そんな本作で、ひときわ目を引くのが要潤演じる騰(とう)だ。かつての主君、王騎(大沢たかお)の遺志を継ぎ、秦国を支える将軍となった騰は、ベールに包まれていたその実力を大いに発揮し、秦国の底力を感じさせる圧巻の戦いぶりを披露する。そこで本コラムでは、要のこれまでのキャリアを振り返りながら、最新作での騰の活躍に迫っていきたい。
■「仮面ライダーアギト」氷川誠役で俳優デビュー
要は2001年放送の「仮面ライダーアギト」の氷川誠/仮面ライダーG3役で俳優デビュー。この作品は平成仮面ライダーシリーズ第1弾「仮面ライダークウガ」の成功を受けて制作されたシリーズ第2作で、人類を襲う謎の生命体「アンノウン」と、超能力を持つ戦士「アギト」の戦いが描かれた。
要が演じた氷川は、警察が開発した特殊強化装甲服「G3」を装着して人々を守るためにアンノウンに立ち向かっていく警察官。特殊能力こそ持たないものの、生真面目で実直な性格と、どんな強敵を前にしても決して怯まない強い信念を持つ人物として多くの視聴者の支持を集めた。のちに“若手俳優の登竜門”と称されることになった平成仮面ライダーシリーズの黎明期を支えた作品の一つでもあり、要はこの作品で一躍注目を浴びることになる。
その後は、二宮和也主演のドラマ「流星の絆」をはじめ、福山雅治が坂本龍馬に扮したNHK大河ドラマ「龍馬伝」、渡辺直美と元夫婦役を演じた「カンナさーん!」など話題作に出演。端正なルックスを生かした二枚目役だけでなく、コミカルな役柄から重厚な人物まで自在に演じ分け、俳優として着実にキャリアを重ねてきた。
■『アギト—超能力戦争—』、明智光秀を演じた「豊臣兄弟!」でも注目された2026年
近年は、1975年公開のパニック映画をリブートしたNetflix映画『新幹線大爆破』(25)で、人質となった乗客の一人である起業家YouTuber役に。爆弾犯から要求された1000億円の身代金を集めるためと称してクラウドファンディングを立ち上げ、車内の様子を動画配信するインフルエンサーを胡散臭さたっぷりに演じ、作品に絶妙なスパイスを添えていた。

そして平成仮面ライダーシリーズ歴代最高視聴率を記録した「仮面ライダーアギト」の新たな物語を描く映画『アギト—超能力戦争—』(26)で氷川誠役に再びトライ。仮面ライダー生誕55周年を記念して製作された同作は、要にとって原点ともいえるキャラクターと四半世紀ぶりに向き合う節目の一作となった。

さらに、NHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」では戦国武将、明智光秀を熱演。織田信長(小栗旬)と足利義昭(尾上右近)の狭間で揺れ動き、理不尽な仕打ちに耐えながら苦悩を深めていく光秀の感情を繊細に表現した。要自身も「感情を極限まで抑え込むことを意識して役づくりに臨んだ」と明かしており、本能寺の変へと至る心の揺らぎを丁寧に積み重ねた果ての「敵は本能寺にあり!」の一言は、積もり積もった光秀の想いが一気に伝わってきて強く心を揺さぶられる。
さらに今夏は、ドラマ放送時から大きな反響を呼んだ大ヒットシリーズの劇場版第3作『TOKYO MER~走る緊急救命室~CAPITAL CRISIS』(8月21日公開)にも参加。要が演じる東京消防庁即応対処部隊の千住部隊長は、鈴木亮平扮するTOKYO MERの喜多見チーフが全幅の信頼を寄せる存在だ。最前線でリーダーを支える右腕という立ち位置は、「キングダム」の騰ともどこか通じるものがある。

■王騎の遺志を継いで将軍となった騰
第1作『キングダム』(19)からシリーズすべてに出演し、騰として王騎の傍らに立ってきた要。王騎にして「わたしに匹敵する才能の持ち主」と言わしめた騰は、前作『キングダム 大将軍の帰還』(24)において、必殺技“ファルファル(原作漫画における剣を振るう際の擬音が元になった通称)”で敵軍の大軍勢を蹴散らし、卓越した能力の片鱗をのぞかせた。一方、「王騎と騰の強い絆を感じさせるような仲のよさが伝わればいいなと思って演じていた」と要が語る通り、王騎との別れの際には固く握り締めた拳から血を滴らせ、深い悲しみを人知れずにじませる忠義の副官でもあった。
馬陽の戦いで王騎を失ってから3年。秦は趙の宰相である李牧(小栗旬)の策略により、20万の秦軍が50万の合従軍と対峙する絶望的な戦力差で決戦に挑むことになる。王騎の遺志を継いで将軍となった騰は、秦の最後にして最強の砦である函谷関で戦いの最前線に立つ。

■威風堂々ながらどこか飄々とした佇まいも騰の魅力
もともと騰を“異国の匂いのする、謎めいた武将”として役作りしていたという要。秦国の名将たちと肩を並べる実力の持ち主である騰の風格を、要は目元涼やかなポーカーフェイスで表現。合従軍のなかでも特に強大な軍力を誇る楚軍との戦いにおいても冷静さを失わず、圧倒的な強さで敵を撃破する戦闘シーンは本作の見どころの一つといえるだろう。

威風堂々ながらどこか飄々としたその佇まいは、まさに原作ファンから愛される騰の姿そのもの。要は“刀で語る寡黙な名将”というミステリアスな騰の魅力を存分に引きだし、劣勢に立たされた秦国の希望の象徴として鮮やかにスクリーンに刻みつけている。
文/足立美由紀
※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記
